学生(がくしょう)のころは将に青々し

師父は野に在って山に、畑になおいそがしい

山に在れば木の幹の色合いに

畑に在れば土塊を手に山に向き合ふ

木の幹の間を奔るものがゐる

思考はなんと健全で跳躍は自在で

四月の底を、と云ふ

いや五月になっても六月になっても

みどりが谷峡に色濃くなればなるほど

学生は師父の後を追って

なほも高く、なほも深く

分け入っても、分け入っても
2005田渕俊夫「緑溢れる頃」

 

真緑みどり

みどり真緑

道に畑に山に山辺に

真緑歩けばみどりに染まる

お螻蛄(おけら)歩けよ田圃の中を

田圃の田代逆さ水影

真緑みどり田の端正さ

早苗饗(さなぶり)近し六月の空に

 

万緑にみるみるイキグルシさ溢れて

 

後ろ行く

木を伐る人の

木を伐る人の

背中の不思議さ

 

学生のころは青く青く

真正に学問に向き合い

師父は厳格に時に滋味深く

百人のいや無数の千人の

学生たちの頭上に励ます

 

倉石智證