学生(がくしょう)のころは将に青々し
師父は野に在って山に、畑になおいそがしい
山に在れば木の幹の色合いに
畑に在れば土塊を手に山に向き合ふ
木の幹の間を奔るものがゐる
思考はなんと健全で跳躍は自在で
四月の底を、と云ふ
いや五月になっても六月になっても
みどりが谷峡に色濃くなればなるほど
学生は師父の後を追って
なほも高く、なほも深く
真緑みどり
みどり真緑
道に畑に山に山辺に
真緑歩けばみどりに染まる
お螻蛄(おけら)歩けよ田圃の中を
田圃の田代逆さ水影
真緑みどり田の端正さ
早苗饗(さなぶり)近し六月の空に
万緑にみるみるイキグルシさ溢れて
後ろ行く
木を伐る人の
木を伐る人の
背中の不思議さ
学生のころは青く青く
真正に学問に向き合い
師父は厳格に時に滋味深く
百人のいや無数の千人の
学生たちの頭上に励ます
倉石智證