ピナ・バウシュ”Pina 踊り続けるいのち”/"ピナ・バウシュ夢の教室" | 日々のカンゲ記 ふろむパリ→トーキョー

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ピナ・バウシュ”Pina 踊り続けるいのち”
ピナ・バウシュ夢の教室

現在日本で公開されているピナ・バウシュの3D映画”Pina 踊り続けるいのち”と、"ピナ・バウシュ夢の教室"を観ました。

”踊り続けるいのち”は、"ブエナビスタ ソシアルクラブ"の監督Wim Wenders。
今まで3D映画は目が疲れるし、特に必要性を感じず、あまり好きではありませんでしたが、ダンスの舞台を3Dにすることはとても意味がある試みだと思いました。
生の舞台のよう、、、とは言いませんが、舞台に奥行きが出て小さい箱庭の舞台を観ているよう。
そして自然の中でのダンスとの共存が本当に素晴らしく、映画でしか観れない美しい芸術でした。


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ウッパダール舞踊団は、数年前に日本に来日した時に1度だけ生の舞台を観たことがあります。
今回3Dで再現された事により、その時に観た"FULL MOON"の衝撃と感動が蘇りました。
舞台上で大量の水を使い、ビショビショになりながら本能をむき出しにして踊る姿を観て、今まで自分が観てきたどの舞台とも違うショックを覚えたのを思い出しました。


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こちらの映画は全編を通して、ピナを失った後に残された者達の喪失感のようなものが漂っており、ピナの偉大さ、絶大なる信頼、そして同時に孤独が感じられるような映画でした。



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もうひとつのドキュメンタリー、ピナ・バウシュ夢の教室
こちらは、ピナの代表作「コンタクトホープ」を、14~18歳の今までダンスもしたことがない、ピナのことすらよく知らない、それぞれに色々な事情を抱えた思春期の子供達に1年かけて指導していく過程を撮ったドキュメンタリーです。

ピナの作品は、30歳を過ぎた者しか踊ることを許されないと言われていたのですが、その訳がこの作品を観てよくわかりました。

彼女の作品は、自分の本能に忠実に包み隠さず自分の中から湧き出る感情を舞台の上で本気でさらけ出す...そういった作品です。
そこには沢山の人生経験が必要なことは想像に難くありません。


特にこちらで題材にしている「コンタクトホープ」は、ピナの作品の中でも、男女の距離が近く、少しエロティックな表現もあり、この作品を思春期の男女が踊ることはとても大変なことです。
"Pina 踊り続けるいのち"の方でもこの作品を、ウッパダール舞踊団の団員達が踊っており、それを観た後だったので、余計にその難しさがわかりました。
そして同じ作品なのに、まったく違う、新しい「コンタクトホープ」がそこにはありました。

初めは「恥ずかしい」とか「できない」と言っていた少年少女達が、ベネディクトとジョーによる指導によって少しずつ解放されてゆく。

そこにある彼らの成長やピナやベネディクトとジョー、そして仲間達との信頼関係が構築されていくさま、踊ることの喜びと同時に自己を解放し、変わって行くさま。

そして最後の大勢の観客の前での本番。

ここに出てくるすべてが素晴らしかったし、とても尊いものでした。
自分も十代の頃にピナに出会って、こんな体験をしていたら、今頃また違う生き方をしていたんだろうな、なんて意味のないことを思うと同時に、ここに出演している子達の現在がとても気になりました。

改めて、ピナの偉大さを知る2本のドキュメンタリーでした。

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ピナのご冥福と、彼女の作品達が永遠に引き継がれることを祈ります。