議論はもうこれくらいで、早く現場に(海上自衛隊を)行かせてください―3日に開かれた与党海賊対策プロジェクトチームに出席した船主協会、船長協会、海員組合の人たちから、別れ際にふともらされた言葉だ。このところ自民、公明両党を中心に幾度かお招きして事情を聞く機会があったようだから、先方としては、もういい加減にして欲しいという気になっておられるのかもしれない。


 その気持ちはよく分かるが、自衛隊をだすからにはそれなりに慎重さを要する。ただ、民主党はじめ野党からは、先の本会議の質疑でも、「なぜ、海上保安庁ではだめなのか」「喜望峰回りではなぜいけないのか」との主張や質問がなされた。私は、こうした野党の主張をどう思うかと訊いてみた。森本船長協会会長からは、すでに十数隻が喜望峰経由で回っているとの経緯を述べられた上で、極めてコスト高になるために望ましくないとの回答だった。海上保安庁の船舶が対処するには、あまりに遠い海域であり、油の補給が困難との答えは言われなくとも分かる。こちらは、民主党はじめ野党の主張があまりに無責任ではないかとの答えを期待したのだが、そこまではなく、抑制されていた。船の男たちからは、他国の護衛艦のお世話になる片身の狭さが語られ、海上自衛隊によってエスコートしてもらえることで十分に抑止力になることが訴えられた。


 このプロジェクトチームの会議の場で、私はこれまで一時も早い対応の必要性を説いてきた。事故が起こってからでは遅い。なにも戦争に行くわけでもなんでもない。無法者のソマリアの海域をして襲うことを躊躇させるには、しかとした装備をもった護衛が必要であるからだ。政府は自衛隊法82条における「海上警備行動」の発動にようやく重い腰をあげた。与党PTとしては新法にむけての整備も急ぎ取り組んでいる。その議論の最中に不幸な事態が起こらないことを祈る。