輿石東参議院議員―民主党の議員会長である。この人の代表質問をテレビで聴いた。その前に質問に立った自民党の林芳正氏の若さ溢れる堂々たる体躯の、颯爽とした雰囲気に比べて、いかにも古めかしく老獪なたたずまいぶりが目立った。小沢一郎民主党幹事長がその能力を高く評価していると、メディアを通じて伝えられている人なので、身を乗り出して聴いた。日教組の幹部であったと知ってはいるものの、その人となりをあまり多くは知らない。  


 聴き終えて、「政権交代」を勝ちえた高揚感がひしひしと伝わってきた。「政治とは生活」「政治とは愛」-競争から取り残されてきた弱い人々に手を差し伸べるのが政治だ、と。多くの人々は日教組出身と聞くだけで、権利ばかりを主張し、義務を忘れさせた、戦後日本の教育に弊害をもたらした元凶ではないか、と反射神経的にとらえる傾向がある。「コンクリートから人へ」「人間のための経済」と茫漠たるキャッチコピーばかりが氾濫する演説を聴いていて、その現代日本の政治・経済の捉え方の甘さには驚く。


 これは、旧社会党、旧民社党などにかつて所属した経験を持つ、社会主義や社民主義に影響を受けた人々が、今の民主党の重要な部分を形成している(内閣に8人が入閣)ことと無縁ではないように思う。「社会党なき時代の社会党政権」(「正論」の特集)とさえみる向きもあるのだから。


 もっとも、政党を形成している人々のイデオロギーに関心をこちらが持ちすぎるのかもしれない。民主党の主張を甘いと言う前に、彼らを見る目があまりにステロタイプ的になっていはしないか、と反省するべきかも知れない。頭ごなしに、既成の先入観にとらわれすぎないよう、虚心坦懐に民主党をじっくりと見据えていきたいとは思う。