Ted Stevens Anchorage International Airport

 

 

雪に覆われた米アラスカ州チュガック山脈を背景に、わずか30万人が暮らす

 

都市アンカレジ。ここに世界最高の立地条件を誇る空港があります。

 

 

標準的な世界地図で見ると、アラスカは遠く離れた場所にあるように見えるかもしれません

 

が、地球を回転させれば、アラスカが文字通り世界の頂点にあることがわかります。

 

 

 Ted Stevens Anchorage International Airport国際空港は、

 

ニューヨークと東京の中間に位置し、9割の工業先進国から9時間半ほどで到着する

 

貨物ハブ空港。

 

 

現在、世界30カ国以上がロシアの航空機による自国領空の通過を禁止し、

 

ロシアも同様の禁止措置を講じています。

 

 

ウクライナやベラルーシの領空も閉鎖された今、アンカレジは戦略的に重要な場所である

 

ことが証明されるでしょう。

 

 

アンカレジ空港は1951年に完成し、冷戦によってソ連上空の飛行が厳しく制限されていた

 

40年間、欧州から東アジアへ向かう旅客便の中継地として親しまれました。

 

 

90年代に入り国際関係の緊張が緩和されると、航空会社は広大なロシア上空を通過する

 

最も直接的で経済的なルートを採用できるようになり、コスト削減、飛行時間の短縮、

 

運賃の引き下げが可能となりました。

 

これによりアンカレジ空港は、貨物輸送の主要拠点として、また季節ごとに旅客便を運航する

 

小規模空港としての役割を担うようになりました。

 

 

現在の年間旅客数は約500万人。

 

20年初めに新型コロナウイルスのパンデミックが発生すると、アンカレジは医療物資の

 

国際輸送で重要な役割を果たし、再び世界から脚光を浴びるようになりました。

 

また短期間ではあるが、世界で最も発着便数の多い空港になりました。

 

 

世界の旅客輸送量が9割以上減少する中、貨物輸送能力への需要が高まっています。

 

その主な理由は、北米における新型コロナに必要な物資の多くが、アジアで生産されている

 

ため、飛行機は飛行距離を短くするために(地球の)上空を飛びます。

 

アンカレジの利点は、貨物を満載に積んだ飛行機が、燃料を半分しか積まなくて済むこと。

 

飛行機はアンカレジに乗り入れ、燃料を補給し、目的地に向かいます。

 

米物流大手UPSとフェデックスのハブ空港であるアンカレジ空港は、

 

サプライチェーン(供給網)の強化により、2年連続で航空貨物の取扱量が過去最高を

 

記録しています。取扱量は21年単独で約360万トン。

 

アンカレジに住む約10人に1人は空港関連の職業に就いています。

 

 

 

ロシア領空が再び飛行禁止となった今、アンカレジ空港を利用する必要に迫られた

 

航空会社を受け入れる準備ができていると説明。

 

「我々は、航空会社からアンカレジを経由する要請があった場合にいつでも対応できるよう、

 

インフラの確保に向けて作業を進めている」と述べています。

 

これは、運航上のあらゆるニーズに対応するということです。

 

 

1965年ごろのアンカレジ国際空港

 

 

 

航空会社はロシア領空の飛行を回避するため、不経済な迂回ルートを余儀なくされています。

 

これによって飛行時間が長引き、人員、燃料、メンテナンスの面でコストを増大させています。

 

フライト追跡サービス「フライトレーダー24」が指摘した中で最も極端な迂回ルートは、

 

羽田発ロンドン行きの日本航空43便。

 

同便の飛行時間はこれまでの12時間12分から15時間15分になりました。

 

ロシア上空を西に向かって飛行する代わりに、東に向かい、アラスカ、カナダ北部、

 

グリーンランド、アイスランド上空を飛行する北回りで英国に向かいます。

 

現在の状況がいつまで続くかは誰にも分かりません。

 

これは単に経済的な問題だけではなく、航空会社が綿密に計画した飛行経路と

 

運航スケジュールが混乱に陥っていることから、空港における発着枠の争奪戦でも

 

あるのです。

 

もはやストップオーバーが技術的に必要でなくなったとはいえ、アンカレジの戦略的立地は

 

依然として魅力的な要素です。

 

 

地政学的な状況が劇的に変化する以前、新規参入のノーザン・パシフィック航空は、

 

アンカレジを拠点に米国とアジアを結ぶ国際線の就航を計画していますが、

 

政府の承認はまだ得られていません。

 

 

混雑しているのは空港ではなく空域ということです。

 

通常ロシア上空を通過する飛行機の多くが南下しているため、

 

トルコやルーマニア、東欧上空の航空交通量が増えています。