「中国の安全保障観は、アヘン戦争以来の被害者意識、劣等感、トラウマに満ちた特異なもので、一言で言えば、力がないとやられると思い込んでいる」― 一昨日夕刻に開かれた、公明党の現代中国研究会での講師・茅原郁生拓殖大学教授はこう切り出した。この会は、昨年11月からほぼ毎月、中国研究に卓越された方を招いて開催しているもので、今回のテーマは、「中国の国防近代化の動向―アジアの安全保障への影響」。中国は06年12月に「中国の国防」と題する国防白書を発刊した。各国からの中国脅威論をかわしながら、国防近代化を推進する意図が強く感じられる内容だ。茅原さんは、この白書をもとに19年連続で対前年比二桁増といった著しい国防費の右肩上がりの内容を分析しつつ、軍事的透明性が不十分な実態を明らかにされた。実に聞きごたえある面白い講義であった。


 お話を聴いたあと、私は4つの点について質問をした。一つは、1)中国の軍人の戦闘力というのは実際はどんなものと見ているか 2)国連平和維持活動(PKO)に積極的に取り組んでいるが、世界の評価はどうか 3)陸軍、空軍の力が量的には凄いとされるが、全体的にパワープロジェクション(戦力投射)はどんな程度か 4)かつてソ連は米国との軍拡競争に追い込まれて破滅した。このひそみに倣って、中国を破綻させるという考え方をどうみるか、と。「なかなか専門的な質問ですね」―といいながら、大要、以下のように答えていただいた。


 1)朝鮮戦争、中越戦争ぐらいしか実例がなく、実のところ、よく分からない。勿論、ゲリラ戦には強いと思われる 2)カンボジアPKOでは日本と同じ道路建設に従事したが、短期に長い道路を作ったとして高い評価を得た。最近のPKOでも評判はいい 3)海兵隊は一個師団を持っているが、未だたいしたものではない 4)ソ連の二の舞にすることは不可能ではないが、中国を破綻させると、かえって周辺国家としては困るので、とるべき道筋ではない。その点を中国は十分見抜いている―示唆に富む答えだった。