週末の姫路城にびっくりするほどの長蛇の列。延々と登城口から大手門まで続いていた。もうすぐ「平成の大修理」が始まり、天守閣に登れないうえ、全体が塀囲いされるとあって、この際登っておきたいとする観光客の皆さんが60分待ちなどものともせずに、詰めかける光景がこのところ続く。


 たまたま姫路・網干のエコパークの竣工式が付属施設の爆発事故(25日に発生。原因は今調査中)で延期になり、街頭演説の予定時間まで少し間もあったので、お城の西北にある姫路文学館に足を運んだ。28日で終わる収蔵品展「司馬遼太郎と俳人赤尾兜子の友情」と「桂米朝 写真・絵画展」を見ておこうと思い立った。新年の会合でこの文学館の副館長から誘われていながら、その機会を逸してしまっていたものだが、急きょ行くことが出来た。ギリギリセーフであった。


 司馬さん、兜子さん(共に故人)や米朝師匠は、姫路とはゆかりが深い。兜子さんと司馬さんは、大阪外語の同期で、後に毎日新聞記者だった兜子が原稿をとりに行くことに。長岡が主舞台になった「峠」の原稿が陳列されていた。こうした特別の催しとは別に、ここには常設のコーナーや司馬遼太郎記念室もある。和辻哲郎、柳田国男、阿部知二、有本芳水らの著名な文人に混じって、辻善之助、三上参次といった私にとって未知の先覚者たちの故事来歴をも披露されている。改めて、ざっと鑑賞したが、常設コーナーも、翌日で見納めになる特別展示室もあまり人影はないのは、いささか寂しいかぎりであった。しばしば、姫路はお城しかないと言われがちだが、こんなにいいところもあるのに、と残念に思った。お城に並ぶ人たちのせめて十分の一でも足を延ばされることを、遅ればせながら祈ったしだい。