日本熊森協会の長年の悲願の一つが実現した。「奥山水源の森保全・再生議員連盟」が18日にスタートしたのだ。超党派の議連と言うにはまだ欠ける部分があるものの、戦後の拡大造林政策により、奥山が大荒廃したのだとの認識を共有する人たちの集まりが国会の中にできたことの意味は大きい。


 設立趣意書の冒頭には、「森の保全に成功してきた日本人」とあり、私たちの祖先が、クマをはじめとする大型野生鳥獣のすむ保水力抜群の豊かな森を全国に保全してきたことが誇らしげに書かれている。


 しかし、今や日本の森林面積の42%の人工林が誕生し、その造林地の多くは国内林業の不振で放置され、荒廃の一途をたどっている。光が差し込まない人工林は、下草が生えず、表土が流され、生き物のいない死の森と化した。各地で湧水や井戸水が枯渇、川の水位も大幅に低下し、山崩れ、洪水などの災害が多発してきている。今秋のクマの大量出没は、えさ場とすみかを失ったすえが根本的原因で、異常気象は誘因に過ぎない。クマから種の大量絶滅が始まっており、これを保全しなければ、豊かな森の維持形成は難しい。


 この日の発足にあたり、林野庁と環境省から担当部局の官僚がきて、それぞれ「森林・林業の再生に向けた改革の姿(案)」の骨子と「平成22年秋クマ類の大量出没」についての説明がなされた。私は、彼らが野生動物の出没と森の荒廃が因果関係にあることをどう認識しているかを訊いた。答えは、様々な意見があり、直接関係があるとの認識に至っていないとの従来からの政府答弁そのものだった。私の問いかけに続くある議員の指摘は、そんな認識では、この議員連盟の誕生、存在を否定するものだとした。場内からは怒りとともに拍手が巻き起こった。


 私はこの担当部局の官僚の言葉の背後に存在する学者や広範囲な普通の市民の見方、考え方を突き崩す実証と論理を持たねば、この運動の明日はないと思う。この議員連盟の設立で日本の森林利用の在り方に歴史的転換を果たすとの試みに栄光あれと祈らずにはいられない。