涙ながらに辞任表明(19,5/24)───
「愛する国に尽くす機会を得たことに感謝する」
「離脱を実現できなかったことを、深く後悔し続けるだろう」
悲嘆のメイ首相が辞任し、後継争いにブレグジット党のジョンソン氏がリードしてゐる。英国も日本と同じで国内に巨大な資源があるわけではない。輸出に依拠する国家であることは間違いないだらう。あとは世界に冠たるものはシティ・オブ・ロンドンの金融都市街だ。しかし、英国はEUからの離脱でその金融シティの座を危うくしている。「単一パスポート制」が機能不全に陥るからだ。デリバティブなどの金融投資信託銀行や、保険会社などが欧州の金融ハブを求めて移動し始めた。もう一方の労働党党首ジェレミー・コービン氏は反緊縮、反貧困などを唱えてゐる。それらは米国の民主党左派サンダースさんが前から掲げてゐるところでもあったが、ヨーロッパは右派、左派ともに社会保障政策は選挙のためなのかどうか、その公約は政府は打ち出の小づちででもあるかのやうにバラマキに近い様相を呈してゐる。自国中心主義の右派連合がポピュリズム的政策を前面に欧州で連合を組み始めた。ブレグジットも然り、欧州の結束、EUのさらなる深化が試されるところである。
そして日本でも───野党で消費税廃止の急先鋒が、4月に「れいわ新選組」を立ち上げた山本太郎参院議員(東京選挙区)である。山本氏は格差是正のため、消費税廃止と政府のさらなる財政出動など「反緊縮」を前面に打ち出す。
(貯蓄 - 投資)民間 + (税 - 財政支出)政府 = 経常収支。
ドイツの恒常的経常黒字は米国の眼の付けるところとなった。ドイツは政府部門も財政はGDPの1.7%と云ふ黒字で、それもメルケルさんにとってはEU内に於いての痛しかゆしの課題になってゐる。ドイツより劣ってゐる国がたくさんあってそれが為替ユーロを下げてゐる。しかもドイツは付加価値の高いモノやサービスを輸出してゐる。まったく儲かる構図になってゐるのだ。
民主党政権下では、社会保障が雇用を生むとされ、格差是正を前面に押し出しつつ、財源の一部は増税で賄われた。しかるに自民党は民主党政権にクリンチし、いつの間にか民主党の社会主義的公約を自家薬籠中のものにした。そのうえで自民党などの保守政権では大方は企業サイドの政策が重点で、トリクルダウンで格差も縮小すると説明された。trickle-down effect とは、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる(トリクルダウンする)」とする経済理論であるが未だ証明されているわけではない。ただ例外として、お隣の中国では鄧小平は天安門事件の後も「改革開放」を一層推し進めるべく“先富論”を述べた。『南巡講話』(1992,1~2月)では「白い猫でも黒い猫でもネズミを捕る猫がネコだ」と共産主義の根本テーゼであるはずの平等を外し、格差を是認、国家資本主義を理論とした。
突出することを許さずどちらかと云ふと貧乏でもいいからみんな足並みをそろえて、と云ふのが社会保障を中心にする「大きな政府理論」であろう。一方“成果主義”“自己責任”“プロテスタンティズム”などは「小さな政府」で市場万能主義に近い。『揺りかごから墓場まで』の英国病を追いやり、労組を破壊し、自己責任の小さな政府を実現させたのがサッチャーイズムだった。政府も間違いを犯す、政府は万能ではないとするのはハイエクの新自由主義理論だ。「われわれはみなケイジアンだ」と云っていたのはニクソン大統領辺りまでで、政府による予算管理や、需要管理は成長にはそぐわないとした。マネタリストのフリードマンやハイエクの新自由主義の経済理論は米国のレーガン政権では結局は企業優遇の大規模な法人税減税を実施、日本では中曽根内閣は国鉄をはじめ電電公社などの民営化を図った。
(貯蓄 - 投資)民間 + (税 - 財政支出)政府 = 経常収支
さて、どの国の政策が一番効率的公正であった、ないしはあるんだらう。
倉石