あまりに眠れないので、人体実験して不眠の原因を突き止めてみました。

精神疾患と神経疾患を合併している方は少なくないと思います。複雑に相互作用的に影響し、原因不明で苦しまれている方の何かの参考になれば。

以下、極めて単純化した素人の理解です。人体や疾患の理解は何年もの膨大な勉強と人体解剖なくしてはありえません。ここにお断りします。

①PDと不眠

パーキンソン病の不眠には様々な原因があり、原因を突き止めるのは難しいようです。

参考までに、パーキンソン病で脱落する神経細胞(ニューロン)は以下です。

脳幹や視床下部の障害による、睡眠構築や覚醒神経系の障害がまずはじめに考えられます。脳全体が揺らぐことで、様々な生理的条件が紙一重で作用しあって成立している睡眠構築を壊してしまいます。

PD由来の不眠の治療に使われる薬剤としては、ベンゾジアゼピン系薬剤、錐体外路症状が少ない抗うつ剤(トラゾドン)、さいきんはオレキシン受容体拮抗薬(デエビゴやベルソムラ)が用いられます。
※オレキシンは覚醒を維持する神経伝達物質です

ベンゾ系は、脳内のGABAに働きかけ鎮静催眠作用をもたらします。
トラゾドンは脳内セロトニンを増やし、デエビゴは不安から来る不眠にも有効です。以下は筑波大の研究(論文や後続研究もあります)。


ベンゾ系は依存性が生じやすいので、2022年に厚労省が短期的かつ少量の使用を呼びかけていて、多くの医療機関が処方を控えています。
(頓服使用だと出してもらえます)

ベンゾジアゼピン系薬物における常用量依存の形成


注目したいのは、依存性の形成過程で、鎮静・催眠とは相反する作用(脱抑制)を引き起こすということです。


九州大学の神田橋條治医師が、1997年頃、ベンゾ系薬物で興奮状態になる例が多いことを発表しました。


薬理学的なことは素人のわたしには分かりませんが、10年ほど前、主治医(九州大卒)に「躁鬱の不眠期にベンゾ系薬を服用すると悪化するので控えてください」と言われたことがあります。


あれこれ調べてみると、ベンゾ系の興奮作用は、長期投与・多量投与、またその人の気質体質も影響するようです。


パニックや不安障害の方が心理的依存から増量して、逆に悪化させてしまうケースを見かけることは珍しくありません。


という経緯で、さいきんの精神科医療では、ベンゾ系を減らしましょうとなっています。


このように、いろいろな睡眠導入剤がありますが、わたしには全く効かないのです。



②PTSDと不眠


ここからはPTSDとの関連になります。日本におけるPTSD罹患率は1〜2%なので、ほとんどの方には関係のない話です。


もし、誰か、絶望の底でなんとか生きている人がいたら。備忘録として記録します。



眠剤が効かない理由がわかったかも?となったきっかけが、クエチアピンの服薬です。

何をのんでも効かなかったのに、12時間も熟睡しちゃったのです。


クエチアピンは、主に統合失調症の治療に使われますが、ヒスタミン受容体とアドレナリン受容体を遮断することで鎮静催眠作用をもたらします。

☆ノルアドレナリンを増やす作用があるのでパニック障害には禁忌です


セロトニンを増やすトラゾドンも、ヒスタミン受容体遮断を利用したものですが、効きませんでした。


つまり、わたしの不眠は過度な興奮状態によるものだと分かりました。それは、ベンゾ系や抗うつ剤の鎮静催眠作用では抑えきれないものとわかりました。


むしろベンゾ系は覚醒を促進している可能性もあります。


ここで心配なのは、クエチアピンがドパミン受容体を遮断することです。遮断率は60%。ただ、黒質線条体系での持続的なドーパミン受容体遮断は起こらないので、錐体外路症状は出にくいと、精神科では捉えられています。


神経内科では意見が分かれます。ぜったいNG派、幻覚治療等の短期投与容認派。


③興奮状態の原因


今のわたしの不眠の原因は、PTSDの悪化(=アドレナリン過剰)なのかなと推測します。

(ドパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾールなどの分類は省略します)


もともとPDによる不安定な睡眠構築、PTSDによる過剰覚醒に加えて、薬剤性パーキンソニズムや告知というショックで重症化した可能性があります。


PTSDには種類があります。

①発達性トラウマ障害(逆境的小児期体験とその後遺症)※発病率は、逆境的体験をした人の1.5~4%です

②複雑性PTSD(心的外傷の後遺障害)

③DESNOS(一過性ストレス障害)


わたしは②と診断が下りていますが、その後、DSMが変わり、①②③すべてに該当します。


PTSDはその種類ごとに症状が変わります。


発達性トラウマ障害でみられる症状


②はフラッシュバックや悪夢、不安恐怖…などなど良く知られていますが、①については深刻です。


発達期の脳のダメージなので、ASD、ADHD、躁鬱、統合失調症のような症状が発現し、「自己調節の障害」(脳やからだの機能を調節する力の障害)が生じます。


具体的には、持続的緊張状態、不眠、便秘下痢、摂食障害、音に過敏になる、怒りや恐怖への耐性低下と調整障害など。


要は脳が常に興奮状態・逃走状態です。


ただいつもいつも苦しみに満ちた日々ではなく、歳を重ねていくにつれ、生きにくさを感じつつもうまくやっていく力もつける…それができる人が生き残るわけですが。

診断が下りたときは、およそ半数が亡くなると説明されました


さらに事態は複雑です。

発達性PTSD患者は、脅威に対する感覚鈍麻と自己防衛力の低下により、単回性トラウマを繰り返し受けやすく、トラウマ体験が累積していきます。


ふだんは解離や回避によって表面化しないトラウマ症状が、突発的な身の危険で爆発してしまいます。


わたしの場合は、身体疾患がトリガーになり、急速に悪化することが多かったです。親しい人の予期せぬ死(事故や自死)も対象となる出来事です。


今回は、先にも書いた通り、薬剤性パーキンソニズムの体験と、病気の告知がトリガーになったと見込んでいます。


これらのあとは異常な恐怖心に囚われ、怯え、眠れなくなります。不思議なことに、暗闇が怖くなります。


動物の本能的な逃走準備行動の持続状態、アドレナリンの過剰放出です。


だからクエチアピンが効いたんだなと、素人の憶測に過ぎませんが納得したのでした。


また、メネシットを初めて服薬したときに恐怖を伴う幻覚が出てしまったことも、この脳の状態を踏まえると至極納得がいきます。

(なぜなら、神経細胞がまだ残っている脳では、メネシット100投与で幻覚は出ないので)


こういった単回性トラウマの障害は1か月でおさまりますが、様々な要因でこじらせると慢性化します。

病院たらい回しなど、絶望感の連続が関係していそうです。


④治療薬


ではどうしたら良いか。

認知行動療法などありますが、PTSD急性期は時間的余裕のない状態です。


PTSDの薬物療法ガイドライン


ここに挙げられている薬物は全てPDには良くないです。使用OKでもPD薬と併用禁忌だったりします。


また双極性障害に適応不可の薬剤もあります。


PTSDの急激な悪化による不眠に、前主治医はバルビツール酸系(イソミタールなど)を超短期的に(3日ほど)使用して、元に戻してくれましたが、現在、バルビツール酸系は全身麻酔前投与にしか使えないので、重度不眠症患者には苦悩の時代です。


来月から精神と神経が同じ病院なので、期待したいです。


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たいへん辛い作業でした。



わたしには、鮮明な記憶が残っているのに感情が抜け落ちている出来事が2つあります。45年、感情が凍り付いたままです。


でも、眠れないことで生命の危険性を感じ、どちらを優先すべきなのか考えて。

怖かったけど、娘がそばで解説してくれたから向き合えました。

(ついでにPDの解説もしてもらえました)



ここまでお読みくださった稀な方に心より感謝申し上げます。