みんな小学1年生でならった「8」の書き方をしている? 

あたりまえだとおもっていた数字の書き方に意外な事実が!

 

 銀行の窓口の方が手書きで数字を書かれたものを

みてみると、少し斜めに書かれるその数字の字体は

とても見易く、格好良く見えます。

 

 今でこそパソコンやATMや機械で印刷するのがあたりまえですが、数十年前までは銀行やお金を扱う職場では数字は直筆で書いていた時代を考えると、字の上手下手や筆跡の違いなどの個人差は極力なくすように組織的に取り組まれていたことは容易に想像ができます。 

 

 みんなが同じ字体で、見やすく速く書くため標準字体を定めてトレーニングをおこなう必要性も出てきますね。

 

  銀行など、一部の職種では、入社後にそれぞれの職場組織の標準字体にあわせて、数字を書く練習をされているそうです。

 

 また、私は普通高校に通っていたので知りませんでしたが商業高校で数字の書き方も改めて練習するところもあるそうです。

 

 数字の筆順について、通常、小学校では、数字の8は、

Sの字を書くような筆順で教わります。

 

 

 しかし、数字の書き方をネット検索で調べていると、 ちらちら出てきたのですが、一部の職種 (銀行も含みますが、全ての銀行かどうかは不明) では、8を書く際、筆をおろした最初の点から右上から左下へ書くやり方を組織内で採用している職場もあるそうなのです。

 

 この、8の書き順の小学校でならう筆順ではないやりかたを、 ここでは便宜上、「逆Sの字」 の筆順と呼ぶことにします。

 小学校でならう「Sの字の筆順」と、 社会に出て(一部の職種で)通用する

 「逆Sの字の筆順」の 2系統あるとすると、これは結構な不都合というか、 矛盾というか混乱をまねくことではないかと思われて気になりました。 

 

 いま、身近な図書館や書店に並んでいる本で数字の書き順を

確認しようとすると、小学校1年生の教科書・参考書や、

幼児むけ知育学習本などでしか、数字の書き方を明記している

出版物は見当たりません。

 

 それらの教本では、8の書き方は、小学校で教わる「Sの字」の筆順でかかれていました。

 

  しかし、唯一、書店には並んでいませんが、 通販で手に入れることのできた暁出版という出版社の 「数字練習用紙」という、題名そのままの数字練習用紙ですが、これだけは、8の書き方が、「逆Sの字」 に書く筆順を示していました。

 

 (下の写真、矢印の向きに注意)

 

 この数字練習用紙にある字体は、冒頭の銀行員の方が書くような見易く・恰好の良い、しかし小学校で習う数字の形とはすこし違う、いわゆる銀行数字のお手本練習帳です。

 

  この出版社の紹介文によると 「数字の書体は,~略~  旧郵政省貯金局が定めた標準字体です。」 とあります。

 

  旧郵政省貯金局が制定したというと 随分昔のような気がしますが、 その当時は8の書き順が 「逆Sの字」 が主流だったのでしょうか。 残念ながらこの暁出版の 「数字の練習用紙」にはこれ以上詳しい注釈はありません。

 

  8の書き順についての明確な経緯とか説明がほしいところ。 疑問がまだ解消されません。 そこで文献を調べてみることにしました。

 

  調べてみたところ、 出版年昭和10年発行の 「吉田一郎著:簿記数字の書方」 という古い記録にこうありました。

 

以下原文です。 

 


「此8の書き方に色々ありまして、第37圖(←古い”図”という文字) の如きものがあります。

震災前貯金課あたりでは入所早々特に此最後の8に一定さす様に教へられたものであります。 しかし今では私共の唱道して居ります前圖の中最初の8の如き 極めて平易な無理のない書き方に漸次改良されて来たのは喜ばしいことであります。」


 

この文章に出てくる”震災”というのは大正12年の関東大震災のことでしょうから、大正12年より前の公的な金融機関とおもわれる”貯金課”という組織では、8を「逆Sの字」の筆順で書くのが主流だったようです。

  この本が執筆された昭和10年くらいには、現在と同じ「Sの字」に 改良されてきたと記されています。

  もともとは逆Sの字の筆順が標準だったが、だんだん「Sの字」の書き方が主流に置きかわってきた。という経緯がうかがわれます。 

 

【まとめ】

 ●普通、数字の8は、「Sの字」で書く。 小学校でもそのように教えている。

 ●金融・財務を扱う職種・職場では、その組織のローカル標準が存在する場合がある。数字の筆順(特に”8”)が異なる場合がある。

 ●大正12年以前は、8を、「逆Sの字」で書くのが主流だったが、  昭和10年くらいには、 現在と同じ「Sの字」筆順が主流に変わった。