「大臣を苛めるために質問しているのではないですよ。苛めると、以前(大臣だった時)に苛められたときの古傷が痛みますから」―予算委員室は大爆笑となった。社会保障の集中審議をおこなった今日の委員会は、午前中は自民党の委員による殺伐たるやりとりで野次と怒号が渦巻いたが、午後の坂口質問の際には一転和んだ雰囲気が支配した。


 坂口力公明党副代表(元厚生労働相)は、いつもながらの飄々とした語り口調の中に鋭く厳しい質問を展開。同じ質問でも人によってかくも味わいが違ってくるものかとあらためて感心させられた。菅首相は、先日の石井啓一政調会長の追及に対して「年金一元化の難しさは私たちも認識している。制度設計によってさまざまな選択肢があり得る」「(最低保障年金について)具体的な数字を固めていなかった。数字の面で、まだ確定した案になっていない」と自らの案の欠陥を認めたものであった。


 この日の坂口氏は、それを確認したうえで、民主党政府として確たる案を示さないで、各政党や新聞各社の案などを持ち寄るのでは、民主党のマニフェストの痕跡をせめては残したいと思ったとしても、結局はそれすら残らないという事態を招くのではないのか、と皮肉たっぷりに攻めていた。


 最低保障年金について、民主党は所得比例年金の受給額が少ない人に支給するとして、その受給額が一定額を上回れば減額するとしているが、その対象者の所得水準については政権獲得後も一切不明のまま。高齢者の半数は年金額が年間200万円以下だが、仮にこの人たちに月額7万円の最低保障年金を出すとすると、12兆円から13兆円もの巨額の財源が必要となってくる。年金だけで消費税8%もの上積みが必要となってくるわけで、非現実的きわまりない。