永井沙耶子『きらん風月』です。

 

私の好きさレベル5段階評価の『4』です。

 

 

 

 

 筆という卵が生み出すのは、武者か美女か、それとも鬼か。

 東海一の文化人と、松平定信の交流が心を揺さぶる。──直木賞受賞第一作!

 かつては寛政の改革を老中として推し進めた松平定信は、60を過ぎて地元・白河藩主の座からも引退した。

 いまは「風月翁」とも「楽翁」とも名乗って旅の途次にある。

 その定信が東海道は日坂宿の煙草屋で出会ったのが栗杖亭鬼卵。

 東海道の名士や文化人を伝える『東海道人物志』や尼子十勇士の物語『勇婦全傳繪本更科草子』を著した文化人だ。

 片や規律正しい社会をめざした定信に対し、鬼卵は大坂と江戸の橋渡し役となる自由人であり続けようとした。

 鬼卵が店先で始めた昔語りは、やがて定信の半生をも照らし出し、大きな決意を促すのだった……。

 

 

 

 

定信と鬼卵の遣り取りが秀逸でしたね。

 

片や<正しい改革>を推し進めたと自認する元老中。

片や<締め付け行政>に抗った文化人。

 

それぞれの来し方もしっかり語られ、物語に深みを与えてます。

 

 

鬼卵の営む煙草屋の店先に書かれた狂歌

 

~世の中の 人と多葉粉(たばこ)の よしあしは

 煙となりて 後にこそ知れ~

 

定信にも刺さったようですが、私にも刺さりました。

煙となった後、私はどんな<よしあし>を残すのだろうか・・・