1ヶ月に及ぶ衆議院での予算案審議が一日の未明に終わった。時計の針は3時40分をさしていた。与党民主党、国民新党は十分な熟議を尽くせたというが、公明党や自民党からすれば審議をすればするほど彼らのマニフェストにそぐわない奇妙キテレツな予算案であることが明白になった。しかも、歳入を裏付ける特例公債法案など関連法案が衆議院に残ったままであり、参議院としても身動きできまい。


 問題点を改めて記す。第一は、マニフェストの破綻。政権をとるきっかけになった一年半前の衆議院総選挙で掲げた年金改革は進まず、子ども手当も恒久措置化できず、高速道路無料化の道筋も立たず、ガソリン税の暫定率廃止もやらないといった風に、惨憺たる状態。菅首相は、多くが実施されていると嘯いているものの、身内から「マニフェストの原点に戻れ」との批判の声が公然とでている。


 第二に、税と社会保障の一体化による改革といいながら、自らの案を全く示さないこと。イメージとして示した最低保障年金財源は税金で賄うのか、保険料をもって充てるのか。支給額はいくらなのか、その場合は一体いくら財源が必要なのか、具体的な数字は結局示されないまま。これでは「子どものお絵描き」(坂口力氏)と言われても仕方ない。


 第三に、子ども手当をめぐるでたらめな姿勢だ。菅首相自身、二万六千円支給に「ビックリした」と本音を吐露したり、岡田幹事長が財源探しに困った挙げ句に、「児童手当拡充でも構わない」と言いだす始末。野党時代に児童手当と目的や趣旨が違うとして、その拡充について本会議採決にことごとく反対していたくせに、この変節ぶりは呆れ果てる。


 政権交代前には、10兆、20兆の財源はすぐにでるとしていたが、結局事業仕分けでも削減額はたったの0.3兆円。二年続けての税収を上回る赤字国債の発行で日本の財政を更に悪化させ、その借金のツケを子や孫に先送りさせようとしている。これでは政権政党の資格はない。