ろくろが回る。私の手の中にある土の塊は、まだ何者でもない。ただの湿った黒い塊だ。何を思ったか、今日の私は黒い土を選んでいた。教室のスピーカーからは、いつも通りギターの音が鳴り響いている。

 

ここの先生は、指導中も構わずに大きな音でロックを流す人だった。初めは粘土をこねる静かな時間と、激しい音楽との組み合わせに戸惑った。でも、いつの間にかそのちぐはぐな環境に慣れてしまっていた。

 

ろくろの上で、黒い土はなかなか形になろうとしない。少し力を加えるとぐにゃりと歪み、慌てて手を添えると今度は別の場所が崩れる。作りたいもののイメージが、頭の中に全く浮かんでこない。ただ、回る土を眺めていた。

 

「考えすぎだよ。もっと、こう、音楽に任せてみたら」。先生が隣に来て言った。黒いバンドTシャツを着た先生は、私の手元を一瞥して、またすぐに自分の作業台に戻っていく。アドバイスはいつもそれだけだ。

 

一度、ろくろを止めて手を洗った。スピーカーから流れるのは、知らないバンドの曲だった。けれど、力強いドラムのビートだけは、はっきりと体に響いてくる。椅子に座り直し、もう一度ろくろのペダルを踏んだ。

 

目を閉じて、音楽にだけ意識を向ける。ドラムのリズムが心臓のあたりで鳴っているような気がした。そのリズムに合わせて、そっと黒い土に両手を添える。形を作ろうとは思わなかった。ただ、土が動きたいように手を動かす。

 

土は私の指の間を滑りながら、少しずつ立ち上がっていく。それは綺麗な円柱ではなかった。ところどころ膨らんだり、へこんだりしている。まるで音楽の歪んだギターリフが、そのまま形になったかのようだと思った。

 

作業を終え、歪な黒い塊を糸で切り離す。それはお世辞にも上手な出来とは言えない。けれど、失敗作だとは思わなかった。ただ、今の私に作れるものがこれだった。それだけのことだ。

 

「おお、ロックなのができたじゃないか」。先生が通りすがりに笑った。私はその黒くて歪んだ器を眺める。焼き上がったら、これに何を入れようか。今はまだ、空っぽのままでいいのかもしれない。少しだけ、そんなことを考えた。