このたびIAEAの事務局長に日本人が初めて選ばれたことは嬉しい。今まで様々な国際機関の選挙があったもののことごとく外れてきただけに喜びはひとしおのものがある。核兵器にまつわる問題は、世界の唯一の被爆国である日本がリードせねば、と気ばかりせってもうまくいかなかったが、これで一歩前進が期待できると思うのは、私だけではあるまい。


 先日、国会内で、公明党外交部会として、児玉克哉三重大学教授を招き、「核廃絶に向けてのヒロシマ・ナガサキプロセスの意義と課題」と題しての講演を聴いた。この人は、核廃絶までの現実的・具体的なロードマップを示すために、発想の転換をしようと呼びかけている人で、聴き応えがあるいいお話であった。児玉さんは、対人地雷禁止条約やクラスター爆弾禁止条約などにおけるこのところの前向きの動きや、米国のキッシンジャー元国務長官、シュルツ元国務長官、ペリー下国防長官、ナン元上院軍事委員会委員長らが相次いで核廃絶に向けての発言を繰り返していることを指摘し、新たな時代の流れが無視できないものになっていることを強調された。


 そのうえで、児玉さんたちが進めている「ヒロシマ・ナガサキプロセス」と呼ばれるものは、核を持っていない国々が核廃絶のための新たなルールを作ろうというもので、これによって持っている国々を孤立させようということに狙いがある。1)核兵器使用・威嚇禁止条約の制定 2)核兵器開発禁止条約の制定 3)核兵器廃絶条約の制定―を段階的に経た上で、グローバル非核地帯条約を作ることを目指そうというもの。


 この話を聴いていて、かつて私が提唱して党の政策に取り入れた新非核3原則を思い起こした。核兵器をめぐる自制の 1)持たず 2)作らず 3)持ち込ませずとの非核3原則から、他者を縛るための 1)持たせず 2)作らせず 3)使わせず―というものであったが、残念ながらそれを実行させるプロセスが明確でなく挫折してしまった。その点で、児玉さんの提案する 1)から 3)までのプロセスは、使わせず→作らせず→持たせずとの原則に対応するもので、大いに注目されよう。もう一度我々もこのプロセスつくりに協力することが大切なことを確認しあう必要があることを痛感した。


 意見交換の中で、公明党のこれまでの考え方を説明する一方、核を持つ国々における核廃絶に向けての世論形成がどういうものかを訊いてみた。これには、国家の動きよりもNGOの動きに注目すべきだとの答えが返ってきた。なるほどとの思いを強めたしだい。