B型肝炎訴訟をめぐっては、国と原告弁護団が裁判所の和解勧告を受け入れたことから、「終わった」と一般的には見られているかもしれぬ。だが、全く違う。既に発症した被害者で20年以上苦しんでいる患者を、長きがゆえに救済の対象から外すとの、「除斥問題」での態度をめぐって双方の意見は一致をみていない。原告弁護団は、発症している被害者の早期解決が必要ということから、「大枠としては和解を認める」との、苦渋の決断をした。しかし、この問題については、譲れない、としている。まだまだ続いているのだ。裁判所は、これについては民法724条を根拠にして、政府の側と見解を同じにしている。これでは、埒があかず、首相が政治決断をすべきであり、議員立法といった手段でこの問題の打開を図れというのが、原告弁護団の主張である。この経緯は、若干のわかり辛さは否めない。しかし、患者の方々の気もちは痛いほどわかる。


 全員一律救済を叫んだ原告弁護団の要求に応えたのが、薬害肝炎訴訟の時であった。平成19年の暮れもおし迫った、12月23日だった。司法と行政の枠組みを超えた立法措置による解決を明記し、除斥期間が問題にならないように給付金を支給する薬害肝炎救済法を制定するべく、当時の与党は頑張った。もちろん野党の協力を得たことはいうまでもない。


 攻守ところを替え、政権が入れ変わったら、全く今度の政府与党は動こうとしない。当時の福田政権は、あの問題で政権の人気を浮揚させたくなかったかというと、嘘になる。確かに意識していた。今度は、あまりそういったことへの関心がうかがえないのだ。


 先日の原告・弁護団との勉強会の場でもいったのだが、原告・弁護団の戦略の建て直しが必要だと思う。過去の政権と同じような政治決断を、なぜ菅首相はしないのかとの主張は死に体の菅政権にもはや通じないかにみえるから。