忘却の章3 | 桜ソラトのブログ

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エメラルドとオパールは
マスターと『奴ら』に合流した。

マスターたちを取り込んだ
異世界を作り出した魔物。

そのコアに接触するために
あとふたりの魔女との
合流が必要だと『奴ら』は言った。



時は再び遡る。

マスター達がアーキタイプに取り込まれる前のこと。

「「さいしょは、ぐー!!」」

大罪の魔女たちがじゃんけんに興じていた。

「ま、待ってほしいっす!!自分はあとだしなんてしてないっす!!」

『ああん?てめぇ明らかにいま遅かっただろうが?ああん?』

「...ガイツさんも負けてるっす」

「は、はう~悪魔さん負けてしまったのですよ~!!」

『てめぇ...だからぐーにしとけって言ったろぉが、なにぱー出してんだ。頭もぱーだな。てめぇ。ああん?』

「あ、悪魔さんひどいのですよ~」

じゃんけんの結果でもめているのは、大罪の魔女のふたり。

天使と悪魔の人格をその身に宿す【強欲】の大罪ガイツと、ふさふさの耳をぱたぱたさせて、後だしではないと主張する【怠惰】の大罪トレークだった。

「ふんぬー!!じゃんけんは一回勝負!!魔女教会の依頼に行くふたりはもう決まったわよ!!」

ふたりを一喝したのは、大罪の魔女の長姉。【憤怒】の大罪ツォーン。

朧の総帥ゼロが起こした事件で、リーダーを失った朧が事実上崩壊して以降、大罪の魔女たちはときどき魔女協会からの依頼をうけていた。

とある任務をうけた大罪の魔女たちの公正なじゃんけんの結果、魔女協会からの依頼に向かうのは、下の妹ふたり、トレークとガイツに決まった。

『だからぐー出せって言ったのによ...』

「はう~悪魔さんごめんなさいです」

「はぁ...ままならないっす」

下の妹ふたりがコンビを組んで魔女協会からの依頼を受けるのははじめてだ。

はじめてのおつかいならぬ、はじめての依頼の結果はいかに?



†††

はじめての依頼。

大罪の魔女たちは知らなかった。

ダイヤから受けた依頼が『魔女狩り』の第一次作戦であることを。

強い魔力を持った魔女が、強い思いとともに死んだ時。魔物の母胎であり元型たるアーキタイプとして転生するという真実。

協会本部で発掘された古文書から知り得たそれは、魔女協会のなかでも十輝石クラスのみが知る特秘機密。

誰より魔力が強いからこその十輝石であり、魔女協会総帥だ。アーキタイプの真実が露見すれば、魔女協会を根幹から揺るがす事態になりかねない。ダイヤは危惧していた。

機密は守りたい。しかし、戦力は欲しい。

そんな懊悩の中にあったダイヤが目をつけたのは、魔女協会の外におり、個々が十輝石級の能力を持つ大罪の魔女たちだった。

ダイヤは、任務の本来の目的『アーキタイプ候補の捜索』という真実を伏せて、大罪の魔女に依頼を出した。言ってしまえば、ていのいい傭兵扱いである。

ただ、11歳のダイヤは決断していた。どんなことがあっても、どんなことをしても、自分の両親を殺害した魔物をこの世から一掃すると。アーキタイプを根絶やしにし、魔物のいない世界をつくると。

とはいえ。

危険な任務だとは知らぬふたり、トレークとガイツが、マスターたちともども、アーキタイプに取り込まれてしまったのは、ダイヤが真実を隠したせいでもある。

その真相を知っていれば、大罪の魔女たちが、末の妹ふたりを任務に送り出すことはなかったはずだ。

普段とは違うコンビで十輝石を向かわせたことも含め、失態に責任を感じたダイヤは、ある意味で魔女協会総帥以上の力を持つふたりに、救援を要請した。




†††


アーキタイプに取り込まれたトレークとガイツのふたりは動いていなかった。

「遭難した時は、動かないのがいちばんっす」というトレークの主張を、ガイツが受け入れたかたちだ。

『とはいってもよぉ...これは遭難じゃねえんじゃねぇか?』

「...じんじをつくしててんめいをまつっす」

『それなんか違うくねぇか?尽くしてねえだろぉ人事...まぁいいけどよぉ...』

「...つくしたっす」

「は、はう~どういうことなのですか~」

それらしい理屈をつけて、ごろごろすることにかけて、怠惰の大罪の右に出るものはいない。

ただ。

アーキタイプは、取り込んだ異物を見逃さない。

魔物がトレークたちを発見し、戦いがはじまった。
じんじはつくしたっす


ガロオオオ
魔物は光の粒子になって消えた。

†††

「は、はう~魔物なのです。見つかってしまったのですよ~」

『なぁ...トレーク。これ移動した方がいいんじゃねぇのか?ああん?』

「そ、それにまーくん達も動いてなかったら、一生会えないのですよ~」

魔物に発見された。

同じ場所にとどまれば、魔物の増援がくることは間違いないだろう。それに、ガイツの言うように、相手方がガイツ達を探しているとは限らない。

それでも...

「...もうすこし待つっす」

怠惰の大罪は「待つ」と言った。表情のとぼしい、そのぽーっとした顔には、何か確信があるようにも見えた。
もうすこし…待つっす



ガイツとトレークは待ちつづけていた。

徐々にではあるが、魔物の襲来の頻度は増し、一度にやってくる魔物の数は増えている。

天悪の双剣ディアウォーゼで魔物を両断したガイツが、しびれをきらして言った。

『このままじゃ、魔物に囲まれるだけだろぉが...トレーク。まだ待つのか?ああん?』

「そ、そうなのですよ~。こんなに魔物が来たら、めんどくさいだけなのですよ~」

「...待つっす」

それでも待つというトレークに、ガイツが噛み付いた。

『何か策でもあんのか?ああん?』

「あるっす」

ガイツ(天使)が「その策、おしえてなのです~」と言った時だった。

再び魔物が現れた。
策はあるっす

ガロオオオ
魔物は光の粒子になって消えた。

†††


『で、策って何だ?ああん?くだらねぇことだったら承知しねぇぞ。ああん?』

「ちょ、ちょっと悪魔さん言い過ぎなのですよ~」

「...」

『ああん?早く言えやコラ?ああん?』

「......」

「だから悪魔さん、ちょっと言いすぎなのです」

「.........」

『んなこと言っても、このままじゃ魔物に囲まれちまうだけだろぉが』

「............」

「は、はう~トレークちゃん?何かいってほしいのです~」

「...ってな具合っす」

『分かるか!!』

「はぁ...ガイツさんもめんどくさいっすね」

『言えコラはやく!!』

「キノコっす」

『キノコじゃわかんねぇよ!!』

「ギッチョフンゴっす」

『正式名称とかいらねぇんだよ!!』

「凍り付いて気持ち悪いキノコっす」

『見た目の話してんじゃねぇよ。作戦と関係ねぇだろ!!ああん?』

「叩き付けると、釘を打つのに便利っす」

『用途の話でもないだろコラ!!釘か!?どこかに釘を打つことが作戦に必要なのか?ああん?どこにでも釘打ってやらぁ。ああん?』

「そういう話じゃないっす」

『禿げるわ!!よわい14にして禿げそうだぞコラぁ!!アイテルが最近頭のてっぺん気にしてる理由がわかったわ!!』

「はぁ...ままならないっす」

『こっちがだ!!てめぇ舐めてんのかこら。ああん?』

「は、はう~ふたりのお話きいてるの楽しいのです~」

『オレ様はおまえだぞ!!ああん!!』

「はう~」

そんなガイツを見て、トレークは静かに微笑んだ。飽きるほどの、怠けるほどの繰り返しの中で、おそらくトレークは、こういうことを何度もしてきたはずだ。

「楽しいっすね。こういうこと、ずっとしたいっす」

『そ、そりゃ...オレ様もそうだけどよぉ...とにかく。策を教えろや。ああん?』

「自分の魔法で喚び出したキノコを、あたりにばらまいておいたっす。誰か見つけたら、ここに帰ってくるはずっす」

『そ、そうか...全部駆除されてなければいいがなぁ...』

「............はっ!!」

ぴくっと耳をたて、トレークが「しまったそれは考えてなかった」という顔をした
…………その可能性は考えてなかったっす


トレークのもとに帰ってきたキノコたちが、何かを説明していた。

「ギチョー!!ギチョー!!」

「...」

「フンゴー!!」

「......」

「ギチョギチョチョ...」

「.........」

「フンゴーーーー!!」

「............」

ときに激しく、ときに軽やかに、情熱的かとおもえば、生娘のようでもある。穏やかな夜の海のようでもあり、時には燃え盛る火山のようでもある。そんな風にキノコたちは全身を使って、リズミカルにぷるぷる震えながらトレークに何かを伝えた。

ひと言で言えば、必死に伝えた。

『で、キノコたちは何ていってんだ?ああん?』

「いや、さっぱりわかんないっす」

「ギチョー!!」

キノコたちは真っ青な顔をさらに真っ青にして、驚愕に震えた。

『わかんねぇのか!!さっきの奇妙な踊りはなンだったんだコラ。ああん!!』

「あいかわらず、気持ち悪いなぁって見てたっす」

『意味ねぇだろうが!!何か情報を持ってきたはずだろぉが』

「そっすね」

『そっすねじゃねぇ!!てめぇ、キノコの言葉わかんねぇのか。ああん?』

「あまり、わかりあいたくないっす」

『じゃ、どうすんだコレ!!ああん?コラああん?』

「...ってな具合っす」

『それ言や何でも許されると思ってんのかコラ?ああん?』

「...ままならないっす」

『それもだ!!ああん?お耳ふさふささせて、ままならないっす言ってりゃ許されるとでもおもってんのか。ああん?』

「...ぱぱならいいっす」

『そりゃおめぇアレだ!!パパだよぉって、いけないオッサン来ちゃうだろぉが!!お耳じゃなくて別のとこふさふさだコラ!!まずいだろぉ!!半ケツ属性とかいって、ガチャコからでてきたらどぉすんだ!!ああん?こら大丈夫なのかてめぇ。責任取れんのか?ああん?』

「そこまで言ってないっす」

『まあそりゃそうだ。ああん?オレ様もやり過ぎたと思ったわ。ちょっと想像してみたら、ついつい行くとこまでいっちまったわ。ああん?』

「...はぁ。ガイツさんは、やっぱりままならないっす」

その会話をキノコたちは静かに聞いていた。

キノコたちは命からがら逃げてきた。二匹の蛇に楽園から追放され、それでも親元に帰ろうと努力した。帰る途中に魔物に食われたキノコもいた。それでも...キノコは走った。生産者のもとに、帰るために。伝えたいことが——あったから。

けれど、キノコを待っていたのは、超絶ハッピーエンドではなかった。ようやく会えた生産者は言った「こんなのと分かりあえない」と。それはただしく悲劇だった。

生まれが生まれならば「産直ふとん育ちのキノコ 冷凍で1年半保存できるので、非常時に釘を打つのに便利です。ただし食べないでください」と愛情たっぷりのコメントとともに、お店にならんでいたかもしれないのに...

キノコたちは激怒した。かの惰気満々の生産者を除かねばならぬと決意した。惰気満々とは「だきまんまん」と読み、まったくやる気のないさまを表す。そのくらい、わかりあう気持ちが生産者にはなかった。

楽園から逃げ出し、魔物に追われ、親元に帰ったキノコを待つ悲劇。劇場公開されかねないほどの大冒険のクライマックスにあっても、キノコに言えることは、やっぱりひとつだった。

「フンゴーーーー!!」
またこのパターンっすか


どういうわけか襲いかかってきたキノコを残り一匹になるまで倒し、紐をくくりつける。胴体からは紐がすり抜けそうだったので、腕の部分でくくった。

「ネイトさんみたいっす」

『こんなキノコと一緒にしたら、ネイトが可哀想だろぉが!!ああん!?』

紐をくくりつけられたキノコは四つ足をつき「フンゴフンゴ」と犬のように鳴いた。

それはキノコなりの覚悟。キノコとしてではなく、一生ふたりの犬として生きるという絶対服従の証。

『ああん?こら気持ち悪いぞああん?』

「待つっす。最後の一匹を殺したらまずいっす」

キノコは一命をとりとめた。

犬のようなキノコ、キノコのような犬は「フンゴフンゴ」と四つ足をついて犬のよう歩きはじめた。キノコが向かう先はマスター達のいる教会。トレークとガイツは、それに続き歩き出した。
四つん這いのギッチョフン犬は、もっときもいっす



「フンゴフンゴ」

犬のようなキノコ、キノコのような犬に連れられ、ガイツとトレークは、教会を見つけた。

ただ、教会は魔物に囲まれており、誰かが戦っているようだった。

ふたりは急ごうとしたが、キノコが邪魔だ。手足が短かすぎて走っても遅そうだ。トレークは犬のようなキノコの紐を手放して「待つっす」と言った。キノコはちょこんとおすわりをした。

が、すぐにブルブルっと震えると、四つ足になり、後ろ足をあげ、近くの棒に向かい、どこかの穴から「ギチョー」と透明な液体を噴出して、ガイツにまっぷたつにされた。

キノコ全滅の瞬間だった。けれどキノコの死に顔は、何かを解放したことによる幸せに満ちているようにも見えた。

「ガイツさんそんなのにかまってる暇ないっす!!」

ふたりは魔物に取り囲まれた教会へと向かう!!
ますたーさんと合流できたっす


ガロオオオ
魔物は光の粒子になって消えた。

†††

「は、はう~合流できてよかったのですよ~」

トレークとガイツは、マスター達と合流すると『奴ら』から事情の説明をうけた。『奴ら』は魔女協会の意図を知るようで、アーキタイプのことは巧妙に伏せて、ガイツたちに説明した。

『とりあえずよぉ...こうして合流できたんだから、そのコアってやつに向かえばいいんだろぉ...』

「そうですっ!!コアをやっつければ、ここから脱出することができますっ!!」

「ふーははは!!邪眼がうずくぞオパールちゃん。我とソウルパートナーなら楽勝なのだ」

「...ってな具合っす」

マスター、エメラルド、オパール、ガイツ、トレーク、それに『奴ら』をくわえた6人が、『奴ら』の案内でアーキタイプのコアへ向かった。


†††

6人が歩くことしばし...

コアへ向かう一行に声がかかった。

「待て。そいつは...『奴ら』は危険だ」

声をあげたのは...帝国の皇帝アンセム。そして...

「ねえねえアンセム?やっぱりあいつ、びりびりにしたほうがよくない?」

その傍らには同盟の盟主シャーロットがいた。



†††

おまけ


主要な登場人物の紹介

■ ラヴィ

マスターの幼馴染み。ブリューゲルに殺され、マスターがジンと復讐の旅にでるきっかけとなった。アーキタイプにその思い出を利用され、偽りの『幸せな記憶』に登場した。

幼い頃から無意識に魔法を発動しており、故郷の村人たちに迷惑をかけることがしばしばあったため、村八分のようなかたちで孤独に暮らしていた。

年の近いマスターとは仲がよく、子供のころから一緒にいた。小さく閉鎖的な村で、幼馴染みのラヴィは、マスターにとって「すべて」であり、それはラヴィにとっても同様だった。

子供時代のマスターが「ラヴィを守る力をつける」と言ってどこかに出かけた際、ラヴィは未来のマスターと邂逅する。ラヴィは未来のマスターに命を助けられ「今度は私が守るから」と約束をかわした。その約束は、ブリューゲルからマスターを守るというかたちで果たされた。

■ ダイヤ

魔女協会総帥。発掘された1000年前の古文書により、アーキタイプの真実を知る。アーキタイプとなり得るほどの強力な魔女を保護するための『魔女狩り』作戦を開始。

『魔女狩り』の第一次作戦として、マスター達を送り込むが、マスター達は既に覚醒していたアーキタイプに取り込まれてしまう。

そのことに責任を感じたダイヤは、あるふたりの人物に救援を要請した。

■ エメラルド

魔女狩りの第一次作戦に参加した、風の十輝石。

普段は「おかんみたいだ」と慕う水の十輝石アクアマリンと一緒にいるが、今回はダイヤの思いつきにより、オパールと行動をともにしている。

魔女協会が一時陥落したクリスタルの叛乱の折に、マスターと出会う。意図的ではないが、クリスタルの叛意を見抜く活躍を見せた。

普段はどうしようもない魔女だが、十輝石の誰もが「本気になったエメラルドとは戦いたくない」と口を揃えるほどの未知数な実力を秘めている。

■ オパール

魔女狩りの第一次作戦に参加した、星の十輝石。

普段行動をともにしているのは闇の十輝石オニキス。オニキスにはいつもいじめられており、鬼畜のオニキス略して「鬼さん」と呼ぶことはオパールのささやかな抵抗である。

コスモローズ討伐任務の際にマスターと出会い、はじまりの魔女A.iとともにコスモローズを打倒した。

オニキスにいじめられてばかりで、抜けているようにも見えるが、実は十輝石最高の頭脳を持つ。その演算能力と重力操作で非常にクレバーな戦いをする。

■ ガイツ

魔女狩りの第一次作戦に参加した大罪の魔女。

天使と悪魔の二重人格をもつ【強欲】の大罪。マスターとともに冥界を旅し、終焉の魔女ザクと出会い、冥界の魔女バベルを倒した。

かつて『強くなりたい』という強欲のために、大恩ある剣の師を殺害し、ガイツの現在の神器である天悪の双剣ディアウォーゼを得た。

師の殺害がガイツの持つ大罪であるが、それを自覚しなかったことにより、自分の心の中に天使を生み出した。普段は天使として振る舞うが、本質は悪魔にこそある。

ゼロが起こした事件の際に罪を受け入れる。現在は、冥界で自分を救ってくれたザクのような、誰かを守れる強さを身につけたいと思っている。

■ トレーク

魔女狩りの第一次作戦に参加した大罪の魔女。

ふとんからキノコが生えるほどの怠け癖をもつ【怠惰】の大罪。キノコたちはいつしか自我を持ち、ギッチョフンゴと呼ばれている。

万物の法則を記述し、無から有を生み出す魔法【万物理論】を持つ。トレークが、神器である球をガシャンと打ち鳴らし召喚する影のヒトガタは、万物理論がかたちをとったものにすぎない。

ゼロがその本性を現し、大罪の魔女を皆殺しにした事件の折、【万物理論】で世界を再構築し、家族が殺されない世界をつくるため奮闘した。

トレークによれば、世界を再構築し、繰り返した回数は7桁に届くという。マスターの協力によりゼロを打倒し、繰り返す世界を終え、ハッピーエンドをむかえた。

怠け者だが、家族である大罪の魔女を思う気持ちははかりしれない。

■ アンセム

大陸の北方に位置する三大国家のひとつ【帝国】の皇帝。

皇帝の力の証であるレガリアScapegoatを持つ。Scapegoatはアンセムの本当の心を生贄に、秩序を守る絶対者たる力を与える。

3つの形態をもつScapegoatが最終形態Type-Yataとなるとき、分たれた心は白と黒のアンセムとなり姿を現す。

幼少の頃から最も信頼していた帝国宰相オラトリオがクーデターを起こした際にマスターと知り合う。おなじく三大国である【連邦】の大統領イヴ、【同盟】の盟主シャーロットともに、オラトリオを打倒した。

オラトリオの背後には朧のゼロがおり、帝国のクーデターはゼロによるさらなる事件の発端となった。

■ シャーロット

大陸の西方に位置する三大国家のひとつ【同盟】の盟主にして狂姫。

大陸西方は、かつて栄えた王国が魔物の侵攻で滅亡した後、小国が割拠連帯し【同盟】を組んだ歴史を持つ。

王国の唯一の生き残りであるシャーロットは、小国の君主たちにより、幼い頃から同盟の盟主として担がれた。千里を見る目と、万象を聴く耳を持つシャーロットは、陰惨な陰謀渦巻く同盟で、大人たちの暗い心を覗きつづけた。

ある時、シャーロットは蠢く闇を操り、自らを担いだ大人たちを皆殺しにした。以来、くまのぬいぐるみ「おとうさん」とうさぎのぬいぐるみ「おかあさん」とともに、同盟に君臨する恐怖と混沌の象徴となっている。

ただ、アンセムのことだけは愛してやまないようだ。

■ 奴ら

マスターをアーキタイプから救い出すために介入した謎の人物。本当は『ルール』と呼んでほしいそうなのだが通り名の『奴ら』で呼ばれている。

本人によれば、実体をもたないような存在であるらしい。

突如として現れたアンセムたちは危険な存在だと言うが、はたして...


【魔女協会】

■ 魔女協会

100万の魔女を擁する組織。魔物の討伐依頼の管理、魔女の自治などを主な活動としている。

■ 魔女協会総帥

現在の魔女協会総帥はダイヤ。10属性の魔法を使う11歳の天才児。

かつて魔物に両親を殺され闇に堕ちたが、十輝石に救い出された【偽りの絆 永遠の絆】

以来、自分のような子供を生み出さないことを誓い、魔女協会総帥の仕事に邁進している。ただ「息抜き」と称した脱走が目撃されることもしばしば、というかけっこう。

■ 十輝石

魔女協会の中でも、特に実力の高い魔女に与えられる称号『輝石』

その中でもさらに強い力を持つ10人の魔女のことを十輝石と呼ぶ。今回の任務にはエメラルドとオパールが参加している。

メンバーは以下の通り。

火の十輝石 ルビー
氷の十輝石 サファイア
風の十輝石 エメラルド
土の十輝石 ガーネット
雷の十輝石 トパーズ
水の十輝石 アクアマリン
光の十輝石 パール
闇の十輝石 オニキス
星の十輝石 オパール
幻の十輝石 アメジスト

■ はじまりの魔女

1000年前、魔女協会をつくった魔女のこと。ジン、A.i、ムゥの3人。魔物に押されがちだった人類が、魔物と拮抗するまで勢力を回復したのは、はじまりの魔女たちの活躍によるもの【第一部 復讐の章】


†††




【大罪の魔女】

■ 大罪の魔女

血縁関係こそないものの、罪で繋がる家族として暮らす魔女たち。かつて朧に所属し、現在は魔女協会からの依頼を受けることもある。

メンバーは以下のとおり。

憤怒の大罪 ツォーン(長姉)
色欲の大罪 ヴォルスト(2姉)
傲慢の大罪 アイテル(3姉)
暴食の大罪 フェレライ(4妹)
嫉妬の大罪 ネイト(5妹)
強欲の大罪 ガイツ(6妹)
怠惰の大罪 トレーク(末妹)

7人の他にも「憂鬱の大罪メランコリア」や「虚飾の大罪ヴァールハイト」がいた。

■ 朧

大罪の魔女たちが所属していた組織。その歴史は魔女協会と同じくらい古いと言われている。「悪滅」を旗頭とし、「悪」と断じたものを滅する活動に従事していた。

■ ゼロ

大罪の魔女7人が集ったとき、朧の総帥ゼロはその本性を現し「世界をゼロにする」という朧の真の目的を明かした。この事件以降、朧は活動休止状態にある【そしてゼロになる世界】

■ 終焉の魔女

朧を創設した3人の魔女。ゼロ、ザク、ブラックパールの3人。ブラックパールは「パール」として、魔女協会の光の輝石としても活動していた



†††


【魔物】

■ 魔物

およそ1000年前。紅い月とともに突如として現れた。以来、人類と長い戦いをつづけている。

大陸の南部はほぼ魔物の勢力圏となっており、なかでも、最南端の「龍の尾」と呼ばれる弧状列島は、魔物の猖獗地帯となっている。

■ アーキタイプ

強力な魔物と一般には認識されているが、その実体は魔物を生み出す母胎にして元型。

強い魔力を持つ魔女が、強い思いとともに死んだ時、転生体としてアーキタイプが生まれる。その事実はアーキタイプの正体ともども、ごく限られた人しか知らない。

現在の魔女協会はアーキタイプの真実を発掘された古文書によって知ることとなり、それは今回の事件の引き金ともなった。

ダイヤによれば、3柱のアーキタイプを知っているとのこと。ただしそれが現在のことなのか、過去の記録なのかは不明。これまでのお話で登場したアーキタイプは、ブリューゲルと、はじまりの魔女の戦いに現れたアーキタイプの2柱。

■ ブリューゲル

マスターの幼馴染みラヴィを殺したアーキタイプ。

その正体は、強い思いを残して死んだジンが魔物として転生したもの。【不死蝶】の魔法で魔女として転生したジンによって、自身もろとも滅ぼされた【第一部 復讐の章】