沢山の犠牲者を出してしまった阪神淡路の大震災時の知事として、そんな賞を頂くのには相応しくないと、お断りし続けていたのです。ところが、「それはお前の思いあがりではないのか」と言われ・・・―前兵庫県知事・貝原俊民氏の平成19年春の叙勲受賞にあたっての「感謝とお礼の集い」での冒頭の挨拶です。兵庫県立美術館ギャラリーで開かれた催しは、山崎正和、五百旗頭真、谷川浩司氏らをはじめとする文化人や政財界関係者ら兵庫県人でいっぱい。場所といい、由紀さおり・安田祥子姉妹の「被災地を励ます歌」といい、通常のこうした会と一味違ったおしゃれな会でした。


 貝原氏に対しては、石原慎太郎都知事の「神戸の地震の時、首長の判断が遅かったから、二千人の余計な人が亡くなった」との、つい最近なされた挑発的言動を始めとして、当初から「自衛隊への『派遣要請』が遅く、それは(貝原氏の)判断ミスによるというようなニュアンスの報道が多くなされたこと」は周知の事実です。この日、参加者に配布された「叙勲受章にあたって―わが国の災害対策のあり方に思う」との24ページほどの小冊子は、こうした一連の捉え方を「全くの事実誤認に基づく発言」だとする反論となっています。


 あの悲惨な震災から12年。干支でいえば一回りした(井戸知事)段階でも、正直言って貝原さんに対する誤解は解けていません。本人としては全く口惜しい限りだったことでしょう。「責任逃れの言い訳のように受け取られてしまう」ことを恐れた貝原さんはあえてこれまで実情を説明してこなかったからです。それをこの小冊子では初めて破っています。読み終えて、もう少し早くに公表されればよかったのに、と思うことしきりです。