先週末に三木市を訪れた際に、高校時代の友人のところに、アポイントなしにいきなりお邪魔した。加古川市の有力企業に勤めた後、定年退職した人で、今は年金生活に入っているとの理解だった。つまり、悠々自適の生活だろうから、いきなり行っても大丈夫だろうと踏んでいた。 その見立て通り、彼は在宅しており、温かく迎え入れて頂いた。話して分かったことは、確かに年金生活だったが、違っていたのは、彼は博物館学芸員の資格を取っていたこと。これには驚いた。


 このところ、高知市、伊丹市、東京都などの訪問先の美術館や資料館などで学芸員の方々にお世話になる機会がしばしばあり、この資格を取得することは難しいと理解していた。定年後の私と同世代の人にはいささか無理ではないかとの思いが強かった。


 彼の場合、若き日に、仕事として美術作品に接触する機会があり、全くの門外漢ではなかったようだが、博物館学や美術史をはじめとする八科目23単位を二年以内に取得するというのは、容易ではなかったはず。レポート22本の提出以外に、テスト受講や、実習など10日ほど大阪南部にある大学に出向くなどしたとかで、見事に一年間で合格したというから、立派だ。いまは、兵庫県立美術館のボランティアをしているが、「今後はテーマを持って研究の手助けをできれば、最高」と夢を語っていた。


 彼の他にも、臨床心理士の資格を取って自宅で悩める人びとの診療にあたっている友や、書写山円教寺で性空上人の故事来歴を観光客に語っている友もいる。定年後の人生をこうした知的環境で過ごすことは、多くの人にとって憧れの対象であろう。当方も彼らの日常から教えを請う一方、支援ができることは大いにしていきたい。