(貯蓄 - 投資) + (税 - 財政) =経常収支→GDPやGNI(国民総所得)
と云ふ国の経済活動を表す公式は有効だ。
(貯蓄 - 投資)は民間の経済活動になる。
国民性もあって米国では貯蓄がへたくそで、どちらかと云ふとキリギリス的タイプ。
今でもそうだが世界のお買い物上手のマーケットなのだ。
レーガン政権のころから貿易摩擦で日本の突出した経常黒字、
米国の双子の赤字がと取りざたされたのだが、
あれは米国における(貯蓄 - 投資)の問題で、個別の日本の貿易体制の問題ではなかった。
インフレで景気が悪い(スタグフレーション)。
前カーター政権はネグレクティブに決め込んだ。
基軸通貨国の米国はドルをどんどん印刷して世界に回し、
世界から借金をして自国をターンテーブルとして、世界から稼いだ。
経常赤字、インフレの体質は昔からそんなには変わってはいないのだ。
インフレファイターとしてポール・ボルカーFRB総裁が敢然と超高金利に挑む。
(税 - 財政)は政府活動を指す。
ただいまのところ消費税の問題ばかりが渦中にあるやうだが、
政府は一貫して大赤字で、その赤字を辛うじて民間がカバーしてゐる、と云ふ構図である。
2013,4月に“黒田バズーカ”によって、量的緩和と、低金利政策が2%インフレ期待値、
と云ふことでフォワードルッキングされた。
すぐさま反応したのが、
→為替経路で円安に一気に進んだ(輸出企業に)。
→資産経路では株価と不動産価格に火がついた(富裕層)。
→金利経路では財政ファイナンスがまかり通るようになった(政府)。
金利経路はしかし流動性の罠、と云ふものに落ち込んで、
低金利で政府は景気のアクセルを思い切り踏み込むが民間の経済は一向に反応しない。
“クラウディングアウト”は政府へのファイナンスが民間への金融を抑圧するのだ。
さらに金利は国民生活に直結し、まずは年金であり、
健全な金利であれば年金負債の圧縮が可能になるはずが、
将来支払うはずの今の現金準備(年金負債)が多額に必要になってゐる。
従って年金支払いを高齢に引き上げて、運用期間を長期に取る必要が生まれたわけだ。
世界はことに先進国では失業率では完全雇用に近いものの、
ここでもフィリップス曲線が反応しない。
必要な物価が上がらないし、一向に景気実感が乏しいのも事実だ。
元米国財務長官ローレンス・サマーズ氏の「長期停滞論」は不気味であるが、
ますます説得力をもって示される。
すなわち“格差拡大”が長期停滞をもたらす遠因になると云ふのだ。
格差拡大とは上位の2%が低位の50%の所得を〆ると云ふ数字にも表される。
富裕層の所得性向は低位層の人たちに比べて高いと云ふことはあり得なく、
お金持ちだからと云ってむろん食事の量に変わりがあるわけでもないと云ふことだ。
過剰貯蓄が富裕層と企業にプールされ、
投資が活発でない(企業の自社株買い=株式・株主資本主義)のと、
デジタルエコノミーでは社会共有資産はデフレ化を促し、
企画デザインマーケティング中心のGAFAなどでは必然的に投資額自体が抑制的になる、
結果、均衡金利がかってなく低下の一途をたどり、先進国経済は、
就中、日本の経済、景気模様は低体温のままに沈み込んでいる。
改めて過剰貯蓄とは、企業も大衆も含めて投資・消費不足を意味すると云ふわけだ。
わずかばかりの賃金の上昇は社会保険料や税の支出増大により相殺され、
将来不安は貯蓄へと所得は回され、可処分所得を抑える。
そのうえ生活や余暇のの中で不活発になった大衆は、
その多くの人の可処分時間はスマホなどによって時間泥棒されている。
そしてそれは決して必ずしも新たな何か大変な付加価値を生み出す、
という構図にはなっていない。
倉石智證