- 夫が多すぎて (岩波文庫)/岩波書店
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最近月イチくらいで読んでいる気がするサマセット・モーム。
今回は、読むのが初めてなモームの戯曲です。
系統としては、ワイルドの『まじめが肝心』と似ているかな? (あれ、あれって短編でしたっけ?)
モームですもん、面白くないわけがない!
毎回そう思い、期待して読み、まずその期待が裏切られることのない作家。
それがモーム。
タイトルからしていかにも喜劇だし、抱腹絶倒なんだろうなと思って読んだら、
うん、やっぱり面白い。
地下鉄でにやにや思わずしてしまうほど。
簡単なあらすじを言うと、
ビルという夫が戦死したと思っていたのに実は生きていて、
ビルは数年後にようやく妻ヴィクトリアに会うのを楽しみに帰ってきたら
ヴィクトリアは夫の親友であったフレディと再婚していた・・・・・・というストーリー。
『ひまわり』のように、戦争の悲劇を描いている話ではなく、
いかにも喜劇的な結末を迎えます。
が、やっぱり風刺はありますよね。
モームって基本お堅い古典という感じでは全くなくて
非常に面白い、さくっと読める
気負わずに読めるものが多いので
普段海外文学なんて・・・・・と思っている方にお勧め。
その分あんまり評価が高くなかったりもするようですが、
それがけっこうね、英米文学の研究者の中では好きという人が多い気がします。
物語は当然、ヴィクトリアはどちらの男性を選ぶのか? ということ。
その選ぶまでの過程も面白かったり。
選ばれなかった男性でも、「ほんとうにいい女だ」と言わしめてしまう女性。
それがヴィクトリア。
なんてったって、最初の登場人物一覧のページには・・・・
ヴィクトリア 美女
と載ってますから(笑)
ファム・ファタール的な魅力、というよりも、天衣無縫な魅力を持った女性。
彼女がやってることは結構最低なことなわけなんですが、
本人がそれにまったく気づいてないからか、なんなのか、
男性をそんなに傷つけないみたい。
彼女曰く、
「自分が理解されてないって不平をいう女がいるけど、なぜそんなことで愚痴をこぼすのかしら。だって私は理解なんかされたくない。私は愛されたいんだから。」
だそう。これって、深~~いですね。
ちょっと本筋から触れますが、ヴィクトリアにクリームをセールスするミス・デニスのセールス・トークがツボ。
「奥様、このクリームはまさに奥様のようなお肌の方に特別に調合したものでございます。
ふつうのお肌の方なら、ふつうのクリームで十分ですけども、奥様のように本当に美しいお肌をお持ちの方にはやはり超特級のクリームでなければ。」
「誓って申し上げますが、これはけっして贅沢などではございません。
上等のスキンクリームはいわば投資でございます。」
これはセールスとは関係ありませんが、
男性を落とすには爪をしっかり磨いておけだとか、部屋に入る前にはくちびるを十分に湿らせておけだとか、そんな本筋には関係ところまで、まだビルが帰ってくる前の場面まで、
面白いところがさすが。
ヴィクトリアの言う
「上手にマニキュアをした手を見ていると、大きな満足感を覚えるわ。
つまり自信がわいてくるのよ。私が男だったら、マニキュアをしてない手なんてさわりたくもないでしょうね。」
には同感。
私自身、マニキュアしてないと落ち着かないタイプ。指輪が映えないし!女の子だし!
地下鉄で向かいに座っている人が、サンダル履いているのにペディキュアをしてなかったりすると、う~~ん(x_x;) となるタイプ。
余計なお世話なんでしょうが、ヒールの傷が目立っていたりとか、びしっとスーツで決めてるのに、ヒールの底がすり減って金属音をしているのを見るとがっかりしてしまうタイプ。靴くらいちゃんと手入れすべきだと思うの!
よくないですね~・・・でも気になっちゃう。