昭和18年10月 敵米英の集団爆撃の検討と我が備え

ハンブルグの盲爆に学べ

出席者

大阪帝大教授理学博士       浅田常三郎

川西航空機技師                  足立英三郎

川西航空機航空機部長       橋口義男

大阪帝大教授                     三木鐵夫

東京帝大助教授航研所員    山本峰雄

本誌記者

 

記者 最近米英の手によって行われましたイタリアのローマ、ドイツのハンブルグ及びベルリンに加えられました爆撃は洵に凄絶というか、非人道極まりない、航空機と新兵器の機能を極限に発揮した集団爆撃、殊にベルリン等は数哩に亘って廃墟と化し、ハンブルグでは無辜の住民が十数万人が殺傷されたと聞いております。或は傷ついた児を抱いたまま黄燐焼夷弾のため、生不動となっている母親もあったと、凄惨な情景が書かれてありました。この物を恃んだ、英米の残虐ぶりは断じて許せないものではありますが、ただこれを非人道とのみ表現するだけで等閑視することは出来ません。かかる集団爆撃が如何なる方法を以て行われたか、米英の航空機及び兵器の性能はどうであるか、またその防御には如何なる方法を採ったが最善かということは、均しく読者の知りたがっている所でございます。まあ、そういう点について今席は縦横にご検討をお願いしたいと思います。先ず橋口先生に一つ進行係をお願い致しまして。

 

使用された機種

橋口 ハンブルグの爆撃はウエリントンという奴が入り込んで、ショートか何かの4発のですね。

山本 ショート、ランカスター、あんなものですね。

三木 ああいうものですか、ウエリントンは使っているのですか。

山本 主としてランカスター、ハリファックス、スターリング、空の要塞、コンソリ等の4発の爆撃機だそうですね。

橋口 要するにイギリス自身の生産力というものが相当に出て来たということが云えますね。どうでしょうか。

記者 そうですね、アメリカが主体でしょうが、イギリスの奴も相当入っている事は事実でしょうね。それにしてもドイツのハンブルグがやられるような時に、もっとこの防御が出来なかったかという心配があるのですが、相当に新型機を沢山持っているドイツがああやられたという事は…

新型機を出しているという事を聞きますが、それにしても世界一という奴を沢山持っているのですから、あんなに酷くやられない様に何とか方法があっただろうと思います。それ以上に大型の爆撃機の性能が良くなって、あんな惨禍を蒙ったのじゃないかと思いますが。

山本 性能はそう変わらんでしょうが、やはり高空飛行をやって来たという事が原因でしょうね。照空燈もきかぬ上空からやったために、先に防空陣地がやられてしまったというのが、主な原因じゃないでしょうか。夜間爆撃に高空でやって来られたら始末に困る。

 

ラジオ・ロケーターの無能化

 

浅田 ハンブルグでの被害が特に大であったのはラジオ・ロケーターが利かドイツとしても敵機の来襲が分からなかった為だろうと思います。

記者 ロケーターを妨害したと聞きますが、どんな方法でやったのでしょうか。

浅田 ハンブルグの防御としては市の内外に高射砲があり、高射砲のところにロケーターを置いている。一番先にスピードの速い哨戒機で一万m以上の高空からハンブルグの空一面に極めて多数の錫箔を撒いたのです。ヒラヒラと落ちないといけないから、薄い紙の上に錫箔を貼って、ビラを撒くように何万とか何十万というものを撒いたのです。一万mの上から撒いたのでそれが空の上をヒラヒラしている、紙の大きさがドイツが使っているロケーターの波長の4分の1位の大きさに切って電波を非常に反射する。空一面に撒いたからロケーターがどっちに向けても反射が入り、敵の爆撃機の来襲をロケーターで調べたところが反射がいっぱいですから、爆撃機がどれか迚も判らない、それから第二にやった事は、これも想像ですがドイツのロケーターと同じ波長の電波を出す小型の送信機を持った飛行機が数台あって、放送をやりながら勝手に飛び回るため、それからの電波がロケーターの邪魔をするからロケーターは全然働かなくなります。

記者 浅田先生は非常にお詳しいので、先生から一先ず爆撃の様相をお願い致します。

浅田 もう一つは空中魚雷と書いておりましたが、大型の爆撃機の上に空で爆発する爆弾を積んでいる。大型の爆撃機は下からロケーターで電波を出します。爆撃機では備え付けた方向探知器によってロケーターの位置を測定します。ロケーターのある近くに高射砲がある。そこを目がけて高い所から爆撃をやったのです。2トン以上の大型爆弾を使って地べたに衝突しない50m、100mの上空でひどい爆風を出すと、高射砲やロケーターを扱っている人が、先ず一番にやられる、威力半径は300mからで、全部その中の人が退避壕の中にいる者まで殺傷されますので、防空陣地全部駄目です。その上に次々来た爆撃機の100機編隊、4発の爆撃機1台に火力を相当持っているのです。機関銃、機関砲を持っているのですから、ガッチリ編隊を組んでいると戦闘機が近寄れない。戦闘機を連れない爆撃機だけの編隊だったらしく、先ず高射砲陣地を壊しております。それにロケーターが働かないから、戦闘機がどこへ向かって飛上るという事が不可能だったんです。それで先ずやられたのじゃないかと思います。

新性能爆弾・空中魚雷

 

橋口 そういう種類の話をもう少し浅田先生に。

浅田 私も色々の新聞のニュース、情報、それに自分の想像を加えての話ですが、今まで飛行機から爆弾を落すと、普通の爆弾は地べたに当ってから爆発する。普通の防空必携に書いてある爆弾は擂鉢型の穴が開くということが主な威力で、地べたに穴をあけるが、人は余り死傷しない。欧州戦争の例で見ますと、スペインの内乱の時にスペインにドイツ、ロシアから爆弾を持って行って投げていますが、250㎏を4発、即ち1トンならば1発に対して平均死んだ人は27人、負傷者が72人です。それが、それから約1年間の後、防空壕なり地下室に逃げるようになってから、爆弾1トン当り死んだ者が1人、負傷が2人という平均に下っている。即ち防空壕か待避壕に入っていると、直撃を受けぬ限り普通の爆弾に対しては大丈夫である。戦争の様相が爆弾1トンに対して死者1人、負傷者2人と少なくなっている。爆弾を1トンも使うなら、もう少し敵の人間をやらなければならない。また一つの理由として空襲の目的が工場を壊すというより、人を殺すというのが主になって来た、工場を壊しても、どんな立派な工場を壊されても、3,4ヵ月経つと元のように働くようになる。それで技術者、職工等全部やると、機械はあっても仕事が出来ない。二月や三月では技術者は出来ない。人を殺すために防空壕、地下室にいる人を殺す目的の爆撃をやる。

前の爆弾は、地べたに落ちて爆発するのは防空壕に隠れていると死なない、一つの実例を申しますとソロモン付近の某所で、或る海軍の士官が着いたその晩に爆撃を食った。約10mの待避壕に入ったのですが、約10m離れた所で1トンの爆弾が爆発した。待避壕の中が地震のように揺れて、耳は爆発による強い音圧によって押さえつけられたために、爆発のひどい音は聴こえなかったが、頭から土砂を被っただけで、何の怪我もしなかった。1トンの爆弾が10mのところに落ちても深さ5尺位の待避壕の中に躊っていれば安全です。

足立 待避壕には蓋はあったのですか。

浅田 無かった由です。

橋口 そうすると日本のは浅いですね。

浅田 人が立った高さくらいの退避壕に躊ったのです。爆発孔は直径10mの穴ですが、待避壕は距離5mまで打ち抜かれます。爆破孔から待避壕まで尚5mの余裕がありました。その士官は昔関東の震災の折、東京にあられた方ですが、関東の震災の時に揺れた程度に揺れた。そのとき何名か待避壕におったのですが、一人も怪我しなかった。それで今度のハンブルグ爆撃では、待避壕に入っている者を殺す目的のものがあるのです。それがですね、一寸雑談になりますが、僕がこの間の夜寝ていると、ネズミが出よる。部屋は閉めてしまったから室外へは逃げられない、殺してやろうと箒を持ってピシャピシャ叩くが逃げ回る。とうとう考えて絨毯を持ち上げると、その下にスッと入ったから、今度はその上から叩いてしまったのですが、爆撃もそうです。最初に地上で爆発する爆弾を撒くと、地上の爆発で人が待避壕、防空壕に入る。そうすると待避壕に入った奴を殺す爆弾を落したら仕舞いです。

戦争というものは或る方法を使えば、敵はそれに対する防御を考える。それをまた殺す方法をやるという様に、次第に進歩します。今までの退避壕は地上で爆発する爆弾に対しては大丈夫ですが、それに対してどういうものが現われたか、ハンブルグに使った爆弾は二種類あります。一つは爆弾の上に落下傘を付けた爆弾で、地上に着く速度を遅くし、低空で爆発する様な時限信管を付けたものです。地面に飛込んでは、どんな瞬発信管が使ってある奴でも幾らか地べたに入ってから爆発するので、擂鉢型の爆破孔を作り、主な爆風は斜め上に出るので待避壕の中にいる人には損害が無い。然しながら大型爆弾に落下傘を着けて飛行機から落して、地上数十メートルで爆発するようにする、信管から火を吹き地上数十メートルで爆発させる。その爆風や破片は皆、下に向って行く。日露戦争の時分にも榴散弾が空で爆ぜて破片が地べたに落ちて人を殺した。爆弾の爆風が下にいる人を殺すのです。また低空で爆発した爆弾の強い爆風を下方の地上にのみ猛威を振るわせるには、ノイマン効果を利用しています。ノイマン効果とは爆薬に擂鉢型の凹みを付けておいて、これを爆発さすとこの凹みの方向に爆発の被害が及ぶという現象です。簡単なノイマン効果の実験について、一寸お話いたします。電気雷管は爆薬に点火する起爆装置ですが、直径6ミリ、長さ15ミリ程度の銅管の中に爆薬と雷汞を入れ、これを細い電熱線で点火するようになっています。この雷管の威力が大きい程、爆弾全体の威力が激しくなります。雷管の爆発力を試験するには、一辺10ミリ、厚さ1ミリくらいの鉛の板の上で爆発さすと、鉛に大きな穴が貫通します。この穴の大きさで雷管の威力を測定する様子です。さて爆薬を爆発さすと瞬発的に爆発してしまうように思われますが、実際は着火した所から順々に燃え移って行くので、その爆発速度が毎秒8000mです。即ち8000mの爆薬の棒を作り、その一端に点火すると、一秒間で他端まで爆発してしまいます。従って雷管でも鉛板の上に立てて上端に点火した中には、爆発は上から下へ伝わって行くので、上部で出来た爆風は上方に逃れ、下方が爆発したときのみの爆風で鉛に穴が開きます。然しながら雷管の下方を漏斗状に凹ませて上端から点火すると、爆発が漏斗の上端に達した以後は、爆風が下向きに出るため少量の爆薬で鉛に大きな穴が開きます。爆弾に対しても同様に落下のとき下側になる所に爆薬を漏斗形に凹めて入れ、爆弾の頭部の内に空洞を作っておくと、爆風が大部分下向きに、即ち地上に向って威力を発揮します。従って地上の建物は吹き飛ばされる。また防空壕や待避壕の中にいる人まで爆風によって殺傷されます。結局爆風で人を殺す目的の奴です。これをハンブルグの街の上に来た時に落下傘でぱっとやる。落下傘のついていない奴は地面から数メートル、屋根の上数メートルで火がつくような機構です。

足立 1トンくらいのもので、どのくらいの高さでやるのですか。

浅田 屋根の上5、6メートルですから、ドイツでは住宅の大体の高さが25メートルですから、地上30メートルくらいで爆発しますと、直径300メートルの家が総て飛びます。ドイツの建物は壁や側面は全部煉瓦ですが、床は木張りですし屋根も木です。だから上からパッと来ますと天井も床もヘタヘタです。然し鉄筋コンクリートの場合では窓ガラスは飛びますが、煉瓦建のようにペシャンと潰れることはありません。ドイツにしろ英国にしろ欧州の大きな都市は大抵煉瓦ですから相当被害を受ける。今言ったように直径先ず300メートルの家は皆吹飛びまして、これは英国であった実例ですがハンブルグも同様です。更に外150メートルは屋根が大抵飛んでおります。更に外側500メートルは窓ガラスが破損します。

山本 それは前にドイツがロンドン攻撃に使ったんですね。

編隊方法と爆撃方法

 

浅田 そうです。それを逆に使ったのです。最初防空陣地を潰して高射砲、ラジオ・ロケーターが働かなくなっているから飛行機が相当に降れる。100機が一つの編隊を組んでおりまして、100機で1㎞四方一つの編隊が入っていると思います。その編隊の指揮官の乗っている奴を中心にして、四隅に爆撃の照準の上手な奴を置いて、中のは飛行機の操縦が出来ればよいという奴で、指揮官の命令で積んでいる爆弾を一時に落とす。ロンドンから飛び出したか、またどこから来たか知らんが、英国を飛出してスウェーデンを通りドイツに入ったらしく、全編隊がスウェーデンの上空を通過するのに1時間以上かかる様に、バラバラになって飛んで来ます。ハンブルグの空襲でもベルリンの空襲でも、編隊で通るとロケーターでやられるから、一つ一つ飛んで行って初め錫箔を撒いてロケーターを妨害してから、どこか街の近くで前云った敵地に入って、編隊を作ってから目的の都市を空襲します。その一機一機に2トン3トン、大きいのは4トン、平均3トンの爆弾を積んで来て100機編隊ならば少なくとも100発以上300発以下の大型爆弾を積んで来て、パッと落とす。1㎞四方に300発落ち、一発の被害半径が300m。ですから被害半径が重なります。こう一物残らずやられる訳です。ボンブカーペットといって爆弾で毛氈を敷いたように、爆弾の威力半径で地上を蔽ってしまうのです。地下壕、待避壕に入っているものも殆んど全部やられる。

 

液状黄燐焼夷弾

 

浅田 また、その地域が全部吹き飛ばされるばかりでなく、火事も起るだろうと思います。そうすると消防がやって来る。また中には助かった人もいます。更に念の入った事には、その人を殺すが為に、黄燐焼夷弾を撒いたと想像しますが、新聞等のニュースを見ますと、黄燐と硫黄を混ぜてゴムの袋に入れて撒いたというのですが、これは黄燐の火の雨を降らしたので、先ずゴムを二硫化炭素に溶かすと、トリモチみたいにベタベタになる。そこに黄燐を二硫化炭素に溶かしたものを混ぜると、これもトリモチのようにベタベタになる。二硫化炭素も黄燐も小さな温度で火がつくのです。それをドラム缶に入れて来て、低空で爆発させる。そうすると2cmくらいの塊になって燃えながら落ちるのです。それが下にいる人にトリモチ見たいにベタベタにつく。その上に二硫化炭素が燃焼して亜硫酸ガスを出して、恰度

毒ガスに合ったようなものです。そして二硫化炭素によって神経系統が犯されて、ボオとする。また黄燐の焔で先ず窒息する。消防が活動しようと思っても、上から火の雨を降らされて、どうにも出来ない。

 

毒ガスと病菌散布

 

浅田 相当残虐に皆殺しにしたのですが、もう一つ注意しなければならぬ事は、水道の水源地に全部チフス菌を撒いて、生残った人をチフスでやっつけてやろうと云うのです。ヨーロッパは水道をやられると、水を沸かして消毒して飲むという事がなかなか出来ない。幸い日本では各家庭に關的即ち七輪があって木屑でも使って土瓶で沸かせば直ぐ消毒出来るのですが、ヨーロッパではそれが出来ません。ガス、水道をやられると簡単に火を起して湯を沸かすという事がやり難く、そのために相当飲料水に困っている訳です。英米方は口では人道とか何とか言っても、相手の国の奴を出来るだけ相当沢山殺せば良いという方針に、今は変わっているのです。初めは工業地帯を壊そうとしたのですが、工場を壊しても復興力が早いですから、人を沢山殺す。どんな工場でも重要なエンジニアを殺されると駄目ですからね。飛行機の設計をやる人、能率の良い工員等、全部殺せば、なかなか復旧出来ない。そういう事に今度の爆撃は重きを置いているのです。日本でもあのハンブルグが東京爆撃の予備行為だと言っているところから見ますと、同じように人を殺すのを第一の目的でやって来るだろうと思いますから、それに対してもう少し防空の事は本気になって考える必要があるだろうと思います。

足立 爆弾を落す命令は無線ですか。

浅田 英米の無電機はよく出来ているのです。飛行機同士の通信が、無電機で通信出来るようになっています。

 

集団爆撃に対する防御

 

記者 戦闘機は殆んど連れて来ないと聞きましたが。

浅田 100機編隊のガッチリした爆撃機の編隊が出来て、そういうのが幾つか他の編隊をお互いに守りながら来ている。100機編隊だと相当火力を持っておりますから、戦闘機は近寄れないと思います。

記者 しかし戦闘機には爆撃機に無いような大きい機関砲を持っているので、相当敵対出来ると思います。

足立 その編隊の上から新性能爆弾を落したらいいでしょうね。

浅田 来襲した敵の爆撃機をやっつけるのに戦闘機で編隊の上から大型のものをドカンとやる。何機という飛行機が飛ぶ訳です。大型爆弾の破裂が敵機の編隊に一番良い防御になる事は既によく知られた事で、例の爆風が一番いい。例のプリンスオブウェールズがやられた時、主砲まで撃ったというのですが、飛行機の編隊の爆撃には一番効くんです。飛行機の編隊の中で16インチ一発破裂したら飛行機が何台か一度にやられる。そういう時には大砲の弾一発や二発にはかえられないから、主砲をどんどん撃ったほうが宜しゅうございますが、最近上空が撃てるように軍艦の主砲の角度の上げられる事は一番早く実施せられました。外国でもそれに倣って主砲が上げられるようになっております。

足立 榴散弾のようにしたのですね。

浅田 敵機の近くまで行って主砲弾が爆ぜるのです。

橋口 集団爆撃は数が多いというところに強みがあるのですね。それに対抗するにはまた戦闘機の数を持っておればいい。そして編隊の上空に来てやったら良い…

山本 13ミリくらいしか持っていないでしょう。ランカスターというのは。然し戦闘機では既に40ミリ機関砲を二門持ったものが現われている。

足立 今のように爆弾の上からカヴァーしたら良いですね。

山本 さっきの自燃爆弾を使うんですよ。

浅田 そうです。編隊で来られても上に這い上がられたらやられるのですから。その方法がよい。

記者 一番いい哨戒法はどうでしょう。

橋口 これも浅田先生の受持ちの方ですね。私共は来た奴と喧嘩する方、来ない奴をやるのは浅田先生の方で…(笑声)

浅田 ラジオ・ロケーターも然し、或る意味では役に立つのです。ロケーターを壊すための妨害をするのが非常に良く出来ている。橋口先生のお書きになったモスキートという飛行機がありますね。双発の飛行機で爆撃機、その翼がベニヤ板なためアルミニウムの場合と較べて電波を反射するのが一割以下、ロケーターで調べても今までのアルミニウムで装甲したよりは反射率が一割以下です。この一割以下という事は、距離は三分の一以内まで飛び込んで来てやっと判るので、敵を攻めるには木製機がよい。

橋口 木材の表面を磨き過ぎると反射すると言いますね。

浅田 それは余り敏感でない。やはり一割以下でございますね。5%乃至10%です。

記者 一番反射するのは発動機ですか。プロペラですか。

浅田 翼です。発動機はどうしても金で拵えなければならんから困る。

橋口 木製発動機は無いからね。

足立 発動機に何か良い塗料を塗ってはどうですか。

浅田 うまく行きません。発動機は是非金属で作る必要があり、航空機にはいろいろの金属の針金があります。それからも電波を反射しますので反射を全然無くする事は不可能です。表面を木で包んでも内部の金属から反射します。

橋口 中の金属から反射する。

浅田 電波をよく吸収する奴はよく反射するのです。光をよく吸収する奴はよく反射する訳ですからね。

橋口 全然鈍感な奴でなくちゃいかぬ。

浅田 何か他の考え方から入らないようにしなければ。

 

哨戒機の活躍

 

記者 ロケーター以外の物での哨戒法は。

橋口 飛行機で哨戒するのは飛行機にロケーターが付いている。それを沢山飛ばして哨戒すればよいが、船はスピードが遅いですから、日本の本土を守るには、扇の要のように物凄い沢山の哨戒機を飛ばすということより他ないでしょうね。結局鉄砲なんか持たんでも、決死の哨戒機というものを沢山作ってやることですね。浅田先生もなるべく鈍感な材料を使ってやると言う事ですが、一つ早くやらなければならぬことでしょう。木製機というと難しいようですが、特別の性能のものは難しいが、エンジンのお蔭で、それを考えれば出来ない事もない。これも数の問題です。太平洋にポツポツあったんではいけない。沢山やる。哨戒機ならばゆっくり飛んでいれば良い。潜水艦の回りをブラブラしているように。

浅田 相当の速さがないと敵が来た時に断然やられるから、遠くに行かなければ駄目ですね。夜間哨戒という事が困りますね。

三木 飛行機に付けるラジオ・ロケーターはどれくらいの距離利くものですか。

浅田 アメリカのロッキードに付いているラジオ・ロケーターの哨戒距離は100㎞以下です。そうしてそれは前方に対して100㎞で側方に対しては幾らか弱いが、広範囲を哨戒します。前だけはパッと鋭い電波を出しているのです。そして飛行中1分間前方を哨戒し、10分間側方を哨戒する。そういう事を繰返して行く。10分飛ぶ先まで飛びながら側面を哨戒する。10分経つと前方を1分やる。1分やると自分で10分飛んで行く間が哨戒出来る。これは相当速度の速い飛行機で10分飛べる距離ですから、先ず100㎞くらいですね。

山本 上下は相当範囲いくんですか。

浅田 ずっと広うございます。

それで以て行けば相当紹介して有効ですね。相手の飛行機をやります場合も、水上に於ける艦船、潜水艇も出来る。100㎞というと相当高い距離ですから海上全部極めるですね。

記者 100㎞のところに敵機のいるのが分かってから地上の味方の戦闘機に通信しまして、もし敵が高々度をやって来た場合でも間に合いましょうか。

浅田 味方の戦闘機の能力如何ですね。

山本 100㎞もあれば間に合うでしょう。

橋口 100㎞というと大きいですね。10分の差は大きいですね。

記者 それでは充分役目は果せる訳ですね。

 

高々度防空戦闘機の役割

 

橋口 爆撃の話が出ましたから高々度防空戦闘機の働き、というような事について何か、お話願いたい。

山本 集団爆撃という場合、戦闘機が編隊の上に行こうとしたら、非常に高々度戦闘機がラジオ・ロケーターで通知されて、相当前に上がっていないと間に合いませんね。探信儀で、さあ来たからと云って上っても、12000mで来られたら数十分かかるのじゃないですか。

橋口 非常に理想的の場合で12分より速いのは無いでしょうね。30分掛かると思わなくちゃならぬ。30分というと、随分遠いところに行くのです。直角には上れないから、結局やはりそれは何ですね、高々度の奴をやるという事は、やはり早く発見してやるより仕方が無い。と云って高々度で年中飛んでやっている訳にいかんが。

浅田 ところがハンブルグ爆撃では一番先に錫箔を撒かれたので、ロケーターが働かないようになったのです。戦闘機の準備が出来なかったのです。

橋口 癪に障るような事態になっても日本がアメリカからそんな無茶苦茶な目に合うとは思わぬが、ふんだんに戦闘機を作るより仕方がない。うんとパイロットを置いて、ある程度の数を上げて行く。そして怪しいと思ったら海の正面の、どうせ航空母艦から来るに決まっているから、そういう奴を捉えるようにする。それには沢山数を持って行って、降りて来たら、さあ次、さあ次と一列行進だ。そういう空の一列行進をやるんだね。

足立 大型の飛行機を上げて長い事飛ばして爆弾を落す、長い間哨戒させて待って居って、落すことは考えられませんか。

浅田 敵の潜水艦はこちらに潜水船探知用のロケーターがあると近寄って来ません。従って沿岸全部にロケーターを置くことがいいでしょう。

橋口 戦闘機はよほど余計要りますね。哨戒機を日本全土に終始上げとくには。

橋口 高圧式になっているんです。

山本 ほんとうの気密室、或は気密服が無いと高空戦闘機というものが思い切って出来ない。一方的の戦闘でないと安心して使えないのです。敵弾に当って気密室の壁に孔が開いた場合は内圧が急激に下がるから、これに対して適当な方法を考えなければならない。急降下で突込んで早く圧力の高い低空に達するというのも一つの方法であるが、また孔を塞ぐ方法を考えておく必要がある。

橋口 一人乗りだから動いて行けない後ろに穴が開くと、操縦席の周囲は操縦しつつ後ろを向いて穴を詰める。案外智慧は出すと出るものですね。船の穴が開いた時はマットを外に当てて止める。中から絆創膏を貼り付けると、ふっと膨れる。大して圧力は無いので、それにお鍋の蓋みたいなのをゴムで拵えたのを用いる。相当用途がある。これは智慧があると思う。現に水に対して相当のものが出来ている。水上飛行機の穴のあいた時の対策は相当のものが出来ている。智慧は案外出て来るものです。

記者 防空戦闘機に必要な条件とは、どんなものですか。高空に上る必要がありましょうし、急速に上って行くために色んな設備をする、そんな点を三木先生。またどこの国が一番防空戦闘機が発達しているんですか。

三木 どうですかね、山本さん知りませんか。

山本 今秘密にしておりましょうから、我々のところにそういう情報が入って来ないのです。高々度というものは艤装の問題になって、内圧は大体3気圧くらいしか無い、これは大した問題じゃないと思います。結局何と申しますか、安全弁とか炭酸ガス吸収装置、それから油圧式とか云ったような、そういった艤装の問題になりますが、それを思い切って何処でやるかという事になっているのじゃないでしょうか。それからラジオ・ロケーターなんか探知するという事は出来ないですか、阻害気球ではいけないか知らんが、何か浮遊させて置く。

浅田 ラジオ・ゾンデ式のものですね。風船に短波の発信機をつけてロケーターのような電波を出しながら飛ばすのも面白いでしょう。こちらが電波を出していると敵の潜水艦はやって来ない。どっと飛ばして結局落すのですね。掃蕩する奴です、潜航艇を見つけるにも飛行機にラジオ・ロケーターを積んでいて、潜航艇がおったら電波の送信機を付けたブイを落す、そのブイから電波を出しているから、そのブイ目がけて爆撃機戦闘機がやって来てやる、昔は飛行機が見付けたところに、上から火のついたブイを落したのですが、火が見える距離は知れたもので、電波を出すのを落しますから、遠くからでも集って来るのです。

橋口 そういう事をやるものですから、どうしても大体浅田先生、今後防空の9割の責任は先生方にありますね。(笑声)ラジオ・ロケーター的に飛行機より速いもので探すということを、その道の人達の科学集団的の勉強で解決して欲しいですね。それが国を救う唯一の道ですね。

 

量的決戦へ学生の緊急動員

 

浅田 私は今、学生の人達がこれから勉強して二年なり三年かかる。それまでに頭の上で集団爆撃をやられたら、殺されてしまう。学生を教育するという事は国家として大事な事業ですが、それより先に敵にやられない態勢を整えてやる事が大切です。戦争と云うものより離れて他に何ものもないのです。

山本 結局そうですね。敵をやっつけるには何よりも積極的にやらねばならない。

橋口 ちょうど学生の問題が出ましたから、最近考え始めた問題は、この夏にある高等工業の学生、それから工業学校の生徒の人達が勤労報国隊で来てくれたのですが、非常に結果が良い。物凄く能率が上がる。工場のコントロール等、到底国民学校を出ただけの人では、どうしても出来ないだけのことをやれる良い能力があるのですね。もしこの戦争が昭和19年度が決戦だとするならば、今後一年間学校を一応止めても…

浅田 それは私も考えています。

橋口 そうして全部、今勝つ唯一の方法は航空機を作るにある、量をどちらかが沢山出すだけになっている。また一方新しい飛行機の設計にも参加してもらう。一年間兎に角やる。先生も皆参加して。

浅田 中学四年以上の学生に全部やってもらうんですね。

橋口 工業学校クラスの者はちゃんとした使い方があります。工業教育を受けた者、大学に至るまで丁度ぴしゃっと学校を止めてその人材を供給する。そうすると今の実力で、今持っている設備と工員の数で少なくとも二倍くらいの能力を出し得る、能率増進という事が出来るように思うのです。こうしてとことんまでやるという事は、その年の方だけ修業が棒抜きになりますから、国家がこれだけと見通しを付けないと、簡単には行きませんが、やったら必ず有効ですね。その人達は二カ月も勉強すると出来る、専門の知識があれば、二カ月で航空機のマスプロダクションで専門家になれる。

浅田 荒鷲を養成するのに学校を出た人に来てくれと求めている。教育のある人は割合に訓練が早い、私の学校でもポスターが出ていた。航空機には100以上の計器が付いている。計器を見ながら何処にも注意を払って、即座に判読する素養が必要である。大学を出た人はそう訓練を受けているから、非常に上手に操縦できる。戦闘機、爆撃機を操縦する訓練が速く出来る。だから大学を出た人に操縦方面に回って欲しいと云うのです。尤もと思いましたね。アメリカでは学生が二カ月訓練して出て来る。そういう素養がある。平素から自動車の操縦をやっているから、飛行機操縦の訓練が早い。また飛行機の方が却って楽だ、自動車は道路を通らなければならぬ、そこにはいろいろの障害物があるから避けて通らねばならぬが、飛行機は何処へでも行けると言っているんです。

橋口 真っ直ぐに飛ぶだけならばそうでしょうが、空中の戦闘は却々。

浅田 しかし今のハンブルグの空襲なんか、くっついて行って司令官が落せと言う時に落とすだけですから、速製で間に合います。

 

攻撃的防御へ切替へ

 

記者 防空というとどうしても受け身ですが、防御も攻撃的に出た方が得でしょうね。

橋口 そう。攻撃的の方が楽ですね。フィリピン、ジャワ、マライを取ってから、今度は日本が守っている奴を取りに来る。そこを固めているところを取りに来るから苦戦している。この守勢が長く続きさえするならば日本は勝つんですからね。守勢、あの状態を何時までも維持し得るならば勝つ。それをやる方法としては飛行機を沢山出す、新しい飛行機で出来るだけの性能を出す。この準備は大学、研究所方面でやって貰わねばならぬが、数を出すという事は、我々工場をやっている者の責任になるのです。それを補佐してくれるいろいろの機関をここ一年間これに集中したならば、この態勢はもっと良くなると思います。しかし時期を逸したならば逆転です。

浅田 もう一つ学校関係の人に特に呼びかくべき事ですが、飛行機を倍拵える為にアルミニウムを倍拵えるという増産の行き方を行っておりますが、アルミニウムを倍拵えるには、ボーキサイトを倍持って来るために船も必要になる。またアルミニウム精錬の設備、電力、人も発電所も倍にしなければならぬ、そういう事を全部御破算にして、研究者のか知らぬが、倍近いものが出て来る。努力で軽金属の強さを二倍にすることが出来たら、現在拵えているだけのアルミニウムの量で飛行機が倍出来る。しかしそれに対する研究者は優秀なる学者の努力で出来る。アルミニウムを倍増産するのに比して、比較にならんくらい小さい人と僅かの設備や費用で、この研究が出来るかも知れない。

橋口 そうですね。そうなるともう学校と考えないで、軍部のコントロール、戦争のコントロールに入ったと思えば出来る。誰か知らん、戦争という主人公が、私共でなくその道の人が云わんといかん。

浅田 その道の人に大いに主張しているのですがね。

 

節約は増産への先決条件

 

橋口 材料の話が出ましたが研究するのは三カ月や四カ月では出来ない。最近大いに認識を改めてやらなければならない最も有効な方法は材料の節約です。これ程航空機の喧しい時に、材料はふんだんに良い奴を使っております。これは戦時規格を作って材料の切出し方、使い方に注意したならば、これは倍までは困難として屑の回収を早くする、一方では研究、一方では消極的積極的材料の節約、少なくとも鉛筆でも45度の角度で削る、45度の角度だと一寸落しても1ミリくらいしか折れない。長いのは一インチ、2センチ半くらい削って先を1ミリくらい出している。コロコロと落すともういかぬ。こう云ったような事が長い間の癖ですね。私はそういう事を余り云うとお爺さん見たようですが、家の娘や会社の子供にそういう事を言っているのです。少ないことのようですが、そういう観念で行けば、私は資材はもう少し研究できると思います。「親方日の丸」お役所のものはどうでもよい、自分の家は爪に火を点すという様にやるが、お役所ばかりでなく会社もそうですよ。会社の物となると呑気に使っている。それは大いに注意して節約して、この窮乏を救うという事は、大きな戦闘力であると思います。話が大分逸れ…

記者 大量生産の問題もそういう所に非常に重要な問題がありますね。材料の節約とか、新しい研究とかで他方からも解決がつくのです。

橋口 その両者を行くべきでしょうね。

記者 いや、非常に結構なお話です。

橋口 最近紡績工場が多量生産企業整備の問題でこちらの御厄介になって見ましたが、世界を風靡した筈です。考え方、解き方が藤森良蔵さん以上です。一つも無駄が無い良い物が沢山出来、安く出来る。ランカシャが鼻ペチャになる筈です。あんな重工業、…飛行機は軽工業ですから、部分品の数が多い位で現在部分品の数を減らす方向になっておりますが、よく似ておりますよ。こういうものがあるとなったら例えばラジオ・ロケーターでも彼ら以上の物が出来上りますね。材料でもエキスパートがいて、超々ジュラルミン、アメリカをして顔色無からしめたこの超々は薄く、こんな薄いものでどうして保つだろうかという風に、一歩進んでおりますね。空中戦闘機だってそうです。足らんのは数だけです。航空機に対してはそこだけです。数だけです。他は大日本飛行協会で心配せんでも良い、山本さんの話で私は想像できると思いますね。

三木 あのコンソリデーテッドB-32というのは相当凄いらしいがね。

山本 それからボーイングB-29ですね。あれははっきり分らんですが、コンステレーション成層圏輸送機を改造して、爆撃機を作ると云っている。それがB-29と言うんだそうですが、大型機で航続距離が長く、また武装の点でも、今度は機関砲なんか持出すと厄介な事になる。

橋口 材料がふんだんにあって、エンジンがふんだんに大きいのが出来るならば、戦艦見たような物を作り得た方は非常に強い。戦闘機が近寄れない、防御がしっかりして、駆逐艦に対する戦艦のような大きな爆撃機を用いたならば、強いでしょうね。それにはやはり生産力という様な問題があって、余程長期戦のもう一寸先ですね。今度の場合はそこまでは考えないようです。長くなるとそういう事にならぬとも分らぬ。大型機の研究は忽せにはならぬと思います。一寸やちょっこらとは行けません。大きなものを作るには時間がかかる。大きな家でも理屈は一緒です。スケールを少しやって見て、実際作って見ると物凄い。そういう事は軍部あたりでも考えられていましょう。…先ず、アメリカがやっている以上、我々もそれは常々やって置かねばならんでしょうね。

 

敵米軍の進攻基地と行動圏

 

記者 米軍の進攻基地と行動圏内について三木先生如何でしょう。性能が高くなって来れば、現在志那の敵の基地、例えば桂林建甌、ああいう所から北九州は爆撃できると思いますが、それをしかも集団爆撃の形式でやられたら、相当生産方面に、大きな打撃を与えられるのじゃないかと思います。今のところ向うの性能が大した事が無ければ、まだまだ安心して良いと思います。しかしインド方面に乗出してきた場合、英国のもどしどし入ると考えられますが。

三木 そうです。B-17は4000㎞行けるんでしょうから、ちょっと案じられる。

浅田 1トン持ってやっと4000㎞、2トンは持てないでしょうね。

三木 オーバーロードにすれば…

橋口 砲弾がうんと重くなったら本当に有効な片道の距離は1200,1300㎞くらいじゃないでしょうか。

山本 そうらしいです。

橋口 多くて有効なエフェクティブな航続半径は1500㎞でしょう。

三木 そうすると余り恐ろしくないですね。

山本 B-17は大型機として良くない。翼荷重なんか少ない方ですね。今度はもっと大きな250㎏という様な事になって来つつありますから、イギリスの4発が既に250㎏前後です。翼荷重が増すと段々搭載量が増えるから、そうするとどうでしょうね。6000㎞近くの航続距離を持ち得るのじゃないかと思います。

橋口 私等はこう思う。航空母艦で来るより志那にずっと入って来る。インドに大軍が上がったという噂を聞くのですが、結局ビルマから志那内地へ行って、日本に対してじゃんじゃんやろうという気がある。今山本さんが云われるように、前やったB-25を使ったような何か新手をきっと考えますよ。フットボールの手のような何か奇抜な方法で、私はやるだろうと思います。それだけの事は一応考えて置かなければならない。我々の知って居る性能だけに捕らわれていては駄目だと思うんです。

イギリスの東亜進攻も軽視出来ない

 

山本 志那奥地は危ないでしょうね。

橋口 どうしても、志那の基地からの方が警戒すべきでしょうね。やはり志那の内部に対して日本の航空兵力の相当大きなものを向けておられましょうが、中々しつこく、広東あたりに来たりして居りますが、馬鹿にならんですね。

記者 やはりイギリスからも補給されるでしょう。イギリスも重爆撃機に力を入れているし、南イタリアがああいう状態になって地中海の輸送が前より楽になったでしょうからね。

記者 志那の基地に持って来るでしょうね。インドを通して、その事は無論考えなければならぬと思いますね。

記者 グズグズしていると航続距離の延びるのも作るでしょうから、今のうちに徹底的に叩かねばいけません。

山本 そうです。時間が経てばきっと作るでしょう。

橋口 昔イギリスが世界最長の距離を作りましたね。

浅田 あのシドニーに飛んだ奴ですね。

橋口 ビッカース、ベルデビース、ウェルズレー、タイフーン型ですが、ああいう事を考えている国ですから、相当変わったものを作っているでしょうね。元々イギリスという国はアメリカがこんなになる前は一番偉かったのですから、そう馬鹿には出来ないでしょうね。4発の爆撃機で空襲される、目で見てスマートじゃないが、イギリス人はシルクハットに蝙蝠傘を持っている。実用向です。雨が降っても濡れない、シルクハットを被っているから頭を打たない。私等終始頭を打っている、着物も黒を着ている、黒だと何処でも着られる。馬鹿にならんですね。問題は志那内地で防御して頂いている日本の軍部の飛行機の数と良さの問題になる。それはやはり銃後の生産力ですね。一に生産、二にも生産ですね。

 

ハンブルグの犠牲を敵都で償え

 

記者 先ほど問題になりました敵国を突っ込んで、こういう様な目に合わせてやりたいと誰も思うのですが、日本の生産の充分の備えが出来るのは今後、どのくらいかかるのでしょうか。

橋口 そうですね。今技術者を充分に供給してもらえば、今持っている能力の倍とし得ると思いますね。今の設備と今の機械で、我々の物足りない所は、痒い所に手が届くだけの技術者を持たない。遊休産業なりの技術者を貰い、極端に言えば昭和13年以前に卒業した技術陣を日本全国の再編成を暫くやって貰って、暫くの間この頽勢を取戻すまで、この航空工業に参加して貰いたい。厚生省でそうした再編成をして貰って、戦争に勝ったら元の姿に還る、現在の給料が高いから行き難いという方には皆差上げて良いと思います。日本は人的資源が余っている。学生、女子はまだ徴用していない。アメリカはそれをやっている。勝つ方法は幾つもある。技術者を下さい、徴用の制度は布かれたし、それからもう一つ日本は企業整備が出来た。この企業整備のお蔭は物凄いものです。多量生産方面に繊維工業という奴は、即座に航空機工業になり得る、技術者さえ貰うならば、必ずなるのです。建物が部分品の製造工場に萬点で換わります。ですからニューヨークをガラガラと叩き壊すのは、そうなればじきですよ。

浅田 そうですね。大体そういう風に変わって行ってるのじゃないですか。

橋口 全部なっておりますが、技術者の数が足りない。急速に整備するに技術者が要る、手数が要る、そういう所が我々の考えている悩みであり、希望でもあります。きっとそうなるだろうと思います。急いでして貰いたいですね。そうして昭和19年度中にレンドバ、ガダルカナルを日本のものに逆転させてしまわなければならぬ。イタリアがあんな風になったが、ドイツはローマまで占領して、サレルノではサレルに任せずダンケルクの二の舞というような凄い目に合わせている。ドイツが要点集中したのでしょうね。数さえ差上げれば勝てる。数を出すための方法を国をあげてやって貰いまして、浅田先生は来ない中に捉える奴をやって頂く。

足立 そして編隊を爆撃する爆弾を作る…それから爆弾を電気で落してもよい、電波で全部落せるようなものは出来るかもしれない。こっちに来ないうちに海の中に皆落すようにすればよい。ナニ充分安心していいでしょう。

橋口 それは浅田先生の方ですね、出来ますね、一つ研究してください。

記者 どうも色々と御高見有難う御座いました。