フランス人作家の中ではきっと一番好きなアレクサンドル・デュマ。同名の息子がいるので、大デュマとも呼ばれますね。

 彼の代表作は何と言っても『モンテ・クリスト伯』でしょう。日本では岩窟王、といった方が馴染みがあるのかもはてな大学入試当日にこれを地下鉄の中で読みふけり、乗り過ごした・・・・という経験もある思い出の作品です(笑)

 あと有名なところでは『三銃士』や『王妃マルゴ』。この2作品はまだ未読なので、近いうちに読む予定です音譜莫大な量の作品を残したデュマですが、この『メアリー・スチュアート』はこれまで日本語に訳されることがなかったようです。


 メアリーと聞くとブラッディー・メアリーと呼ばれたキャサリンとヘンリー8世の娘を思い浮かべそうですが、こちらはメアリー・スチュアートですのでお間違えなく。(そんな人いないか)

 1542年に生を受けた、スコットランド王ジェームズ5世とフランス貴族出身の王妃メアリー・オブ・ギーズの長女です。生後わずか6日で王位を継いだとされ、当時イギリスと国は無くイングランドとスコットランドが領土を争っていたため、当時のイングランド王ヘンリー8世はメアリーを息子エドワードと結婚させようとするものの、メアリーの母はヘンリー8世に対して快く思っておらず、フランスもメアリーとの縁組を望んだため5歳でフランスへ行き、15歳で結婚。翌年彼女はフランス王妃となり、スコットランドの女王でもあり、更にヘンリー7世の曾孫のためイングランドでも王位継承権を有しているという状態。


 ヘンリー8世とアン・ブーリンの娘であり、メアリーの従姉のエリザベス1世がイングランド王に即位すると、エリザベスは非摘出子なのだから正当な王位継承権はメアリー・スチュアートにある、とされエリザベスは大激怒。しかもメアリーの容姿は特に素晴らしいもので、非の打ちようがなかったとされています。彼女がこれほどまでに美しくはなかったら、このような悲劇にはならなかったのでは・・・と考える専門家もいるほど。同じ女のエリザベスにしたら、面白くなかったでしょうね汗


 夫が亡くなり、若くして未亡人になり、やむを得ずスコットランドへ帰国します。再婚相手の候補は数多くいたが、結局彼女が自ら選んだのはダーンリー卿。家柄は申し分はないものの、性格には問題があり、更にカトリックの熱烈的な信者の彼は反感を買う。結婚生活も直ぐに冷め切ったものとなり、彼女はボズウェル伯に想いを寄せることとなる。しかしメアリーにも夫が、ボズウェルにも妻がいる。そんな時、夫ダーンリー卿が原因不明の爆発により屋敷が吹き飛び、死体で発見されるという事件が起きます。

 当然、疑われるのは妻のメアリーとボズウェル。真意の程は不明ですが、その事件の3ヵ月後に3人目の夫となるボズウェル伯と再婚します。しかし、時が経つにつれ彼の興味があるものは自分の王冠のみだということに気付き、この再婚も幸せなものではなかったようです。


 悲劇の王妃といえばマリー・アントワネットが有名ですが、このメアリー・スチュアートも負けず劣らずの悲劇っぷり。こんな美貌で、才色兼備でも男性を見抜く目は持っていなかったのかな・・・泣


 更に悲惨なのが、この後エリザベスに騙され18年間に渡って幽閉生活を送ったこと。彼女とダーンリーとの息子スコットランド王ジェームズ6世は母親の記憶が無いため側近にあらぬことを吹き込まれ、母親を恨むようになってしまいます。


1587年2月8日、メアリー・スチュアートは断頭台の露と消えます。悲しくも、自分の母親が父親によって殺されたエリザベス1世の手によって。



 フィクションでない分、読み終えたときに感慨深く、女性としても人間としても大変魅力的だったメアリー。その分エリザベスが悪人として描かれすぎているかな、という気もしました。でも、自分は正当なイングランド王位継承権を持っているとちらつかせられると気が気でない・・・という気持ちも分かるような。特にエリザベスの母は1000日間の女王、と言われるアン・ブーリンであったのだから。

 ヘンリー8世は偉大だ、とも言われるけれど、彼の死後も人生を狂わされた人があまりにも多すぎますね。


 


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