「平成の開国」「最小不幸社会の実現」「不条理をただす政治」―この三つが自分の目指す国づくりの理念だとして、菅首相は施政方針演説の中で縷々説明をした。それを聴きながら強い違和感を感じた。そんなことを言う前に忘れていることがあるのではないか、と。鳩山前首相の後を受けて首相の座についた菅首相は一にも二にも後始末をしないといけない。勿論、これからの国づくりのビジョンがいらないといっているのではなく、政治とカネと普天間移設問題の二つの失敗をどうするのかについて、しっかりとした取り組み姿勢がないといけないということである。


 前者については、「不条理をただす政治」の項目の最後に(政治改革の推進)とあり、僅かに4行だけ。しかもまるで他人事のような言いぶり。これでは、自分たちの政党の不条理ぶりには知らん顔だと見られても仕方なかろう。後者についても、(沖縄の振興強化と基地負担軽減)との見出しのもとに7行ほどが割かれているものの、どう具体的に基地負担を軽減するのかが明確ではない。危険性の一刻も早い除去に最優先で取り組むといっても具体策が見えてこない。これでは沖縄県民が納得するわけはないだろう。


 沖縄の基地負担の軽減は、基地騒音、米兵の乱暴狼藉、環境問題の三つの側面がある。これら一つ一つの解決に向け真摯な取り組みこそが最も急がれる課題ではないのか。


 こうした二つの原点について語るべきものを見せずに、いくらビジョンを声高に唱えたところで、所詮空しく響くだけだ。