太田愛『未明の砦』です。

 

私の好きさレベル5段階評価の文句なし『5』です。

今のとこ、今年一ですね!!!

 

 

 

 

 共謀罪、始動。

 標的とされた若者達は公安と大企業を相手に闘うことを選ぶ。

 その日、共謀罪による初めての容疑者が逮捕されようとしていた。

 動いたのは警視庁組織犯罪対策部。

 標的は、大手自動車メーカー〈ユシマ〉の若い非正規工員・矢上達也、脇隼人、秋山宏典、泉原順平。

 四人は完璧な監視下にあり、身柄確保は確実と思われた。

 ところが突如発生した火災の混乱に乗じて四人は逃亡する。

 誰かが彼らに警察の動きを伝えたのだ。

 所轄の刑事・薮下は、この逮捕劇には裏があると読んで独自に捜査を開始。

 一方、散り散りに逃亡した四人は、ひとつの場所を目指していた。

 千葉県の笛ヶ浜にある〈夏の家〉だ。そこで過ごした夏期休暇こそが、すべての発端だった――。

 自分の生きる社会はもちろん、自分の人生も自分で思うようにはできない。

 見知らぬ多くの人々の行為や思惑が作用し合って現実が動いていく。

 だからこそ、それぞれが最善を尽くすほかないのだ。

 共謀罪始動の真相を追う薮下。

 この国をもはや沈みゆく船と考え、超法規的な手段で一変させようと試みるキャリア官僚。

 心を病んだ小学生時代の友人を見舞っては、噛み合わない会話を続ける日夏康章。

 怒りと欲望、信頼と打算、野心と矜持。

 それぞれの思いが交錯する。

 逃亡のさなか、四人が決意した最後の実力行使の手段とは――。
 

 最注目作家・太田愛が描く、瑞々しくも切実な希望と成長の社会派青春群像劇。

 

 

 

 

読む手を止められず、一気読み。

605pの大作ですが、ボリュームが全然気に成りませんでした。

 

知りたくなくて目を閉じて、聞きたくなくて耳を塞いできた、国際社会における日本の現状を、数字という<リアルさ>を伴った形で、喉元に突き付けられます。

 

今作品で、戦中・コロナ禍に対しての記述で

「今も昔も、なぜこの国ではこれほどに人の命が軽いのか」

この一節が刺さりましたね。

戦時下の特攻しかり、コロナ禍の医療から切り捨てられた人しかり。

 

 

今作で気に成った一節を2つほど

 

 「日本に行くと清潔なホテルに安く泊まれて、美味しいものを安く食べられて。そういういろんなこと、日本の従業員が低賃金で必死に働いて、外国の方々をおもてなししてたんだなって」

 

 もし日本で経営者が従業員を簡単にクビにできるようになれば、残った従業員がさらに長時間のサービス残業をして穴埋めをすることになるだろうと思った。その方が経営者にとって明らかに安上がりであるし、容易に解雇されるとわかっている従業員が、サービス残業を断ることなど不可能だからだ。労働者が連帯して闘うことが当たり前である遠い国の人々には、この国がどんなふうに見えるのだろうか。

 

 

如何でしょうか?!

 

気に成った方、是非一読を!

損はさせまへんでぇ~~~グッ