1125()に、最高裁判所が、各地の弁護士グループが提起した、平成2612月の衆議院総選挙での1票の較差について「違憲状態」で選挙は無効としないとの判決を出しました。

 

1票の較差が最大2.129倍で、2倍以上の小選挙区が13あるとして「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものではあるが、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、本件区割規定が憲法141項等(引用者注:法の下の平等)の憲法の規定に違反するものということはできない。」というものです。

 判決全文はこちらへ
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/495/085495_hanrei.pdf

 

15人の最高裁の判事の内、今回の「違憲状態」との多数意見が10名です。反対意見として、明確な違憲が1名、違憲で一部選挙無効が1名、違憲で全部選挙無効が1名で、合憲が2名となっています。違憲論者の3人はすべて弁護士出身です。

 

 

●少数意見の方が国民の常識に近い!!

 

 15人の最高裁判事のうち、合憲意見を述べたのが櫻井裁判官(官僚出身で自民党政権下任命)・池上裁判官(検事出身で自民党政権下任命)2人です。

 

 「選挙制度の整備は、漸次的見直しを積み重ねることによって実現していくことも国会の裁量によるものとして許容されるところ、両改正法(引用者注、人口最大較差2倍未満にするための05減改革)により定められた本件選挙区割り(人口比最大格差1.998)は、その後の人口変動により格差が2倍を僅かに超えることが予想されるものであったとしても、衆議院に解散制度があり、緊急に違憲状態の是正が求められていたことや両改正法の趣旨及び成立までの経緯等に照らすと、違憲状態を当面是正するものとして国会の立法権行使の在り方として現実的な選択であり、合理的な裁量の範囲内にある」

 

 「議員1人当たりの人口及び選挙人数を見ると、本件選挙時の選挙人数最少選挙区の属する宮城県と最大選挙区の属する東京都とを比較すると、平成22年国勢調査時の人口比で1.345倍、本件選挙区時の選挙人比で1.367倍であるなど、定数較差を都道府県間で見れば2倍を相当程度下回っている。」

 

 「本件選挙時の選挙人比最大較差が最少の宮城県第5区と最大の東京都第1区との間で、2.129倍であったことについては、東日本大震災による被害を受けるなどの特別の事情のあった宮城県第5区等を基準にして同較差を算出するのは相当でなく、そのような特別の事情のなり鳥取県第1区を基準とするのが最も妥当な方法である。そして、鳥取県第1区と東京都第1区との間で比較すると、本件選挙時の選挙人比最大較差は、2.067倍であり、同較差が2倍を上回るのは5選挙区だけである。この格差は、違憲状態を緊急に是正するための立法的裁量の現実的な行使である本件選挙区割りの合理性を失わせるに至っていたということはできない。」

 

 以上の合憲意見の方が、私は説得力があり、国民の常識に近いと思います。

 

 

●「違憲」とする3人の判事 選挙やり直しの暴論も

 

 一方、「違憲」の暴論を吐く、最高裁判事が3人もいます。それも、すべて弁護士出身であります。

 

鬼丸裁判官(弁護士出身で自民党政権下任命)は、違憲で合理的期間を徒過したとし、さすがに全部無効とすると混乱があるので、主文で違法宣言するべきだとの意見です。

 

 さらに、違憲であり無効だとする裁判官も2名います。

 

 木内裁判官(弁護士出身で自民党政権下任命)は、違憲で合理的期間を徒過したとし、選挙人数が最も多い東京都第1区の2分の1を下回る12の小選挙区の選挙を無効とし、その他は違憲宣言にとどめるとの意見です。

 

大橋裁判官(弁護士出身で民主党政権下任命)は、違憲無効なので、「本判決確定後6か月以内に是正措置を採る」「新たな選挙区割りに基づいた選挙をすることで本件選挙を無効とすることによる混乱を回避することが可能」と極論、暴論を述べています。

 

 

●最高裁の常識は国民の非常識

 

衆議院は1票の較差は2倍以内と法律に明記し、緊急措置として05減を実施し、現在も有識者による検討を行っている最中です。それを実際は2倍をわずかでも超えたから「違憲状態」だと声高に叫ぶ最高裁判決はいかがなものかと思います。合憲の2人の判事の最高裁では少数意見なのですが、それが私にとって一番常識的な判決だと思います。

 

最高裁の大法廷(全員参加)による憲法判断を伴う判決は、いつも問題があると思っています。平成20年の国籍法判決、平成25年の非嫡出子相続判決等であり、そして一連の衆参の1票の較差判決です。このような非常識な判決を出し続ける最高裁では、来る1216()の「夫婦別氏、再婚期間禁止」の民法についての憲法判断も、大変危惧されます。国民の常識に反して「夫婦同氏」を憲法違反としかねないからです。最高裁の常識が国民から見ると非常識にならないかと大変懸念しています。

 

衆院選時の国民審査制度等はじめ最高裁の在り方、また弁護士会も含めて、先日の自民党法務部会でも問題提起しました。今後しっかり議論したいと思っています。

 

 

●最高裁判事の一覧 15人の経歴

 

衆院1票の較差判決/氏名(ふりがな)/任命年月日/出身/前職等

 

自民党政権で任命

⑴○合憲 櫻井 龍子(さくらいりゅうこ) 平成20911日 官僚 労働省女性局長・九大客員教授

 

民主党政権で任命

⑵△違憲状態 千葉 勝美(ちばかつみ) 平成211228日 判事 仙台高裁長官

⑶△違憲状態 岡部 (おかべきよこ) 平成22412日 学者 判事・弁護士・東洋大・慶大教授

⑷△違憲状態 大谷 剛彦(おおたにたけひこ) 平成22617日 判事 大阪高裁長官

⑸△違憲状態 寺田 (てらだ いつろう) 平成221227日 判事 法務省民事局長・広島高裁長官 最高裁判所長官 

⑹×違憲全部無効 大橋 (おおはしまさはる) 平成24213日 弁護士 東京第一弁護士会

⑺△違憲状態 山浦 善樹(やまうらよしき) 平成2431日 学者 弁護士・中大客員教授

⑻△違憲状態 小貫 芳信(おぬきよしのぶ) 平成24411日 検事 東京高検検事長・亜大教授

 

自民党政権で任命

⑼×違憲 鬼丸 かおる(おにまるかおる) 平成2526日 弁護士 東京弁護士会

⑽×違憲一部無効 木内 道祥(きうちみちよし) 平成25425日 弁護士 大阪弁護士会

⑾△違憲状態 山本 庸幸(やまもとつねゆき) 平成25820日 官僚 通産省・内閣法制局長官

⑿△違憲状態 山﨑 敏充(やまざきとしみつ) 平成2641日 判事 東京高裁長官

⒀○合憲意見 池上 政幸(いけがみまさゆき) 平成26102日 検事 大阪高検検事長

⒁△違憲状態 大谷 直人(おおたになおと) 平成27217日 判事 大阪高裁長官

⒂△違憲状態 小池 (こいけひろし) 平成2742日 判事 東京高裁長官

15人中=判事6人+弁護士3人+学者2人+検事2人+官僚2

 

 

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