国会の雲行きが急に変わってしまった。今週、各委員会で担当大臣の就任挨拶を聞き、それに対する質疑をするということで、スタートしたばかり。ところが、これまでの国会運営ではおよそ考えられないことが起こった。それは、いわゆる“返済猶予”法案の取り扱いをめぐって、である。17日の火曜日に衆議院本会議において、趣旨説明を受け、質疑があったあと、18日に7時間かけて財務金融委員会で質疑し、今日19日には参考人質疑の運びになっていた。それなりの時間をとって議論する流れだったわけだ。ところが、同委員会の委員長が急に予定を変更(もちろん、民主党の判断で)し、採決することにしてしまった。一方、そのために参議院総務委員会の審議に出ていた亀井静香大臣を急遽よびだし衆院の委員会室に出向かわせ、参院の委員会を休憩にしてまで、衆院の委員会で(参考人質疑を自・公両党抜きでやったあと)強行採決をしたというのだから、呆れる。この説明、いささかお分かりいただきにくいかもしれない。


 そんな風景は今まで国会でしばしばあったという方もあるかもしれない。しかし、こんな無体なやりかたは前代未聞(前政権もここまではやらなかった)である。大事な法案だから、委員会が開かれる定例日ではない日にも開き、丁寧にやろうと野党側はしているのに、それを踏みにじるようなやり方はとんでもない。公明党の沢参議院議員が、「質疑をしようとしている矢先に、衆議院の採決に必要だからと、急に委員会が休憩になって、大臣がいなくなった。私の質問が封じ込められた。こんなやり方は全く許せない暴挙だ」と言っていた。


 民主党は、なぜこんなやり方をするのだろうか。小沢幹事長の「この国会は当初の予定通り、会期延長せずに終わらせる」と指示したから、というのが専らの話。国会が延長すると、予算編成やら野党による追及があってロクなことがない、「数で早く押し切れ」という判断か。


 丁寧に審議をしていけば、民主党は得点を得られるのに、“もったいないなあ”と、よその党のことながら、心配してしまう。というよりも、政治不信をこんなことで募らせるのは、日本の政治全体にとっての損失だ。政権交代をしても国会の数による横暴だけは、今までと同じで変わらないというのでは、あまりに残念ではないか。新しい野党はかつてを“反省”し、十分に聞く耳を持っているのに、理不尽であると思う。