■往路も復路もこれで富士山も見えなくなってしまふ。文明のある側面を競うのではなく、文化的豊かさへと結び付けて欲しい。

■何が悲しくて"40分"であるのか。早さなら究極のバーチャル会議もある。それに品川からと云ふ発想は、そもそも国内から国内への移動を念頭にしてゐる。結びつけるならスイスの山岳鉄道などのもっとイメージ豊かな方を選択したい。

■地方創生を訴えるならば、そろそろ東京中心(起点)の内から内への内国的移動の発想は止めた方がいいのでは。関東なら起点はむろん品川などではなく、羽田ないしは成田、それに茨木空港も考えられる。外の人口を如何に日本国内に誘導できるか。

■東京湾を一体として構造しなればならない。リニアの起点はむろん羽田であり豊洲に結び、豊洲から葛西臨海水族館、東京ディズニー、成田、それから茨木空港、そして"常磐ハワイアンセンター"へ、さらに───

 

なぜならば───

30年以内に震度6弱以上の確率、南海トラフ沿い上昇 千葉市・横浜市は80%超

(16,6/11日経)

(16,1/14朝日新聞)

220兆円と云ふおそろしい数字が突き付けられた。現在、借金も含めておよそ100兆円の国家予算に過ぎないのに、脆弱な国土、その上脆弱な社会保障に身を委ねてゐる日本国民なのである。PBが真っ赤っかな国で、さあ今からどうやって国民の命と財産を担保してゆくかの議論が必要だ。それこそ喫緊の問題に我々は直面してゐるのである。

▲いま「憲法をやろう」としていることこそ非国民なことだ。

 

民進党はセンターピンを立てるべきである。次から次へと湧いて来る自民党の不正義、不誠

実に対して批判ばかりに追われていたら1年が2年であってもまるで間に合わない。あたら貴重な議会の日々をすり潰しているのではなく、そろそろ自らと、そして日本をデザインしようと云ふ強い意欲を分かり易さで、示さなければならないのではないか。もちろんデザインするとは、単に一個で成り立つものではなく、多くのもの事を人間も含めて、その関係性に於いてデザインすると云ふことである。

"スカイツリー効果"と云ふものがある。青空に浮かぶその姿はくっきりと東京を新しくメルクマークし、頼もしく清々しい。その集客効果は近隣も含めて未だに大変なものだと聞いてゐる。日本人ばかりでなく、まったく当然のことながら、人間はこの「眼に見えて」と云ふもの事には素直に惹きつけられるものであるやうだ。「働き方改革」、「同一労働同一賃金」などと一見分かってゐるようでさっぱり具体的な道筋が万人に見えてこないやうな物事もある。人々の気持ちにすとんと落ちて来るもの。完璧な自然の摂理のごとく、必要不可欠なマーケティングの結果のごとく、あの大中華の"一帯一路"のごとく低体温の西欧ばかりでなく新興国経済にとってもそのセンターピンは、「これは確かに」と受け入れられるものでなくてはならなゐ。

 

前項では「汽笛一声新橋を」と云ふテーマを少し述べた。明治のこの時の起点は新橋ではなく横浜であったと、繰り返し述べた。端的に云へばリニアの事である。あらぬ忖度がまたあったのかどうか、私にはなぜ起点が羽田ではなく品川であるのかさっぱり分からない。このクラッチの羽田と品川に離れた部分がどのくらい日本における燃費の悪さに結びつくのか、素人が考えただけでもおよそ想像がつくと云ふものである。そもそもそしてリニアと云ふものは、東京スカイツリーに似て、もっと夢のある新技術を表象するやうなわくわく感にみちた存在ではないのか。それを品川迄おっちら行って乗り換えて、名古屋まで40分。暗いトンネルが8割だと聞く。時代に逆行している感覚だと云はざるを得ない。

 

昔だったらゆったり名古屋について仕事をして、その夜は下呂温泉で盛り上がるとか、少しは地方創生の如きもあったはずなのに、品川から40分ではまるで日帰りになる。この余裕のなさは効率に名を借りた全くの時間の奴隷に人間が成り下がることを意味する。日本全土で人口が急激に減って行くというこの近未来に、まったくASEANも含めて外を意識しないと云ふこの視点のズレは何なのだらう。まだ平成の現時点においても、いやさうだからこそ、改めてリニアの起点は品川でもなく、日本の起点は東京STではなく、羽田にすべての新幹線をターミナルする、と云ふ視点こそが肝心なのではないか。丸の内を改造しても、渋谷や虎ノ門を改造しても、外を意識しない限りは人口減の中での国内でのパイの奪い合いになるに過ぎないことは眼に見えてゐる。

 

すでにある巨大な資本財に結び付けてゆくと云ふこと───

■葛西臨海水族館

■(15,4,29日経)東京ディズニーシーに新設する北欧がテーマのエリア。「アナと雪の女王」のアトラクションが核になる=写真はイメージ、(C)Disney

■スパリゾートハワイアンズ

 

中国が香港とマカオと広東省珠海市をつなぎ広域新都市圏をデザインするやうに、日本も、単一に豊洲・築地ばかりにこだわるのではなく、羽田と東京湾全体からデズニー、成田空港、茨木空港、スパリゾートハワイアンズ (常磐ハワイアンセンター)、そしてたとへばフクシマF1までをデザイン出きればと思ふ。そしてそれらこそが喫緊の未曾有の地震津波の防災を前提にデザインされなくてはならないことは云うまでもない。ついでにこの際付け加えるならば、人類の宿痾としてのウラン・プルトニウム、つまりフクシマF1を記憶遺産として観光地化し、もって復興の一助にすると云ふのはどうなんだらうか。過疎化がいくらかでも埋め合わせできればいいと考える。

■中国「核安全保障モデルセンター」はむろん政治的趣があることはもちろんだが、日本もF1の近くにサティアンを造り、究極の半減期に対しての研究とか、核物質の減衰、つまり"うんち"の減量、無害化に対しての研究拠点を造成するなんて云ふのはどうなんだらう。原発核に対しての"即応"も兼ね備えた実際的な拠点にする。

 

さてキャッチフレーズは「飛行機を降りたらリニアでディズニーへ」とか「成田からリニアに乗ってハワイアン」とか、ほんとうにアジアの子供たちが夢に乗ってわくわく感じるやうなキャッチコピーはないだらうか。リニアは他の電車などの移動手段とは異なるのだ。明らかにその付加価値をプラスアルファしなければならない。羽田、成田を降りたら、あゝ、リニアなんだと、その口コミがカントリーに帰ってもまた人を呼び寄せる大きな物語になるだらう。羽田「即リニア」。そして豊洲はカジノ付きインテグレイトな「東京オフショア」、それは葛西臨海水族館を通って夢のディズニーへ、そして成田へと結ばれる。どうしても東京駅、新宿辺りを目指したい人は既存の移動手段がむろん有効になる。ただ、さらに地方創生まで考えると、どうしても新幹線も含めたビッグノーズが羽田に集まる必要がある。

■南のあたたかいお国の方たちには雪は"ミラクル"に違いない。

■湯沢ガーラスキー場は新幹線の駅を降りたらすぐにスキー場につながる。

 

日本には自然遺産の富士山ばかりでなくすでに大きな資本財がある。黒部や白馬八方スキー場、湯沢ガーラスキー場、スパリゾートハワイアンズ、花巻温泉から、北海道まで、大切なことは羽田を降りたらすぐにそれぞれの地域、地方に行ける、と云ふ感覚である。すでにある資本財に出来るだけダイレクトに結びつける。人口減少の日本で、品川が、今更東京駅が起点ではないのである。

 

東京が日本の国内を呼び寄せるのではなく、日本が羽田や成田を起点に(今は関東の事ばかりを取り上げているが)、ASEANや世界の人に来ていただくと云ふことである。東京すら2025をピークに急激に人口が減少してゆく。日本はすでに生産労働人口ばかりか人口オーナスのおそろしい未経験なゾーンに突入しつつあり、さらに団塊の世代がみんな後期高齢者になると云ふ切所(2025問題)に差し掛かってゐるのだ。

一方ですでにASEANの中流層がボリュームアップして来てゐる。ミドルは必ず食や買い物、ついで観光の後には必ずアメニティへと流れるはずだ。人口減の日本は移民にまで持って行けないのならあからさまに疑似人口を増やさなければならないことは明らかだ。観光や会議でもビジネスでもなんでもである。飛行機を降りたら「お手間は取らせません」、しかも憧れと夢が詰まったリニアで、もうそれこそが"おもてなし"の基本ではないか。だから、この基盤をこそしっかりデザインされなければならない。どんな地震や津波が来てもこのラインばかりは生き残ること。安全と、安心と、快適が担保されれば、日本が万が一未曾有の災厄に陥ったとしても、そしてこの基盤が残ってさへいれば、ASEANの人たちによって必ずや復興へと導びかれることになるでしょう。