Ronald Rowe Jr. Paul Abbate
ペンシルベニア州バトラーで起きたドナルド・トランプ大統領の暗殺未遂事件で、
シークレットサービス（大統領警備隊）の失態を調査する米連邦議会上院の公聴会が
３０日に開かれました。
ロナルド・ロウ長官代理の証言から新たな事実が判明しました。
ロウ氏は、上院司法委員会と国土安全保障委員会が共同開催した公聴会で、
今月１３日に前大統領が銃撃された際、地元警察の対応に不備があった点を強調。
ロウ氏の証言
トランプ氏の警護を担当したシークレットサービスも任務に当たっていた狙撃班も、
銃撃犯のトーマス・マシュー・クルックス容疑者が銃を手に会場付近の屋上に
陣取っていたことを知らなかった。
クルックス容疑者の存在を知ったのは発砲後だった。
連邦捜査官は現在、クルックス容疑者のYoutubeアカウントを捜査中。
ＦＢＩのポール・アバテ副長官も公聴会でアカウントについて言及。
プラットフォーム名は明かしませんでした。
暗殺未遂事件以降、事件に関する議会公聴会はこれが４回目で、
議員らは３時間を超える公聴会でロウ氏、アバテ氏が証言した内容に満足した
ようでした。
国土安全保障委員会の委員長ゲイリー・ピーターズ議員は、地元警察当局の主張と
して、地元警察当局が危険を「報告できたのは州の司令本部のみ」で、
シークレットサービスに伝達することは容易ではなかった。
と述べました。
しかし、ピーターズ議員は、
「銃を持った男が屋上にいるという報告が地元当局から上がってから」
銃撃が始まるまで
「約３０秒の猶予があった」とするアバテ氏の証言にも言及。
「狙撃班に直接伝達がなされていたとしたら、銃撃前に対処する時間の余裕は
あったか？」とピーターズ議員は質問。
ロウ氏の返答は、
「そういった情報がこちらに入っていれば、狙撃班もより迅速に対処できただろう」
「そういった情報は地元当局側で止まっていたか、上まで上がってこなかった
ようだ」
「私としても、そうした情報伝達が本来のスピードより遅かったことは悔やまれる」
「そうした状況だったとは我々も知らなかった」
「クルックス容疑者は１発目の銃声から１５．５秒以内に射殺された」
バトラーの集会でドローン（無人機）対策体制が事前に敷かれなかった理由は、
「事件当日、接続の問題があったため……対応に遅れが生じた」
この問題が頭から離れず「ろくに眠れなかった」
「（ドローン）対策機材が配備され、犯人の位置を特定できていたならどうだった
か」
「対策が講じられていれば、ドローンを飛ばすクルックス容疑者の姿が当局の目に
入り、銃撃前に接触できていただろう」
「今後はシークレットサービスもドローンを活用し、先々の集会の安全強化に
役立てていく」
「他に安全策を強化していれば、バトラーの集会の警護も厳重になっていたことは
明白だ」
「したがって、屋上の脅威やその他警戒レベルの高い危険を察知できるよう、
警護に当たる会場ではドローン装備の使用を拡大するよう指示した」
「今後は国土安全保障省と連携してシークレットサービス専用の独立回線を開設し、
公共回線には頼らないようにする」
とロウ氏は述べました。
先の暗殺未遂事件での具体的な原因について議員から尋ねられ、
「警護の不手際にいくらか責任がある」
「共同で警護に当たっていた地元警察当局にも一部問題があった」
「今後シークレットサービスは、警護に当たるイベントで地元警察当局が
職務をまっとうできると思い込まないようにする」
とロウ氏は述べました。
銃を手にしたクルックス容疑者がビルの側面を登ったエリアについては、
「てっきり州および地元当局が対応しているものだと思っていた」
「思い込みをしてしまった」
「クルックス容疑者が狙撃位置に選んだＡＧＲビルに監視の目が十分向けられ、
地元当局の狙撃班も配置されているものだと思っていた
「近隣のビルには地元警察当局が配置されており、屋上のクルックス容疑者の姿が
はっきり視界に入ったはずだ」
「なぜもっとしっかり目を光らせていなかったのか、私には理解できない。
あの場所に人員を配置していたなら、少なくとも誰かしら屋上方面を見ていた
だろうに」
「狙撃班の持ち場からは犯人の姿が確認できたはずだ」
「左方向に視線を向ければ、犯人が目に入らないはずがない」
「地元警察が犯人を無力化するべきだったとは言わないが、持ち場から左方向に
目を向けていればおそらく……」
シークレットサービス職員の懲戒免職がない、
トランプ氏とジョー・バイデン大統領の警護レベルに差がある、
それについて、複数の上院議員がロウ氏を責め立てました。
ロウ氏は声を荒げて反論。
「慌てて判断するつもりはない。責任追及は必ずする」
「事件当日の失態に関する捜査は進行中だ」
Joshua David Hawley
これに対してミズーリ州選出のジョシュ・ホーリー上院議員は、
「誰かに落ち度があったのは至極明白なのでは？ 前大統領の銃撃事件だ」
「今回の事件は、間違えばテキサス教科書倉庫の二の舞になっていたかも
しれない」
１９６３年にダラスで起きたジョン・Ｆ・ケネディ大統領暗殺事件に言及し、
ロウ氏は反論。
「この１７日間、私もあなた方と同じように、あの日のことを考えて眠れなかった」
「だったら懲戒免職したまえ」とホーリー議員。
ロウ氏は「そのためには適切な捜査を行う必要がある」と返答。
Rafael Edward Cruz (Ted Cruz)
３０日の公聴会では共和党のテッド・クルーズ上院議員もロウ氏を追及。
トランプ氏の警護レベルがバイデン氏と違う理由を問いただしました。
「現職の米大統領とは違いもある」とロウ氏の返答。
「どんな違いか」とクルーズ議員。
「違いは――国家指揮官として核攻撃を始める権限がある点だ」
「現職大統領には適用されるが、元大統領には適用されない警備項目は他にもある」
とロウ氏の返答。
アバテ副長官によると、
ＦＢＩはトランプ氏暗殺を謀った殺人犯と関連があると思われる
ソーシャルメディアアカウントを突き止めたが、そこには政治的暴力に傾倒した
コメントが投稿されていた。
捜査当局は２０歳の容疑者による銃撃の動機解明が難航している。
「お伝えしたい事柄として、犯人と関連があると思われるソーシャルメディアの
アカウントをごく最近発見した。２０１９～２０年ごろのアカウントだ」
アカウントには「７００以上のコメントが投稿されていた」
「結果的に犯人のものであれば、反ユダヤ主義や反移民的な思想を反映し、
政治的暴力に傾倒していたことがうかがえる。過激思想と言える内容だ」
