「介護の現場では介護報酬の3%アップを喜んでいない」という声を先週末の語る会の会場で、始まる前の雑談の中で聞いた。これはいささかショックであった。先に兵庫県の信用保証協会の理事長を招いて行った自民、公明両党による中小企業関係者との懇談の場で、介護報酬のアップは非常に良い政策だとの評価を頂いたばかりでもあり、一般的に喜ばれているに違いないとの受け止め方をしていたからだ。


 訊いてみると、介護報酬の3%アップによって、介護労働者一人当たり、2万円近い報酬増になるとの話が一人歩きしていたためだ。これは、ほぼ80万人から100万人近くいるとみられる介護労働者が、今回の第二次補正によって、介護報酬改定予算が約2000億円であることから、単純に計算して一人あたり約2万円アップするとの数字を厚生労働相が発言したことに端を発している。実際は、介護事業者への様々なサービスに対する報酬を勘案したもので、一人ひとりの労働者の可処分所得がそれだけアップすると見るのは早飲み込みだったといえよう。介護の現場では、サービス提供責任者の業務、認知症患者や独居高齢者へのケアマネ業務、夜間業務、看護体制、重度化・認知症対応、看取り業務など様々の負担が大きい日常業務がある。今回の予算措置では、そうした業務への評価として、介護事業者全体に対して施される報酬改定が増えるのであって、直ちにそれが労働者の報酬増に結びつかないのだ。


 先の衆議院代表質問で、公明党の太田代表がこれらの実態を踏まえて「実際に(介護)従事者の賃金にどれだけ反映されていくのか、生涯設計が可能な給与体系が確立されるように真剣にフォローアップすべき」「(他業種からの)介護資格取得に対して、訓練費用とともに当面の生活費など万全の配慮措置を講ずることを求めます」などと主張していた。この太田代表の質問を真剣にうけとめて、キメ細かな対策をうっていかねばならぬことを改めて痛感した。