2日付けの東京中日新聞に掲載された北朝鮮の金正日総書記の長男・金正男氏単独インタビュー記事は実に興味深い。既に初報は先月二十八日に出ており、この記事には「弟正恩氏 父への忠誠心強い」「総書記とは直接話している」「北『改革で体制崩壊』恐れる」との見出しがついている。


 この人物については2001年に日本からの強制退去事件があって以来、いわゆる札付きの持て余し男のイメージがあった。金正日総書記の怒りを買い、後継者レースから脱落、弟の正恩氏にその座を奪われたかのごとき印象があった。しかし、この記事を読んで、その認識を変えた。結構しっかりした常識人ではないか、と。それは即金正日氏からすれば、危険人物ということになるのだろうが。


 北朝鮮の生活が豊かではないとの感触を持っていることに始まり、一昨年に実施されたデノミが大間違いだとの認識、正恩氏への評価、対中国との関係、社会主義理念と世襲の矛盾をめぐる見解など実に率直に述べている。弟へのメッセージとして「父の偉業を継承して、住民がもっと豊かに暮らせるようにするのが願いだ。弟はそういう能力を持っているので、若くして父の後継者として選出されたと信じたい。住民に慕われる指導者になってほしい」―と述べているくだりには強い感銘を受けた。「核を放棄する可能性は少ない」とか「最近、拉致被害者に関する情報管理が厳しくなった」などの指摘も信憑性をもって伝わってくる。


 少し前に、元外務省職員で評論家の原田武夫氏がラジオ番組で金正男氏の方が後継者になる可能性が強いとし、その理由に中国型経済開放を目指す北朝鮮にとって経済に強い正男氏が有力としていたのを思い起こす。それはがさネタとの評判が強いが、私としてはこの人物の存在に希望を持ちたい。