約2000人の警視庁機動隊員に見守られながらゆっくりと走る―思いがけずにこんな経験をしてしまった。朝6時半に宿舎を出て、赤坂見付駅前を経て迎賓館から絵画館前へと走った。ところが、何時もののどかな雰囲気はなく、ただならぬ気配が漂っているのに気付く。機動隊員がずらり整列しているところに突っ込もうとしてしまったのだ。聞くと、観閲式をこれから行うのだという。別に人払いをしているわけではなく、ランニングコースは自由に使える。ただし、式典を前に待機している隊員の目の前を走ることに。まあっ、いっか、と決めた。


 先頃、愛知県で元暴力団員が元妻を人質にして自宅に立て篭もった際に、発砲した拳銃に被弾した若き巡査が殉職、別の警官も大怪我をしてしまった。この例だけではなく、各地で機動隊員や警官が被害に遭うケースはあとを断たない。過去には、カンボジアで文民警察官が殺されたり、北朝鮮の不審船との銃撃戦で海上保安庁の職員が危害を受けた。日本の安全を守るために日夜活躍する警察や海上保安庁の職員は常に命がけの仕事をしていることに、深い敬意を表したい。


 これと直接比較すべきではないが、自衛隊員が本来の任務遂行の中で死んだ事案はない。自衛隊発足いらい55年ほど、訓練中の事故死は数多くあれども、である。これは勿論、日本の自衛隊は、その誕生の背景やら未だに位置づけすら憲法に明確でないことと深い関係があり、慎重のうえにも慎重を期すことがもとめられてきている。悲劇の中核は常に警察官や海上保安庁職員といった事実を思うにつけ、考えさせられることは多い。一方で、自衛隊員の秘密漏洩事件などが目にあまるなか、官製談合を指弾された防衛施設庁の解体を目的にした法案が衆議院を通過した。防衛省に格上げになった今日、全自衛隊はしっかりと気をひきしめてもらいたい。