一昨日の参議院の特別委員会における総理出席のもとでの審議状況は、テレビ中継がなされたので、ご覧になった方も少なくないと思われる。何人もの方から写っていたね、とのご挨拶を頂いた。あの場面はただ座っていただけだが、世は映像時代とあって、それだけでいい評価していただく。面映い限り。


 政府提出の法案ではなく、議員立法の法案審議に首相が出席を求められるというのは異例のこと。というのも、首相が憲法改正をしきりに取り上げ、この夏の参議院選挙の争点にするという発言をしていることが、民主党など野党の猛反発を買ったためである。この質疑を首相の傍で聞いていて、安倍さんというのは信念の人だなという点を感じた。自民党が改憲を党是として立党いらい掲げており、自分自身も党内で憲法草案作りのまとめ役をしてきた者として、その成立について真正面から取り組む姿勢を示さないと、かえって国民の皆さんに不誠実だと思われる、というのだ。確かにそういう面はある。


 わが党の太田代表とこの点について議論したことがあるが、太田さんは、首相に対して、「憲法改正を争点にする、というのではなく、争点になるという程度にとどめておくように言った」という。「憲法改正」を積極的な争点化の対象にするのではなく、多くの課題のうちの一つとして位置づけておけばいいのではないか、との助言である。これまた、適切なものだと思う。


 憲法を全面的に書き換える改憲をしたいとの自民党総裁としての安倍さんの本音と、そうではなく、現行憲法の骨格をそのままにして、部分的に加憲することでいいとする公明党の思いとが、同じ屋根の下で息をひそめるかのように同居している。時間の政治学のなかで、どのように変貌を遂げていくか。これこそ21世紀初頭における日本の自公連立政権の最大の課題である。