経済再建のために、この5年間は議会を解散せずに、救国安定政権を作ったという国をご存知でしょうか。答えは英国。今日午後に開かれた衆議院外務委員会の理事懇談会の場に、このたび新たに英国に赴任する林景一大使(インド大使の斎木昭隆大使も)を招いて懇談をする機会があった。


 英国は、昨年の下院総選挙で第一党が過半数に達しなかった結果、戦後初の連立政権(保守党と自民党)が発足した。キャメロン政権は、2014年までに平均19%の歳出削減、33万人の公共部門雇用者削減、社会保障改革、付加価値税増税といった方策で歳出見直しに鋭意取り組んでいる。連立相手の自民党は、大胆な歳出削減に同調していることから、選挙直前には30%もあった支持率が10%にまで激減しているという。結果として同党は、党利を犠牲にして国益を優先させたことになるのだが…。このように、かなりの荒療法で国家建て直しに躍起となっている英国の様子は、同じく財政再建のありようが問われている日本としても注目される。


 かつて19世紀には覇者として世界を席巻した英国も、20世紀後半にはすっかりなりを潜め、「英国病」と揶揄されるほど社会経済的に低調な状況を露呈した。しかし、その後、あの手この手で浮揚に務めている姿は痛々しくもあるが、同時に逞しさをも感じる。この20年というもの、「失われた」との形容詞が付きまとうだけで、確たる手立ての効用が見えてこない日本としては、その悪戦苦闘ぶりは大いに見習わなければならない存在といえよう。


 日本としても、一定の期間総選挙をせずに、国家的課題に全力をあげて取り組む必要があるのだが、ことはそう簡単に運ばない。明文憲法のない英国ならではの対応とみられるだけに感慨深い。