1年前のあの日が
1年前のあの時が
1年前のあなたの言葉が
あたしを変えた瞬間
きっと死ぬまで忘れられない
忘れたくない
あの日
どうしようもなく
悲しくて
悲しくて
あたしは絶望していた
自分に
自分の人生に
自分の生き方に
自分の存在に
あなたが冷たいのが腹立たしかった
あなたをあたしは逃げ場にしたかったから
いつもと勝手が違う展開にあたしはいらだっていた
ふと
いきなりに
あたしの中のもう一人のあたしが出現した
なぜあの時だったのか
いまでもわからない
じゅっ
自分で煙草を押し付けた手首が焦げた音を覚えている
なんだ あんまりあつくない
そんなことをぼんやりとおもった
あなたが驚いて払い除けた煙草が太腿を掠めたときに
初めて熱いと思った
あたしは暴れ狂った
自分でもどうにも止められない暴風が心に吹き荒れていた
いままで言えなかった
でもいつも言いたかったこと
あなたではない誰かに
あなたにいうことではないとわかっていたけど
とめられなかった
あたしのことなんてほっておいて
あたしなんかどうでもいいくせに
中途半端にやさしくしないで
何にも知らないくせに
あたしはあんたが思っているような人間じゃない
理不尽なあたしの言葉に
怒りと戸惑いを滲ませたあなたの顔
ふらふらと外へ出たあたしはビルの柵から
落ちそうなほど身を乗り出した
死にたいの
死にたいよ
あたしなんか
消えてしまえばいい
そう 街灯が照らすうす明るい道路を見下ろしながら
呟いた
あなたは驚愕して
あたしを必死に室内へ引きずり戻した
その暖かいやさしい手を
あたしは乱暴に振りほどいた
何度も
何度も
触んな
触んな
そう叫んで睨みつけた
あたしの目はきっと憎悪に満ちていた
どうにもならないじぶんへの憎悪
きたならしい自分への憎悪
今まで出会ってきた男の人たちとは違うものを
あなたに感じたからこそ
自分への憎しみが突き上げた
あなたはまっすぐで
正しくて
いままであたしを受け入れてくれた男の人たちのように
やさしいだけではなかった
真剣な綺麗な目で
見られたくなかった
これ以上あたしの中に入ってほしくなかった
でも
どこかで救いを求めていた
一回あなたの腕を振りほどくたび
一回あなたに汚い言葉を投げつけるたび
あたしは絶望した
これが最後かもしれない
もうだめだ と
でも
あなたはあたしに向き合い続けてくれた
何度も
何度でも
なのに
あたしはまだ怖くて
さらにあなたに暴言を投げつけた
じゃぁあんたが殺してよ
できるでしょ
もう生きていたくなんかないの
殺してよ
どうせ背負えもしないくせにかかわんな
ひどい言葉を
山のように
吐き捨てた
あたしの肩を掴む手を叩き落し
抱きしめようとするあなたを思い切り蹴った
何回も
放せ
触んじゃねえ
近寄んな
そう叫びながら
ハイヒールで蹴られ続けたあなたはどんなに痛かっただろう
でもあなたは一歩も引かなかった
何度蹴られても
何度睨まれても
どんな言葉を聴いても
あたしに向きあいつづけた
やめて
そんなふうにされたら期待してしまう
もう いやなんだ
期待するのは
もう
いやなんだ
ぐしゃぐしゃに泣きながら
床にへたり込んだまま
あなたに叫んだ
じゃあ あたしの為に全部捨ててくれんの?
あたしが遠くに逃げたいって言ったら
明日一緒に逃げてくれんの?
全部捨てて
あたしの人生背負ってくれんの?
なんでそんなことを言ったのか
わからない
でも
あたしは必死だった
誰にも言ったことのない
でも聞きたかったこと
まだ出逢って数週間のあなたに
そんな質問をぶつけられて
ひるまない方が可笑しい
だから
あたしは答えを聞く前にあきらめていた
終わった
と思った
でも
あなたは
きっぱりと
全部捨ててやるよ
それでおまえが死なないなら
そんなもん
全部俺が背負ってやる
怒りを含んだ真剣な眼差しで
あなたは言い切った
嬉しくて
信じられなくて
でも嬉しくて
あたしのなかのもう一人のあたしが初めて泣いた
嘘でもいい
こんなふうに
言ってほしかったんだ
ありがとう
あの瞬間、あたしはどんなことが合ってもあなたを信じると決めた
あれから1年
あたしはまだ闇の名残に苦しんでいる
でも
あなたがいる
あたしの闇にさす強い光がある
1年前よりも
さらにやさしく温かい腕があたしを丸く包んで
あたしはちいさなおんなのこになれる
もう一度聞いてみた
今でも
全部捨てれると
全部背負ってやるって
言ってくれる?
あなたは
優しい やさしい声で答えてくれる
1年前と同じ熱を込めて
変わらないよ
今も変わらず心からそう思ってる
そしてね
いまの思いのほうがずっと強いんだよ
だいじょうぶだよ
何にも心配いらない
あなたはやっぱりあたしの救いだった
ありがとう
あなたに出会えて本当によかった
肩にくっきりと残った
あなたの手形を
あたしは
きっと忘れない
