というわけで、今までの傾向とはうって変わって戦後の機体を作ってみました。ジェット・プロペラを通じて私のいちばん好きな飛行機、通称「マルヨン」です。て事でいきなり1枚目~(´∀`)






F-104Jその1





 時は1950年代初頭、アメリカとソ連(現・ロシア)が鋭く対立し、一歩間違えば核爆弾が飛び交う人類最終戦争へと突入しかねないピリピリした時代。


 戦闘機と言えば「へ」の字に後ろ向きに反った翼を持つものというイメージが定着しつつあるなかに登場したこの機体のビジュアルが、当時どれほどセンセーショナルであったか。ジェット戦闘機が登場してわずか10年で「最後の有人戦闘機」というキャッチフレーズをたてまつられたと聞けば、相当なものだったろう事は想像に難くありません。




 核爆弾を抱いてマッハで迫り来る敵爆撃機を一分一秒でも早く迎え撃つためにスピードと上昇力だけに的を絞った"ゼロヨン仕様"を、傑出した才能がデザインした結果出来上がったあまりにもクリティカルなその姿は、半世紀以上も経った今日でもレトロ新しい不思議な魅力をかもし出しています( ̄ー ̄)




 またマルヨンが装備するJ79ターボジェットエンジンは、ある回転数帯で内部の整流板と気流が共鳴するために他のジェットエンジンにはない独特なサウンドを奏でるのが特徴で、マルヨンの印象を音の面からも特別なものにしており、まるで尺八のような、あるいは獣がうなるようなその音を古いマニアたちは「マルヨンの鳴き」と呼んで懐かしがります。下の動画を見ていただくと、飛んでいても着陸していても時々そういう音が混ざるのが聞こえるでしょう。視聴の際はジェットエンジンの音なので音量には注意してくださいね( ̄ー ̄)/








 蛇足ながらこのエンジンの回転軸は、同様に高速回転する、当時開発中だった国鉄の新幹線0系の車軸部分の設計の参考にされたそうで、意外なものが意外なところで日本人の生活に溶け込んでいるんですね( ̄ー ̄)



 登場時は話題をさらったものの、あまりに小さすぎて拡張性に欠けるとして多用途性を重視していたアメリカ軍からは早々に退役させられてしまいました。ゼロヨン仕様のままゴツゴツの岩場も走れと言われたようなものでマルヨンにとっては不本意な扱われようです。


 そのままなら歴史のあだ花、ジェット黎明期のポッと出のラジカルな航空機として埋没していくところ、しかし捨てる神あれば拾う神あり。「迎撃に特化しすぎて他で使えない」というなら専守防衛という前提を持つ自衛隊が装備するには周辺国も刺激せずまさしくうってつけの機体、写真や模型のごとく日本仕様のJ型が生まれ210機の多数が調達されました。操縦や離着陸が難しかったものの熱心に空戦の研究が行われ、ついにはマルヨンとは逆に空中格闘戦が得意なF-15を演習で撃墜判定に持ち込むなどの伝説も打ち立てています


 他にもカナダ・ドイツ・イタリアなどで重用され2500機以上を量産、1950年代の資本主義陣営を代表する戦闘機へと成長していきました。



 模型は「飛行機のハセガワ」が満を持して送り出した1/48の傑作キット。モノによって出来不出来の差が激しいハセガワ製品にあって、ヨンパチのマルヨンはパテによる修正も必要とせず優等生に属すると言っていいでしょう。


 個人的には、全面銀塗装ながらこまごまと何色か塗り分ける必要があり、ひよわな銀塗装の上から地道かつ慎重なマスキングを要求されるあたり、若干中級者向けである感じもします。


 注意点が一つあり(マルヨンをよく知る人なら言われるまでもないでしょうけれども)、今回の写真には角度的に写っておらず、また説明書にも書いてありませんが、主脚収容部ドア(パーツ番号E1とE2)は、主脚の支柱と干渉するので地上姿勢では完全に閉まりきらず、外側をヒンジに中央に向かってほんの少しだけ開いているのが正規状態なので、全閉で接着しないようお気をつけ下さい( ̄ー ̄)






F-104Jその2



 雑誌などによくある、斜め前からのショット。フェンスの外からとか、飛行機が並べられた所からちょっと離れた場所から撮られた写真によくある構図です。


 さすが1/48ともなると小柄なマルヨンも全長30cmレベルになってきますし、収納するのも大変なので機首のピトー管は接着していません。



F-104Jその3



 ちょっと失礼して後ろの下から。ジェット排気口の周辺は高温となるので、外板には機体前方とは異なる合金が使われており、少し色合いが異なります。クレオス8番の銀に61番の焼鉄色を足したものを配合比率別に2種類作り、互いに重ならないよう地道なマスキングと、ひよわな銀塗幕の保護用にクリアー吹きを何度も繰り返す作業が、マルヨン製作の目立たなくもいちばんツラいところでしょう。息抜きに他の簡単なモデルを作ったり、十分な乾燥も兼ねて何日か置いてやる気を再充電するのもよろしいかと思います( ̄ー ̄)






F-104Jその4



 一枚目よりやや低い角度から。この角度はメーカー公表写真とかによくあるアングルですね。


 主翼端に取り付けられている爆弾状のものはミサイルでも爆弾でもなく「チップタンク」と呼ばれる外部燃料タンクで取り外す事ができます(もちろん飛行中にも投棄できる)。翼端には元はミサイルランチャーがあったのですが、このタンクを付けとかないとすぐガス欠で帰ってこなきゃなりません。「パッと上がって迎撃したらすぐ帰ってくるんだから30分も飛べりゃいいだろ」みたいな運用を想定しており、ドイツのMe163コメートにも近い割り切った設計が垣間見える部分ですね。






F-104J



 これもまた2枚目より少し上がった角度から。排気ノズルがよく見えていますが、このエンジンはF-4ファントムが装備しているものとほぼ同じです。つまりファントムはこれが2基横に並んでいるわけで──そう考えるとファントムがデカいのかマルヨンがちんまいのか(笑)。こう見るとすごくぶっといエンジンなように見えますよねぇ(^_^;


 現代機は機体全面に耳無し芳一のごとく注意書きがビッシリ書かれているので、それを丹念に貼っていくデカール作業も面倒っちゃ面倒でした。けっこう広い範囲を一枚にまとめてる割に位置がズレてるので、日の丸の上の赤二重丸の燃料注入口マークなんかは切り離して別々に貼る必要があります。


 尾翼の部隊マークは何度も動画を録りに行って印象深い茨城県百里基地に所属していた部隊のものをチョイス(既に中年の私ですら実際に見た事はないんですが)。水戸偕楽園の梅の花をモチーフにした、戦闘機や軍隊にしてはちょっとかわいらしいマークがいいですね( ̄ー ̄)



 いちばん好きなヒコーキという事でもっと激写したかったのですが、今回はひとまずこれくらいにしといてやるか、という事で(笑)