第12回 世界バレエフェスティバル 特別プログラム”オマージュ・ア・ベジャール” | 日々のカンゲ記 ふろむパリ→トーキョー

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日々の感激と観劇のきろく。パリ生活のこと。

■第一部

緞帳(今日はいつもの赤ではなく黒)が空くと、ベジャールの映像が映し出される。
ベジャールが見えなくなるとジルが出て来て、マイクを使って語り部となり、一部が進行してゆく。
作品と作品の間はつながっており、ひとつの演劇を観ているようだった。

ルーミー
音楽:クドシ・エルグネル

高橋竜太・平野玲・松下裕次・氷室友・長瀬直義・横内国弘
小笠原亮・宮本祐宜・梅沢紘貴・中谷広貴・安田峻介・柄本弾・佐々木源蔵・杉山優一・岡崎隼也・八木進


白いロングスカート姿の男性のみの踊り。
インド音楽にのせて男性がくるぶしまでのスカートをひるがえしながら力強く踊る。
白い円形のロングスカートをはくことによって、脚の運びがすごく目立つので、
脚の高さやタイミングがすこしずれただけですごく目立ってしまうと思った。
とはいえ男性がスカートをひるがえしながら力強く踊る様はかっこよかった。
長瀬さんが、クラシックダンサーなんだな、という立ち居振る舞いで目立っていた。
背中とか首筋とか。彼はいつも独特の空気感がただよっていて、何かいつも目がいってしまう。


「ザ・カブキ」より由良之助のソロ
音楽:黛敏郎
高岸直樹

やはり高岸さんの由良之助はかっこいい。
全幕でみた時はその前後のストーリーがあるから、完全に感情移入して、
そしてその日の高岸さんの踊りがすごくキレがあってかっこよくて泣いてしまったが
今回はそこまでではなかった。
抜粋だからしょうがないか。最後の白い布に血しぶきがついた幕が下りてくる所は何度みても
しびれる。


ボーン・トゥ・ラヴ・ユー
音楽:クイーン「Born to love you」
エリザベット・ロス

ジルが「Life is dance,Dance is Life!」と語ると、クイーンの音楽が始まり、
エリザベットが踊り出した瞬間に涙が止まらなくなってしまった。
ジルもエリザベットも、本当にLife is dance,Dance is Life,Love is Dance!を
今この瞬間に舞台で捧げている!という気持ちが伝わってきたから。
エリザベットは本当に美しく、歌詞の内容と彼女の動きがすごく合っていて、
本当に素晴らしかった。

改めて「Born to love you」の歌詞をよく聞いたら、なんて力強くていい曲なんだ!

I was born to love you
With every single beat of my heart
Yes,I was born to take care of you
Every single day of my life

You are the one for me
I am the man for you
You were made for me
You're my ecstasy
If I was given every opportunity
I'd kill for your life・・・・・

http://www.youtube.com/watch?v=jiot1P3-Hng
フレディかっこいい!



音楽:マノス・ハジダギス
木村和夫

黒いロングスカート、おへその出たトップス、頭には黒い頭巾を冠った女性達が
頭に椅子をのせしなやかに踊る。
椅子にこしかけて脚を開脚(後ろ足はアティチュード)するとスカートが広がって美しかった。
こちらは女性陣の動きや脚の高さや角度が揃っていて、美しかった。
そこに白い全身タイツのような衣裳をまとった「鳥」木村さんの登場。
木村さんは品があって、手足が美しくノーブルだった。


アダージェット
音楽:グスタフ・マーラー
ジル・ロマン

当時21歳であったジルがジョルジュ・ドンからひきついだ、ジルにとって特別な作品。
私はその時に観に行けなかったが、ベジャールが亡くなってから初のBBL公演の際に
プログラムになかったこの曲を追悼の意を込めてジルが踊ったということだ。

この作品は今まで何度か観たことはあるが、その度にジルと共に作品も進化している。
ジルは本当にかっこいいなぁ!

■第2部

バクチ3
音楽:インドの伝統音楽
シャクティ:上野水香
シヴァ:後藤晴雄


水香さんは、手足が長くプロポーションが良いので、このような全身タイツの衣裳がとてもよく似合い
かっこいい。脚も上がるし。
クラシックだとどうしても、色々目についちゃう所があるので、こういう方がいいかも。


さすらう若者の歌
音楽:グスタフ・マーラー
ローラン・イレール/マニュエル・ルグリ

この組み合わせは、2年前の「ルグリと輝ける仲間たち」でも観た事があるが、
やはりさすがの貫禄。
ローラン・イレールは年をとってしまった感はいなめないが、それでもなお美しく、
ルグリとのパートナーシップも素晴らしい。
一方ルグリは衰えなど感じさせず、相変わらすすべてのパがバレエのお手本のように
美しく、完璧。本当に贅沢な組み合わせの作品だった。


ボレロ
音楽:モーリス・ラヴェル
首藤康之
平野玲・松下裕次・長瀬直義・横内国弘


首藤さんが東京バレエ団を退団する時の「最後のボレロ」を観ることができなくて
何年もずっと悔んでいたが、まさか再び観れる日が来るとは!
ギエムもそうだけど、二人とも”封印”していた踊りを再び踊る決意をしたのは
ベジャールの追悼ということだと思うとそれは悲しいが、しかし再び観ることができたことを幸運に思う。

首藤さんも退団されてからどんどん海外の面白いコレオグラファーと作品を作ったり、
色々な活動を通して、より自由に、様々なものを取り入れて、以前とはまた違ったボレロだったのではないだろうか。

首藤さんの踊りをみるたびに、首藤さんがインタヴューで
「僕は舞台で踊りにすべてを捧げているのです」と語っていた台詞が思い浮かぶ。
ボレロのリズムと共に高揚していく踊り、首藤さんのオーラ、目の色がどんどん強くなる。
それを観るたびに私は、踊ることは本当に大変なことで、まさに人生を捧げるということなんだな、
と思いそのような踊りを観た時は自然に涙が出て来てしまう。
踊ることは、祈ることに似ている。


カーテンコールでは、首藤さんはまだぼんやりしているようだったが、それでも少し微笑んでいて、
ああ、首藤さんが再びボレロを踊ったことは、彼にとっても嬉しいことだったんだな、と安心した。

全員が出て来てのカーテンコールは、ボレロの赤い円盤の舞台の上に、ベジャールを映した
モニターが下りてくる。
ダンサーが命を捧げる、神聖なるボレロの舞台の上にベジャールが下りてくる演出、というのにも
グッときたし、なによりその瞬間、ジルとエリザベットがそっと身を寄せ合っていたのが印象的で
またしても泣いてしまった。
ベジャールを追悼するという本日の舞台は、本当に素晴らしかったし、ジルのベジャールへの愛や
決意が随所から垣間みれて、本当によいものを観せていただいた。
ベジャールは改めて偉大だと思った。