「官から民へ。そして再び民から官へ」―郵政改革法案をめぐる政府の迷走ぶりは、目を覆うばかり。もともと、2年半まえの07年10月に持ち株会社日本郵政の下に、郵便事業会社、郵便局会社、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の4社を置く形で民営化をスタートさせた。ゆうちょ、かんぽの金融二社は全株を売却し、完全民営化をする予定だった。


 ところが、今回の見直し法案では、日本郵政と郵便事業会社、郵便局会社を一つに統合し、その下に金融二社を置く形にして、3社に再編。政府の日本郵政への出資比率は三分の一超と従来の水準に留めたが、日本郵政の金融二社に対する出資を続け、間接的ながら政府関与の余地を残した。そのうえ、ゆうちょ銀行の預け入れ限度額を現行1000万円から2000万円に倍増。かんぽ生命保険の保障限度額も現行1300万円から2500万円に引き上げた。つまりは、「官製金融」の肥大化で、官営化への逆行だとみられている。


 こうした方向性に対して、山口公明党代表も「郵政民営化の是非が問われた総選挙で民営化への強い民意が示されたのに、その方針を変えるというのなら、民意を改めて問い直すぐらいの議論と国民に対する問題提起が必要。そういう手続きを経ずに、逆行する内容の政策決定をすることには大きな疑問を抱く」と述べている。郵政をめぐっては、齋藤次郎元大蔵事務次官を日本郵政社長にしたことを始め、民営化の推進役を次々と外し、代わってかつての郵政ファミリーが経営陣に参入してきていることに尽きる。「郵政人事で天下り、渡りは全面解禁となった」との指摘もあり、民主党の改革姿勢がいかに偽りに充ちているかが分かる。