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赤平大とはvol.3

vol.1 vol.2 に続いて、テレビ東京でニュースキャスターをやっていたときに書いていた「赤平日記」から



どうしても自分の目でアフリカの貧困・環境・食料問題を見たくて、企画・リサーチ・取材をした「タンザニア取材記」



ディレクター・カメラマン・私の三人で24時間以上かけてアフリカ大陸に上陸。

そこには「アフリカ=貧困」というシンプルな言葉では表現しきれない衝撃がありました。


今回は、皆さんが毎日接しているであろう「コーヒー」の話。



スターバックスでカフェラテを頼む瞬間に、何を考えますか?



以下





08年7月17日掲載

「タンザニア取材記(3)」




キリマンジャロ山。

日本ではコーヒーの産地として馴染みがあります。
そのキリマンジャロのすそ野にあるルカニ村に、私たちは取材に行きました。

強い雨の降る中お邪魔したのは、コーヒー農家のシーザーさんの家。
家族は妻と6人の子供、そして牛・豚・鶏を8畳ほどの小屋で飼育しています。



私はシーザーさんに、意地悪な質問をしました。

『コーヒー1杯、日本ではいくらだと思うか?』


という質問です。




もちろん彼らには、遠い異国のことなどわかりません。なにより、自分たちの作ったコーヒーが、その後どのように取引されているかなど、知るすべもないのです。


シーザーさんの答えは『想像もつかない』でした。もっともだと思います。



私が『日本では300円~400円します』と言うと、シーザーさんは絶句し、首を振り『なんという値段だ、高い、高すぎる』とこぼしました。




実はこの質問、数人のコーヒー農家にも聞いていて、みな同じ反応でした。




あるコーヒー農家の方いわく、『300円は私たちのコーヒー1㎏の売値と同じ値段だ。
コーヒー1杯は、だいたい豆3粒でできるのに...』


彼らは、コーヒーの市場価値を知るすべを持ちません。
コーヒーの恩恵をほとんど受けずに、今まで生産していたのです。






シーザー家の長女エリシさんは18歳、高校に通っています。
タンザニアの公用語が英語とはいっても、地方ではほとんどがスワヒリ語しか通じません。
私がダイレクトにコミュニケーションを取れたのは、英語のできるエリシさんだけ。




取材の合間に彼女と雑談中、私が『今日は雨で嫌だなぁ』とつぶやくと、彼女は『なぜあなたは、雨が好きではないんですか?』と。
雨が少ないと収量が減る、そのためタンザニアでは雨は喜ばれるそうです。


雨ひとつの会話でも、リアクションがこれほど面白いのがアフリカ取材の醍醐味です。





そんな中、非常に興味深い話を聞くことができました。


それは、私が彼女に『将来はどんな職業に就きたいの?』と質問したときです。



彼女から帰ってきた答えは、



『私は草刈りの仕事をしたい』




驚きました。




彼女の言う草刈りとは、家の前や畑の雑草を刈る、という意味です。
決して『草刈り業』という就職先ではないのです。あくまでも、家庭の仕事ということです。




お金を得るための仕事ではない。





経済発展が目覚ましいタンザニアといっても、地方部では『仕事』という概念が先進国のそれとは大きく異なっているのです。





コーヒー農家の祖父を持ち、現在は観光業を営み富豪となったタンザニア人の社長に話を聞いた時、彼は『タンザニアで一番の問題は貧困である。


そしてその対策には教育が不可欠だ』と話していました。





これは他のアフリカの国の政府関係者も同じ意見で、彼らの言う『教育』というのは、読み書きそろばん、だけではなく『知見を広げる』という意味が多く込められています。


赤平大の『ありがとうございます!!』 
(組織的なコーヒー農園はこれほどの規模だが、シーザーさんの農園はこの1万分の1くらい)



赤平大の『ありがとうございます!!』 
(こちらも組織的なコーヒー農家の倉庫 ここで選別され、焙煎所に送られる)



かつて日本が寺子屋などで行ったように、国の識字率が100%になれば、搾取から・貧困から脱することができる。
そして広い知識を得ていれば、選択肢が広がる。






ルカニ村にはフェアトレードで作られた中学校や図書館があります。
しかし、世界の食糧高騰・物価高の影響と学費の値上げは農家を直撃。
苦しい農家は、牛を売って子どもを学校に通わせています。


牛を売りつくした農家もいます。彼らはその後、どうやって子どもを学校に通わせるのか。




世界的な食糧高騰の波は、津波となってアフリカ大陸に押し寄せ、貧困を脱する武器『教育』を飲み込んでいます。


最貧国での負のサイクルは、解決策を見いだせずにいます。





(以下次号へ)