安倍総理の辞任とは別に霞ヶ関も今、人事の季節。つい先日まで私のところにも退任や新任の挨拶に訪れる人が次々と。11日には辻哲夫前厚生労働事務次官と増田好平防衛事務次官がこられた。辻さんは兵庫県の出身で、私とは同郷。一昨年に私が厚生労働副大臣になった頃には様々にお世話になった。この人は行政マンとしてとびきり優秀で、同時になかなかの読書家でもある。あれこれと読むべき本を教えてもらったものだ。社会保障分野は初体験の私は、手探りで一心不乱に読みまくっていた頃だけに、この人のアドバイスはありがたかった。


 官僚生活の最後が社会保険庁を舞台にした「消えた年金」問題だったことは辛かったと思う。九仞(きゅうじん)の巧を一簣(いっき)に虧(か)くとは大袈裟だが、晩節を汚されて気分はおだやかならざるものがあったはず。しかし、医療にまつわる懸案をめぐって最後まで元気な議論をした。私が虎ノ門病院の小松秀樹先生の『医療崩壊』『医療の限界』などを引用し、厚生労働省の持つ課題などを不躾になげかけたことに対して、大筋で認めつつ、これからの後輩たちの活躍をウオッチしてほしい、と。今年の厚生労働白書に、自分の主張を精一杯盛り込んだので、注目をしてほしい、との言葉にこの人らしさを感じた。


 増田次官は周知の通り、多くの先輩たちを飛び越えて新しい防衛省のトップに。安全保障分野に長く係ってきた私とは古くからの友人。このところ公明党提唱のPKOセンターの新設をめぐりやりとりの機会も多かった。この省生え抜きの人だけに期待の声が大きい。テロ特措法などの取り扱いやら新法について意見交換をした。防衛省は従来、外務省との関係がなにかと懸念されてきたが、この人の登場でスムースにいくに違いないと思われる。