(貯蓄 - 投資)Ⓐ民間 + (税 - 財政支出)Ⓑ政府 = 経常収支

 

左は民間Ⓐとする、右は政府Ⓑとする。

政府Ⓑの大赤字を民間Ⓐの貯蓄(企業も含む)がカバーしてゐる。

しかし、一般大衆の貯蓄は高齢化とともに解約が続きⒶの貯蓄は心細くなっている。

金融はⒶ + Ⓑの全般にかかわる問題で、中銀は政府から独立するとされながら、

民間金融機関などから政府発行の国債などを買い入れて、民間にマネーを供給してゐる。

また政策金利や、長期金利を操作して、マネーの流量を調整、

景気をフォワードルッキングしてゐる。

さて問題はこの金利である。

金利はマネーの使用量に対するお駄賃のやうなものである。

景気が良くなって喫緊に、大量にマネーが必要となれば金利は⤴。

逆に景気が悪くなりマネーの動きが不活発化すると金利は⤵。

中央銀行においてはさらに能動的にこの金利を操作する。

景気が悪いとみると金利を下げて企業などがマネーを借りやすいようにする。

また短期金利から長期金利にまでのイールドカーブに目配りする。

世界は時に歴史的インフレに襲われ、

社会的混乱は民衆に失業と貧困と病弊をもたらしたことを教訓に、

中銀はとくにインフレにはナーバスに対峙してゐる。

政府はたいてい高金利には抵抗するが、

米国ではカーター政権末期からレーガン政権時代、

FRB総裁のポール・ボルカー氏がインフレファイターとして有名だ。

 

そしてⒷである。

政府部門Ⓑは地方も併せて1200兆円を超える借金があり政府は大赤字、

しかし、それはⒶの貯蓄や、海外にある純資産によってカバーできる範囲であるから、

金利は跳ね上がることはないとされている。

政府の赤字国債を金融機関を通じて国民が買っているからと云ふことである。

また経常収支の赤字(内需の強さ)は金利が上がる原因になる。

(経常収支)は国民の稼ぎであり=(純輸出 + 海外配当金など + サービス収支)

=GNI国民総所得と云ふことでもある。

一方日本ではGDPの6割以上が消費が占めており、

あと投資・輸出・住宅・在庫・政府支出となってゐる。

庶民が納得ゆく景気を実感するためにはいかにGNIを増やし、

消費や投資を活発化させるかが問題のやうだ。

今のところ純輸出は米中貿易摩擦で⤵。

海外配当金は先人たちの海外投資などもあって順調に上がってゐる⤴。

サービス収支は海外からの旅行者の増加、

中国人による爆買いはそれほどでも無くなったようだが海外インバウンドで⤴。

ただこの右辺のGNI(海外との収支の差額)は国内の一般大衆とはほぼ無関係のものであって、

おおむね大企業のバランスシートとか富裕層の懐を潤すことになる。

これが左辺Ⓐに還元されれば消費が活発になるのは間違いないだらう。

企業には内部留保になり、富裕層には過剰貯蓄になる。

 

将来の現金は現在の現金より不確実である。

「時間価値」と云ふ概念が金利を生み出す。

時間価値は短期よりも長期の金利があがるイールドカーブに表される。

10年物国債が長期金利の指標になる。

黒田日銀はこのイールドカーブをフラットにした。

長期で運用する保険業界は逆ザヤに追い込まれることも。

銀行に貯蓄する。銀行が金利を払う。

銀行が日銀に当座預金する。

日銀はある部分には金利を払い、ある部分にはマイナス金利を付与する。

金利はマネーの流速の方により大きな影響を受ける。

貯蓄-投資=経常収支であり、経常収支と国債吸収率の関係と⇔長期金利との関係。

経常収支の赤字の国は自国の国債を自分で消化できない。

政府の財政赤字は通常はギリシャ危機などの場合でも金利が⤴要因になる。

マネーはクレジットであり、信無くばリスクプレミアムを付与しなければ、

誰もその国債を買ってはくれない。

インフレは借金を軽くし、デフレは実質利子を高める。

デフレ時は借金の返済が重たいものになる。

政府はインフレを演出し、国民に対する借金をないものにすることも可能だ。

(戦後の「新円切り替え」)

インフレはマネーを軽くし、デフレは貨幣増価になる。

インフレ時はマネーをどんどん使ってしまおうと思う(→消費や投資)。

インフレ時はマネーをモノに換える。

デフレ時はマネーの力が強くなるのでタンス預金が増えることも予想される。

 

1936ケインズの「雇用利子および貨幣の一般理論」は経済社会、

ⒶでありⒷであり、生産、貿易、金融などすべてに展開される理論だ。

経済は必要で、必然だ。

貿易や生産の過程や変化に問題があるのではなく、金融に危機がある。

一つは健全な実需の投資に向かい、

一方では金融は不確実な変化に対するヘッジであるはずだったものが、

ひずみやゆがみや情報の非対称を利用した投機に向かう勢力ともなった。

またギリシャ危機では───

EUは、誰も他人の借金は払いたくない。

ドイツが小切手を切ってくれれば素晴らしいだろうが、そんなことはない。

国がどうなろうと知ったことではないとストを繰り返すギリシャ人たちを、

「豊穣で無茶苦茶な人たち」と呼ぶ。

問題はファイナンス(金融)が政治にも倫理にも美学にも、

我々すべてに影響を与えていることだ

これを取り払わなければいけない(08,4/14ステファン・エセル94歳)

 

金利は大事だよ

ここから、あそこまで

心配なら金貨を背中に貼ってあげよう

さあ、これできみはきっと歩いて行ける

升の裏にあったね

油まみれに

ランプに照らされた顔はそれ以上にてらってゐたよ

take over bit

白馬の騎士がやって来た

しかし、みんな信用ならんね

みんな虎視眈々と眼を光らせて

抜け目なく

 

グリーディでアグリィな人たちが生まれてくる。

マネー資本主義の限界なんだらうか。

 

あらゆる個人から投資家、企業まで、みんな利回りをどこへ置こうかと血眼になってゐる。

株式か、国債か、投資か、保険か、為替か・・・

実体経済が低体温に利回りを生み出さなくなると、

マネーを様々な商品に仕立てて、さらにクレジットにレバレッジを掛ける。

ゴーン氏は簡単に塀の中の人になった。

さて昨今の「金利ゼロ」は異常な景色である。

また“長短逆転”は景気の先行きに対してマーケットが不安を感じていることの証左でもあろうか。

 

倉石智證