この国会初めての党首討論を聴いた。45分間のやり取りとしては、聴き応えはあった。こういう論議をしっかりと繰り返すことが大切だと思う。小沢さんの狙いは、当然ながら、安倍自民党と小沢民主党との差異を浮き彫りにすることにあった。首相がその著作『美しい国へ』のなかで、天皇制の大切さを強調したり、あるいは憲法改正やら教育基本法など「戦後レジュームからの脱却」などといった理念的なことに関心を抱いているが、一方で国中いたるところで、国民の重税感や疲弊感が漂っているではないか。増大する格差是正に動かずして、何が美しい国で、なんで憲法改正なのか、ということであった。


 切り口に間違いはない。確かに、小泉改革が始まって6年。つまり今回改選になる参議院議員の前の選挙の時いらい、増税感が高まっていることは否定しない。私に言わせると、同時に国際テロの本格的登場によって、新しい戦争の時代にも世界は突入した。つまり、内外の情勢は一変した。少子高齢社会、財政難、経済のグローバル化の中という変数の中で、国内政治の舵取りはされねばならぬし、日米同盟の絆、北東アジアにおける中韓との協調、国際テロの封じ込めといった命題の中で、外交・安全保障の展開がなされねばならない。これらは、小沢さんが首相になっても、民主党が政権をとっても変わらぬ条件なのである。


 こういう条件の中で、いかに国民の負担感を少なくし、国家の安全を勝ち取っていくかの議論が真摯になされねばならない。今日の議論は、小沢さんが切り込んだものを、安倍さんがかわし、跳ねのけるといった入り口のものとしては、格好がとれていた。小沢さんの指摘は、政権内部でいえば、公明党が常に意識して注文をつけている視点であり、問題意識は共有している。「小沢さん、党首討論を逃げないで。やればできるじゃない」というのが率直な印象である。