新型インフルエンザの影響で、先週末は次々と予定が変更されざるを得なかった。土曜日昼の海上自衛隊阪神基地の会合は中止になり、午前と午後の須磨区内での語る会も。


 同区内には、私の中学、高校時代の同期を中心に少なからぬ友人がいるので、久方ぶりに集中的に訪問して、旧交を温めることにした。その合間に、気になっていた老婦人宅を訪ねた。Sさんは、大正10年生まれの87歳。去年の須磨での懇談会の場で、質疑応答が若干入り乱れたことがあったが、その時にすっくと立ち上がった彼女は「自民がどうの、民主がどうのといったことは、みんな公明新聞に書いてある。公明新聞はいい新聞だ。とくに連載小説の『安国寺恵瓊』が面白い」と発言された。一瞬にして場内は笑いの渦となり、盛り上がった。いわば、急場を救って貰ったことになる。


 ところで、このことには後日談がある。この小説の作家である火坂雅志さんは、ご存知のように今年のNHKの大河ドラマ『天地人』の作者でもある。私自身、これまであまり馴染みがない作家だっただけに、この符合にはいささか驚いた。そこで、ほぼ一年たって再び訪れることになった先日の須磨での「議会報告会」で、火坂さんのことを改めて紹介するとともに、この日も参加されていたSさんの先駆性を褒め称えた。加えて、愛読者であるSさんのために、色紙に火坂さんのサインを貰ってあげることを思いついた。そうした経緯もあり、この日は、直接お住まいを訪ね、サインを届けることにしたしだい。


 公明新聞の小説を愛読されていることや、その発言ぶりから、ただのおばあさんではないと睨んでいたが、案の定というべきか、某県の高等女学校出身で小学校の教員をされていたという。訪問したことに対して、「これまで生きてきてこんなに嬉しいことはない」と少々大袈裟に喜んで頂くとともに、思い出のこもった写真を見せてくださりながら、起伏に富んだ人生の苦楽をあれこれと話して頂いた。


 この仕事をしていると、様々な方々との出会いがあるが、新たな感動を呼ぶ一ページがまた加わった。