パリ・オペラ座バレエ学校 2009年日本公演 | 日々のカンゲ記 ふろむパリ→トーキョー

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日々の感激と観劇のきろく。パリ生活のこと。

Ecole de danse de l'Opera nationai de Paris au Japon 2009
@東京文化会館
direction:Elisabeth Platel

PECHES DE JEUNESSE ペシェ・ド・ジュネス
choreographers:Jean-Guillaume Bart 
music:Gioacchino Rossini

元パリ・オペラ座 エトワール、ジャン・ギヨーム・バールが学校生のために振り付けた作品。
クラシックの基本に基づきながら、ロッシーニの美しい音楽に合わせて上級生が踊る。
フランスのクラシックの基本や技、細かいパがたくさん散りばめられており、難しそうであった。
しかし、それを生徒達に振り付けることによって、ギョーム氏がこれからプロのダンサーとして仕事をする上で
大事なことを生徒に学ばせたかったのだな、ということがよくわかる作品だった。
パ・ド・ドゥでのサポートなど、慣れていないせいか所々おぼつかないところはあったが、
この中に将来のエトワールがいるのかと思うと、やはりみんな素質は素晴らしい。
なんといっても女性のポワントワークは素晴らしい。
ドゥミポワントの使い方が柔らかく、音がしない。
まっすぐ伸びてきれいにアンデオール(外転)された足にほれぼれ。
厳しい訓練を幼い頃から積んできているのがわかる。

上級生を見ていると、映画「エトワール」で語られていたダンサーの苦悩や、DVD「パリ・オペラ座バレエ学校の妖精たち~エトワールを夢見て~ 」のことを思いだしてしまって、ここまで来るのに、どれだけ大変だったか、とか
「友達だけど、ライバル、常に戦っているし、毎年誰かが学校から去っていく。心を許せる友達はいないのよ」と
語っていたエトワールや、けんかしたり、泣いたりしていた子供達の姿を思い浮かべてしまう。

そういえばパリで学校生のデモンストレーションを観た時に隣の席にたまたま座った、学校生のお父さんも
言っていたっけ。
私が「子供達は、毎年あるその試練の中でナーバスになったりしないの?」と聞いたら、彼は
「もう慣れっこだからね」と語っていたが、どうなんだろう?
でもそのお父さんは、自分の娘がオペラ座学校に在籍していることがとても誇らしそうだった。
そりゃそうか。ものすごい倍率をくぐり抜けてきているんだもんね。

パンフレットに書いてあった入学許可
「子供達は、当初は6歳から8歳、後に10歳までの間に、外見上の基準に基づき、バレエ・マスターによって選抜。テレプしコールの神殿いおける”美”を表現するために、その苗床(養成所)には”自然”が任命した者しか合格させてはならない(1807年の規則)」
すなわち、バレエをする為に生まれてきたような容姿、身体能力を秘めた者しか合格できないということ。
噂によれば2~3代までさかのぼって、家系に肥満の人がいたらダメとか。厳しい~




SCARAMOUCHE スカラムーシュ
choreographers:Jose Martinaz
music:Darius Mihaud

こちらはうって変わって、下級生達のコメディタッチの作品。
マイムがたくさん使われていて、本当にかわいい!
子供達の弾ける感受性や表現力、何より「バレエを踊ることって楽しい!」という気持ちに溢れた作品。
振り付けのジョゼマルチネス(オペラ座エトワール)が言うように、学校生達が、未来のエトワールを夢みて、
休み時間に大人の真似をして有名なヴァリエーションを踊ってみたり、声を出したり、おどけてみたり・・・・
子供達がプロのダンサーになる前の想像の世界を作り上げるための作品。
幻想の世界へと招くスカラムーシュ。

アニエス・ルテュステュの衣装も素晴らしかった!
一人一人少しずつ違う衣装で生徒を見分けることもできるし、劇中劇の中のコメディな衣装もエレガントで、
工夫が凝らされていて、そして子供によく似合うデザイン。
そしてなんといっても私の大好きな写真集に載っていてかわいいな~と思っていた、あの天井裏の小ねずみちゃんの衣装が見れて満足。かわいかった~

キラキラと表現する子供達がかわいくてかわいくて、終止目頭がうるみっぱなし。
そうだ、私がパリで一番衝撃をうけたのはこれだったのだ。
子供達の弾ける表現力と、ダンスが楽しくでしょうがない!という純粋な気持ちが伝わってきた。
そのことも思い出して、本当に感極まってしまった。
何人か、パリやDVDの中で見た顔の子が出ていて、それも嬉しかったり。


YONDERRING ヨンダーリング
choreographers:John Neumeier
music:Stephen Collins Foster

ノイマイヤーが若い学校生の為に振り付けた作品。
アメリカンカントリーミュージックに合わせて、古典とモダンを組み合わせて上級生が踊る。
ノイマイヤーが言うように、この作品は若い、十代の少年・少女達が踊るべき作品だと思った。
まだ青臭くて純粋な青年が踊る風景。
初恋や苦悩、エネルギーに満ちた踊り・・・等をへて、終わるころには、少し大人になった青年達がいる。
ペシェ・ド・ジュネスに比べて、表現の自由度はあり、表現力が試される所。
さすが上級生だけあって、レベルも高く、美しかった。
十代で、古典もコンテンポラリーもモダンも、マイムも、すべてきちんと教育されてきているからできるのだろうなぁ。
日本だとそういうことってまずないし。そこが国立バレエ学校を持つオペラ座の素晴らしい所だと思う。


全体的に振り付けも、それぞれのコレオグラファーの意図がよく伝わってきたし、プログラムの構成も素晴らしいと思った。
プロではなく、学生の為の公演というものをとても意識していて、学生にとってもとても勉強になるし、
観客にとっても色々考えさせられたり、改めてバレエの奥の深さや、楽しさが再発見できるよい公演だったと思う。

会場にはいつもと違ってプチリーナちゃん達がママに連れられていっぱい来ていたけど、どう思っただろう。
自分と同じくらいの子供達のあの表現力やパワーをみたら、きっと価値観やモチベーションがかわうだろうな。

そして、来日し、学生とはいえ、お金をもらって外国の舞台に立つという経験をした子供達は、どんな思いなんだろうか。そんなこと、オペラ座に在籍していなかったら経験できないよね。

とにかく今日は、キラキラしていて、夢と可能性をたっくさん秘めた宝箱を見せてもらった感じ。
とても素敵でした。
やはり、子供の教育、表現力、気になる。追求したいな、と思った日でした。