鳥の劇場新作
三島由紀夫の卒塔婆小町と弱法師

どのような時代にこの脚本が書かれたかというのがその演劇の言いたかったことを理解するのにかなり重要なんだということは主宰の中島さんに教えていただいたことだ。今回この脚本(卒塔婆小町)が書かれたのは1952年。老人世代は明治の文明開花の頃に若かった世代、若い世代は洋服を着てアベックで夜イチャイチャするのが当たり前になりはじめた世代、戦後10年以上経った高度成長真っ只中、サンフランシスコ講和条約が成立した年。

年をとることによって上がってくる観る側の経験値も鑑賞するのにひとつの場面で色々なことが連想されてくるのでより面白さが増す感じがする。若い時に観てたらきっと、通りいっぺんのストーリーしか追えなくて結局は?何?だけで終わってしまっていただろう。今回は老い、いつの時代も繰り返し変わらない人間のサガ、反対に変化し続ける人間の外観や考え方や世の中、そんなことが重層的に思い浮かんできた。

感覚的な面ではいつもながら役者さんで衣装制作も兼任される安田さんの少ない予算のなかから作りあげられるその衣装のセンスに凄いと思わされる。鹿鳴館のダンスのシーンでは実際にカップルを組んで本式のワルツのステップを踏むのではなく、一人ひとりが手を組む仕草のまま舞台をくるくると回りながら移動する事で狭い舞台上で大舞踏会を表現してしまう、その表現力と演出力が凄いと思う。それにクライマックスで流れたBGMが凄く気になった。岡山の禅寺のインスタレーションで流れていた曲とイメージが重なる気がする。劇場がら出ていく時に中島さんになんの曲け聞いたら、坂本龍一の割と最近のアルバムの曲だって。ちょっと探してみよう。

もうひとつの弱法師の方はとにかく、札幌ススキノ事件の犯人一家のことが頭に浮かんできてしまう。あとどこまでも現実的でぶれない家庭裁判所の桜庭さんのキャラも印象に残った。物事をさっさと解決して着実に前に進めるのは実はああいう無味無臭であまり個性を感じさせない人なんだなと思う。

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