■韓国にも抜かれ、日本のすぐ下にはインドネシアが迫ってゐる。

 

6度も経済破綻デフォルトしたアルゼンチンは明るい。国民は、伝統のタンゴを踊り、夜にはしゃれたバーでワインを楽しむ。ドルとペッグしてV字回復したのがひとつ、身ぎれいになると再び外国からの投資を呼び込むことに成功。政権は介入保護主義左派から中道右派マクリ政権に。ブラジルでも左翼政権が崩壊して中道政権が発足した。チャベスの後を継いだマドゥロ政権のベネズエラが悲惨である。社会主義配給国はハイパーインフレに襲われ、電気は止まり医療さへもままならない。400万人強の自国民がコロンビアなどに脱出してゐる。デフォルトしたアルゼンチンもそうだが三つの国に共通しているのは経済危機に陥るときは社会主義的介入保護主義的な政権の時のようだ。自由市場的ガバナンスが働かない国は縁故主義や汚職が蔓延する。民主主義が必ずしも効率的とは云えないが一党独裁の共産主義国中国以外では社会主義的政策をとる国々はみな行き詰っているのではないか。いや中国はもはや社会主義国とは云へなゐ。経済システムは資本主義そのものであるし、しっかり国内には格差が根付いてゐる。社会主義は大きな政府で“バラマキ的”であるようだ。資本主義は剰余とついでに格差も生むが、社会主義こそは無気力と虚無を社会に生み出すこともある。生産の結果に気を使うのでなく、組織の上下や自分の周りに気を遣うようになるからだ。典型的なのがお隣の北朝鮮で、かってのスターリン主義の亡霊を想起させる。

 

(貯蓄 - 投資)Ⓐ民間 + (税 - 財政支出)Ⓑ政府 = Ⓒ経常収支 

Ⓐは多くの生産と需要、利益や所得、そして消費の現場だらう。人々の暮らしがそこにある。またⒶは多くの労働と資本と株式や不動産の現場でもあるだろう。そしてモノを製造する工場はまだまだ有効だ。Ⓑで「改革開放」「先富論」の中国では、天安門事件があったのにもかかわらず、1990年代初頭、米国の資本や多国籍企業やシンジケートが一気に中国になだれ込んだ。冷戦終結もいいタイミングだったのだ。安い労働と、米国のみならず多くの外国の資本がⒶで結びついた。グローバリズムはまず中国で始まったとみてもいいだらう。クリントン大統領は内輪でもめ事してゐるジャパンをパッシングして中国へ、1994中国は米国の支援を得て為替を一本化して人民元相場を一気に引き下げた(Ⓒ輸出競争力⤴)。

 

1949年、1㌦=360円の固定相場にしてもらった曾ての日本のごとく、昇竜は目覚めた。鄙びた漁村に過ぎなかった深圳特区に人と資本が蝟集してゆく。Ⓐ(安い労働と+資本)、Ⓑ(「改革開放」「南巡講話」「先富論」)、そしてⒸで人民元相場の圧倒的引き下げとドルペッグ。世界の工場となった中国は日本が1㌦ブラウスで米国の市場を席巻したように世界の市場に輸出を伸ばしてゆく。中国は為替八条国に入り、2001,12、日本の長いことの加入後押しもあってWTOに加盟した。世界のルールに従ってと云ふことだが、世界中との貿易の手立てが整ったのだ。2010には日本はその中国にアッと云ふ間にGDPで抜き去られる。

 

1989,6,4天安門事件

1989,12,3(パパブッシュ・ゴルバチョフ)マルタ会談。冷戦終結。

1990,9金丸訪朝団

1990,10,3東西ドイツ統一

1991,1,17「砂漠の嵐作戦」湾岸戦争

1991,8,24ゴルバチョフ書記長が大統領を辞任し、ソ連が共産党解党を表明。

1992,2中国「領海法」を制定して尖閣を中国領土と宣言した

1992,10,23~28天皇、皇后、中国訪問

1994,1中国為替改革(為替一本化と人民元の切り下げとドルペッグ)

1994年に「愛国主義教育実施要綱」を制定し、

「抗日戦争勝利50周年」にあたる1995年から、徹底した反日教育を推進

1996,3,18台湾海峡危機。打撃軍航空母艦2隻を横須賀から

1996,12中国はIMF8条国に移行。人民元の経常取引での交換性が保障される。

1997,7,1香港返還

1997,7,2アジア通貨危機、タイバーツ下落⤵

中国は1994の為替の徹底した引き下げにより、アジアショックから免れる。

1998正式に住宅の市場化(分譲住宅の流通)がスタートした

(70年間の土地使用権の権利を購入)。

日本の土地神話とバブル。中国の国有土地と錬金術。

1998,11,26中国共産党の礼服中山服の江沢民は、

宮中晩さん会で遠慮のない日本批判「歴史問題」にのろしを上げる。

2001,12中国WTO加盟

 

(貯蓄 - 投資)Ⓐ民間 + (税 - 財政支出)Ⓑ政府 = Ⓒ経常収支

Ⓑの変遷───

1990年代初頭(「韜光養晦」)

2000年越えるころから(「走出去」)

2013(「奮発有為」)爪を隠すから、もはや上着の下の鎧を隠さなくなった。

2013習近平提唱“一帯一路”「シルクロード構想」と

2015年AIIB

2019(「中国製造2025」そして「NEV規制」)

“一帯一路”「シルクロード構想」とは中国版マーシャルプランであり、

経済学的にはケインズ的需要管理、需要創造の路線を踏襲してゐる。

生産の3要素(優良な資本、優秀な労働、そしてTFP)

モノコトの産出量に対しての3要素の投入量のことである。

TFP=技術を含む全要素生産性において先端技術の自前化を目指すのが、

「中国製造2025」と云ふことになる。

世界一の自動車王国の中国にして「NEV規制」。

国ばかりか世界の方向を新エネルギー車(EVなど)へと標準化。

VWやBWMやトヨタなども一斉に追従することに。

分業や提携や、サプライチェーンシステムなど、

いろんな分野で生産性が一気に生まれてくるのだ。

 

“コンクリートから人へ”“一億総活躍”“強じんな日本へ”とか

日本の政府の(税 - 財政支出)Ⓑには、

中国のようなリアル、壮大な需要創造の意思が伴っていない。

幼保待機児童の解消、高学年の授業料無償化などもそれだけでは、

国の生産性(貯蓄 - 投資)Ⓐ民間に火が付かない。

共産主義国の中国はマルクスの資本論そのものを実行し、

「資本」を外国から呼び込み、

「労働」は安価な自国民と結びつけ、

「土地」は深圳などの特区や、国所有や集団所有の土地を錬金術した。

深圳は秋葉原などとっくに追い抜いて、

規模やその特異性においてさらに膨張を続けてゐる。

中国の昇竜、マジックドラゴンはも・・・である。

 

倉石智證