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サマセット・モーム。
たしか、彼を日本に広めたのは中野好夫氏。
モームが好き! という方はとても多いのじゃないかなと思います。
文学的にはあんまり評価していない人も多いみたいだけど、
文学的価値には面白さも必要不可欠なんじゃないかなと。
とにかく彼の書く小説はおもしろい。
おもしろいからこそ、ファンが多い。
『お菓子とビール』は円熟期に書かれた作品で、特に有名で、人気のある作品です。
モーム自身も、もっとも好きな作品だと言っていたとか。
今回読んだのは、見た目ちくま文庫っぽいんだけど、実は岩波文庫。
(ぜったい岩波っぽくないでしょ?)
数々の訳のあるうちの最新訳。
行方昭夫氏の翻訳です。
ただ、わたしはなんとなーく『お菓子と麦酒』のほうが美味しそうにきこえる(´∀`)
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どちらの訳も有名ですね。
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主人公はアシェンデンという作家。
亡くなった文豪ドリッツフィールドの伝記執筆を託された友人のキアが、アシェンデンにドリッツフィールドの若かりし頃の情報をほしいと言う。
そして彼は思い出していく・・・・
という、回想部が混ざったスタイルで展開していきます。
作家が、作家について書く。
そうなると必然的に、その作家が(ややこしいですね)どのように作家をとらえているか、作品論的なことも描かれてくるわけで、小説に書いてあることがすべて著者の意思だなんて普段は安直に考えたらだめだけども、
この場合だけは、かなりの確率で著者の考えが反映されてる、はず。
というわけで、そこを読むだけでもかなり面白い。
もちろんドリッツフィールドやら、キアやら、アシェンデンという作家は存在しませんが、
結構作家が出てきてねえ。
分かんなければ読み飛ばせばいいんだけど、読んだことある、知っている作家が出てくると
嬉しいもんなんですよ。
シェイクスピアともなると、もはや出てこない古典の方が珍しいですが。
だってだって、リットン・ストレイチーや、イーヴリン・ウォーとかまで出てくるし!!
モームはやっぱり、巧い!と唸ってしまったのは、冒頭部分。
「留守をしているときに電話があり、ご帰宅後すぐお電話ください、大事な用件なのでという伝言があった場合、大事なのは先方のことで、こちらにとってではないことが多い。贈り物をするとか、親切な行為をしようという場合だと、人はあまり焦らないものらしい。」
冒頭部から、思わず作品に引き込まれてしまいますね。
だなんてコメントしたくなりますが、いや、もううま過ぎて
3回くらいそこを読んでしまった(笑)
ふむ!ここはブログにアップしなきゃ!って。
こういうモームの、ちょっと斜めにかまえた皮肉めいた感じが好きだぁ―――――――!!(´∀`)
ここ、ぜったい『高慢と偏見』だとおもうの~~~~。
彼、世界の十大小説に選んでるくらいだもの、影響は相当受けているはずだし。
ぜったい高慢と偏見だって~~~~。
主人公の口を借りて、モームの考えていたことだな、と思われること。
「文学の王座にあるのは詩である。詩は文学の極致であり目標である。詩は人間精神の崇高な活動である。詩は美の完成である。散文の作家は詩人が通るときには道を譲らねばならない。詩人に比べると最上の小説家さえ見劣りがする。詩作が貴族の最公爵に委ねられるべきであるのは明白である。この権利は違反すれば厳しい罰則をもって守られるべきものである。」
- 文学の中でも、詩がいちばん高尚で、小説は一番下のもの・・・・というのはあったのですよね。
モームもこれほどまでに強調しています。
ただ、気になるのが、モームって詩、書いてたっけ??ということ。
戯曲はあるのですよ、ちょうど今借りてきています。
詩は・・・・やっぱり、なさそう。
本当は詩人になりたかったけど、なれなかったのか。
ちょっとモームの人生の勉強をしてみたいですね。
あともう1点気になったのが、本作で重要な登場人物であるロウジーという女性に対しての、モームの視線。
ぜったいにぜったいに、女性を愛したことのある人の視線だ、と感じました。
こういうのってわかるものです。
恋に恋していたのか、
本当に心の底から愛していたのか、作家の恋愛観よりも、作家がどれくらい恋愛してきたか。
でもね、モームって同性愛者として有名じゃないですか。
疑問に思いながらも解説まで行って、納得。
刊行当時は秘められていたそうなんですが、どうもロウジーはスー・ジョーンズという著名な劇作家の娘がモデルだそうで、彼女との関係は8年続いたそうなのです。
そして、彼女との結婚を本気で考えたらしく、求婚までしたらしい。
えっ、じゃ、モームって同性愛者じゃなくて、バイセクシャルなんじゃないの???
ちなみに、ドリッツフィールドはトマス・ハーディがモデル!!なんだそうで、これはまったく知らなかったので驚きました~~。
・・・・そのため、大作家への敬意を欠いている、と非難が集中したそうなのですが、
えー。個人的にはハーディよりモームの方が~~~~。
ハーディ、まだ『テス』しか読んでないしなぁ。なんかジュードあたり読むかな。
『月と六ペンス』もゴーギャンをモデルにしているけど、飽くまでもモデルであって、
別人です。
今回もそれと同様。
とくに揶揄する目的も・・・・私もなかったのではないかと思います。
ちょこっとしか登場しない、キアのモデルは・・・・・・。
まず、キアというのはわずかな才能しかないのに、人生遊泳術を駆使して文壇で高い地位にまで上り、多くの読者を獲得した人です。
そのモデルとなったのは、ヒュー・ウォルポール。
・・・・ごめん、知らない(苦笑)
ウォルポールは書評のために本作を読んだそうなのですが、すぐにキアが自分だと気付いちゃったんですって。
ショックで一睡もできなかったのだとか・・・・・・・・・。
ちなみに、タイトルのお菓子とビールというのは
シェイクスピアの『十二夜』から取られています。
これは特にすごく重要、という箇所ではなくて え、そこ?という箇所にある言葉です。
こういった機会に探してみると楽しいと思いますよ~~。
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