モームの肝心な著書はまだ1冊たりとまだ読んでいないくせに、モームにはまりそうな私です。(読みます、読みますって)
世界の十大小説もかなり良かったけど、こちらもかなり良いです。なのに・・・薄すぎるのが残念。3,400ページくらいじっくり読みたかった~!
「そうそうそうそうそう!!!!」と読みながら激しく頷いてしまったり、思わず声に出して笑ってしまったり。
訳も素晴らしいし、最後の解説も良かった。
これは一応入門書なので手に取るきっかけを与える本なのですが、それなりに海外文学読んでいる方ならそれ以上に楽しめるはず
読書は、楽しみのためで読まなければならぬ。
彼が紹介している本はそんなに多くはなく、厳選したものばかりです。面白くて楽しめるものでも、傑作だと認められていないものは載せてありません。
もっと語りたくて仕方ないんだけれども、ひたすらスペースが無い!と言っているモーム。というわけで、大体1作品1ページくらいの分量で解説等も含め200ページもなく、ワンコインで買えるという条件付き。殆ど本を読まない方でも楽しめるのでは、と思います。(元々そういう人向けだと思いますし・・)
モームが世界の十大小説に選んでいる十作品は全て載っています。
モームの価値観は、結構合うと思うんですよね。
「ベストセラーだから」と本を読むのは如何なものか、とも言っていますし、彼のベストセラーにおける考え方にも共感できる。
そして、トルストイの『アンナ・カレーニナ』を始めは十大小説に選ぶつもりであったが、念のため『戦争と平和』と共に読み直してみると、後者の方が圧倒的に優れていることに気付いた、と言っています。
私は『アンナ・カレーニナ』の方が好きなのですが、こういうのって年齢によっても変わりますよね。
モームの優れてところは、自分が如何に優れているかをアピールするために著者を非難したりしないところ。それと同時に、完璧な人間などいないということを心の底から理解していること。
ドストエフスキーなんて人間的にどうなんだろう、と思いますが、それでも非常に発音しにくい彼の名前は誰でも知っており、名作を数多く残している。
イギリスでもっとも偉大な小説家はディケンズだ、とモームは言っています。(因みにシェイクスピアは「小説家」ではなく詩人、劇作家ですので当てはまりません。この時代には小説というジャンルはなかったので・・・)
しかし、偉大な作家でも短所はあるのだと。
ディケンズはバルザックと同じく、高尚な人間を描くよりは下劣で、身分の低い人間を描くことが得意であった。
確かに。
ディケンズは本当に労働者階級や孤児が出てくることが多いですしね。
でも、それと同時に「大袈裟」ともいわれています。
・・・・確かに、私もそれは感じます。
モームは、『ディビッド・コパーフィールド』が彼の長所が最もよく出ていて、短所が目立たない、と言っています。(ますます読みたくなってきました)
そして、トルストイ。
壮大なんです。本当に、素晴らしいと思います。
でも・・・・・「この部分、いるの?」ってところまで読者は付き合わされるので、結構疲れる。彼の戦争の価値観や、歴史観についてひたすら語っている部分が多すぎて、読者から見ると話が横道にそれてる~?と思ってしまうような箇所があるんですよね。
その部分もモームは指摘していて、(こう考える人は多いようだけど)何となく、同じ様に考える人がいてくれると嬉しくなります。
ただ・・・ね、富山氏の解説にも書いてありますが
モームはメルヴィルの『白鯨』をほとんど無条件に傑作とみなしている。
(中略)しかし、女性読者にとっても等しく傑作なのであろうか。
これも、そうなのーっ!!
と思わず叫びたくなりました。勿論、男だから、などと言いたくはないけれど・・・『白鯨』ってどちらかと言えば男性向きじゃないでしょうか。少なくても、私はとてもこれが「傑作」とは思えず、最後は義務感で読破したようなものでした。
モームはC・ブロンテは傑作とは言えないので除外したようですが、『ジェーン・エア』はまさしく典型的な女性受けする作品ではないでしょうか?
まぁ、一概には言えないけど・・・映画だって、ラブストーリーを好むのは圧倒的に女性でしょう?
『ジェーン・エア』に至っては文学作品として素晴らしい、とまでは思わないにしても共感が持てるんですよね。特に「美しくないヒロイン」というところに共感を覚えた女の子は多そう。
だって、未だにアメリカのヤングアダルト小説にだってこの作品名がボロボロ出てくるのですから。
それと、富山氏はモームにとっての傑作とは、欧米のみの文学から選び出されたものであったが、文学は世界中に存在する、と指摘しています。
確かにそうなんです。(とは言いつつも、ロシア作家もいるけどね?)それは私も思っていましたが、私なんていい例で日本人の癖に日本のものを全然読まない。唯一、好きだと思えるのは太宰治くらいです。
何故?と聞かれてもうまく説明できませんが、翻訳されたものの方が馬が合うようなんですよね
いずれにしても、これは面白かったー!
古めな小説が好きな私にとって、一番残念に思うこと。
それは、絶対にその著者の書いた続編が出ない、新しい作品が出ない、ということです。新訳や、今まで訳されていなかったものが世に出ることはあっても、既に亡くなっていたら絶対にありませんからね・・・
- 読書案内―世界文学 (岩波文庫)/サマセット・モーム
- ¥525
- Amazon.co.jp