小屋のなかに足を踏み入れた途端、50頭ほどの牛が左右両方からにゅっと顔を出した。壮観だった。思わず公明新聞のカメラマンが「西井さん、ありがとうございます」と大声で叫んだ。実はその場所にたどりつくまで、広い敷地の中に点在する二箇所ほどの牛小屋を訪れたのだが、あまり牛の佇まいが様にならず(数が少なく、また寝そべっているなど)、カメラを写す側としては、絵にならないなあと舌うちしたい気持ちだったに違いない。案内してくれた畜産農家の西井さんもいたずら心からだろうか、全貌を示さずに、10ヘクタールもの巨大な面積を持つ自分の放牧地を手前から順に案内してくれた。最初から一杯牛がいるところを案内してくれずに。


 宮崎県内の牛を襲った口蹄疫騒動は留まるところをしらない。何時どんな形で県外にも飛び火せぬとも分からないだけに、予防の体制をとることが大事だ。神戸牛、但馬牛の名で親しまれる兵庫の酪農の実態をそれなりに押さえようとばかりに先週末は、朝来市内の生野町、和田山町や養父市の八鹿町を訪問し、市長や企業のリーダー、病院組合の管理者などと会った後に、村岡町で食用牛を育てているところを訪れた。元村岡町議会議員であり、かつ獣医師でもあった(今は廃業)西井さんは忙しい中、時間を割いてあれこれと対応をしてくれた。既に、牛の売買を取り扱う市場現場では、買い控えの傾向もでるなど、影響もないわけではない。未曾有の事態にただ右往左往するだけではなく、いざという時の対応の準備をする必要があることを実感したしだい。